普通国債の発行残高がついに1000兆円目前に迫っている。
財務省が2022年11月10日に発表した9月末の「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」によると、発行残高は993.8兆円となった。
9月末の普通国債の発行残高は、993兆7965億円と過去最大額となった。2022年3月末から2.4兆円増加した。新型コロナウイルス対策費の原資を中心に、2020年度には59.7兆円、2021年度も44.8兆円と、2年間で104.5兆円も増加した。
普通国債に加え、政府の借入金や政府短期証券なども加えた政府債務残高(いわゆる国の借金)は1251兆3796億円。2022年3月末比で10.1兆円、2021年9月末比で36.2兆円増加した。財政支出の増加に伴い、政府債務は増加の一途をたどっている。政府債務残高に占める普通国債の割合は、79.4%にのぼっている。【表1】
国債発行残高の増加は、将来の金利上昇局面で、国債の利払い費の大きな負担増加につながる。現在は、日銀による大規模金融緩和策で、低金利での国債発行が可能となっている。だが、いずれ金融緩和策が終了し、金利上昇局面になれば、国債の利回りも上昇し始める。
1000兆円近い国債を一度に償還することはできないため、償還を迎えた国債は借換債が発行されることになるが、借換債は利回りの高いものを発行することになる。
特に、黒田東彦総裁の就任とともに開始された日銀の金融緩和政策の一環として、日銀が市場からの国債買い入れを実施していることで、日銀は巨額の国債を保有している。2013年4月に黒田総裁が就任した時点で、2013年末の日銀の国債保有残高は137.9兆円だった。
それが2016年末に350.7兆円、2017年末に407.5兆円と増加を続け、2022年3月末には500.4兆円と500兆円を突破。2022年9月末には526.2兆円と3.8倍にも膨らんでいる。国債発行残高に占める日銀の保有割合も2018年9月末に50%を超えて以降、50%を上回る水準で推移しており、2022年9月末は52.9%となっている。【表2】
日銀の国債保有割合が高いと、金融引き締め策への政策転換の手足縛る日銀が保有している国債については、償還まで保有することで日銀の財務上は大きな影響はないものの、発行された国債の半分以上を、市場からの買い入れとはいえ、日銀が保有していることは、財政法が禁じている日銀による国債等の直接引き受け(財政ファイナンス)に等しい。
さらに、国債の50%以上を日銀が保有している状況は、国債市場の流通量の減少とともに、国債の市場価格の形成を阻害し、国債市場の健全性を大きく損なっていることは間違いない。また、米欧が金融引き締め(利上げ)に金融政策の舵を切ったのに対して、日銀は金融緩和策を継続しており、国債残高の増加は政府の国債費の増加問題も含め、日銀の金融引き締め策への政策転換の手足を縛ることになる。
なお、普通国債は2022年度当初計画の未発行分と、第1次補正予算、第2次補正予算での発行を合わせ、まだ約30兆円の発行が見込まれている。これらが計画通りに発行されれば、国債の発行残高は2023年3月末には1042.4兆円になる見通しで、1000兆円を超えることになる。
政府の財政財源として、赤字国債を含めた国債発行による姿勢に変化がない限り、国債発行残高は今後も増加を続け、国の借金は膨らみ続けることになるだろう。