「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

中国関連、ロボット、インバウンド...人気株のテーマ

「週刊ダイヤモンド」(2023年5月20日号)の特集は、「人気株 勝者敗者メッタ斬り」。注目度の高い15のテーマにひも付く、330銘柄を分析している。

伝説的投資家のウォーレン・バフェット氏が4月に来日し、日本株への追加投資を示唆するとともに、日本市場への期待感を示したことから、日本株への関心が高まっている。

だが、さまざまな経済界の注目テーマに安易に飛びつくには危険だと指摘している。話題の「ChatGPT」で上昇中のAIについても、各社の実力によって明暗が生じるのは必至だ。過去のAIブームを振り返り、一歩引いて見ることも大切だと、している。

中国関連株で注目しているのは、ロボットの分野だ。中国でも人手不足は深刻になり、ロボットに代替させようという動きが出てきている。岡三証券の諸田利春シニアアナリストが注目するのは、ロボット本体のファナックと安川電機、パーツのハーモニック・ドライブ・システムズの3社だ。

ロボット関連の業績はいったんピークアウトしているが、いずれは前回の業績ピークをこえてくることを想定すれば、多少タイミングがずれても救われる可能性があるとのこと。今のうちに組み入れる銘柄を検討してもいいのかもしれない。

一方、インバウンド(訪日外国人客)が急激に復活している。

ただし、「インバウンド関連株は全て買い」なのかというと、そうではないという。ホテル、外食、鉄道、百貨店と関連業態が幅広く、業績も玉石混交だからだ。

まだ中国人旅行客は戻っていないが、中国人観光客が多かった2015~17年に業績が良かった銘柄を挙げ、検討している。大丸心斎橋店を持つJ.フロント リテイリングや東京ディズニーランドのオリエンタルランドに注目している。

ホテルについては、ドーミーインを展開する共立メンテナンスも期待できるという。繁忙期の秋に受け入れ態勢ができている会社が伸びていくので、夏場が仕込むチャンスだという。

◆ITサービス業界、半導体関連の注目は?

DX(デジタルトランスフォーメーション)の追い風が吹くITサービス業界。株式市場では主要11社の株価騰落率に二極化の様相が出ているという。トップになったのが、日本初のインターネット接続事業者として創業したインターネットイニシアティブ(IIJ)だ。サイバーセキュリティー関連事業でも躍進しているので、業績拡大が期待できるという。

2位になったのが電通国際情報サービス(ISID)だ。電通グループでシステム開発を手掛けてきたが、数年前から人事管理や連結会計のシステムのパッケージソフトを展開。

知財型への移行が数字にも表れているという。

半導体関連では、半導体商社に注目しているのが興味深い。半導体製造装置メーカーでは1単元(最低売買単位)に必要な投資額は100万円を超える銘柄も少なくないが、半導体商社では10万円台で買える場合も多く、投資しやすい。

具体的な銘柄として、マクニカホールディングスや東京エレクトロン デバイス、加賀電子などを候補に挙げている。メーカーと異なり、多様な製品を扱えるのが魅力だ。

このほかに、防衛、人手不足、超高齢化、円高などのテーマも。

注目テーマには、息の長い優良な投資テーマと、一時のブームにすぎないものが混在している、と指摘している。「はやり物に飛び付くのは避けた方がよいだろう」というストラテジストの声を紹介している。

「物言う株主」の攻勢を受けるセブン&アイ

「週刊東洋経済」(2023年5月20日号)の特集は、「漂流するセブン&アイ」。小売業初の売上高11兆円を達成したセブン&アイだが、「物言う株主」の攻勢を受けている。その先行きは不透明だという。

セブン&アイは4.4%の株式を保有するアクティビスト(物言う株主)から、イトーヨーカ堂やそごう・西武といった不採算事業からの撤退とコンビニエンスストア事業の分離・独立を求められている。

だが、業績が絶好調であるため、問題の解決に踏み切れないという。好業績といっても、売上高の7割以上が21年に約2兆円で買収したガソリンスタンド併設型コンビニの米スピードウェイを含む北米のコンビニ事業なのだ。セブン&アイが最高益である今こそ、国内の不採算事業の処理を急ぐ必要があるというのだ。

イトーヨーカ堂の再建策が先日、ニュースで報道されたばかりだ。不採算店33店を閉鎖したうえで首都圏に集中。事業については自社アパレルから撤退し、「食」に集中するというものだ。

こうした戦略はかつてダイエーが打ち出した再建策と、うり二つだという。首都圏ではイオングループに圧倒されており、県によってはライフコーポレーションやヤオコーにも負けており、挽回は難しいという食品スーパー幹部の声を紹介している。

総合スーパーにおける衣料品販売は、何もイトーヨーカ堂だけが苦戦しているわけではない。日本チェーンストア協会の統計によれば、92年に3.9兆円あった総合スーパーの衣料品売上高は、22年に7344億円と、30年間で約8割も減少している。その分、ユニクロやしまむらといったカテゴリーキラーや専門チェーンが台頭したのだ。

◆そごう・西武の売却は袋小路に

もう1つの問題が、そごう・西武の売却だ。22年11月、米フォートレスに全株式を2000億円で売却する契約を締結したにもかかわらず、期日の23年2月1日になっても実行されず、無期限延期になっているのだ。

話がまとまらないのは、フォートレスが家電量販大手のヨドバシホールディングスをビジネスパートナーに選んだことにあると見られる。ヨドバシは西武池袋本店の半分を要求していると言われ、とうてい西武が飲めるものではない。袋小路から抜け出せそうにないという。

セブン&アイ・ホールディングスの井坂隆一社長は、同誌のインタビューに対し、コンビニの成長には「食」の強化が必要で、そのためには、スーパー事業が欠かせない、と話している。

イトーヨーカ堂とセブン-イレブンとの関係など、人事の確執にも触れている。日本人の多くが利用している巨大小売業の知られざる一面を知ることができる特集だ。

G7広島サミットの主要議題とは?

「週刊エコノミスト」(2023年5月23日号)の特集は、「G7広島サミットで考える 戦争 脱炭素 金融危機」。

5月19日から広島市で開かれる主要7カ国(G7)首脳会議(広島サミット)では、気候変動対策が主要議題の一つとなる。

エネルギー政策に詳しい橘川武郎・国際大学副学長は、石炭火力を使いつつ、アンモニアや水素を化石燃料と混焼するアンモニア混焼に変えていくという日本のやり方が、世界で唯一、建設的な提言だという。

なぜなら、新興国では石炭火力の比率が高く、欧州の「石炭をやめろ」というやり方では、手の打ちようがないからだ。しかし、世界の評価は、日本に対して厳しい。それはドイツが石炭火力をやめる時期を明言しているのに対し、日本はそうではないからだ。そのためにも、石炭火力の廃止時期を明示すべきだと、同氏は話している。

日本の政治が求められるものについて、寺島実郎・日本総合研究所会長が語っている。岸田首相が3月にインドを訪問してから、ウクライナを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と会談したことをG7議長国として、極めていいタイミングだったと評価したうえで、日本はロシアに対しても取るべき行動があるはずだ、と問題提起している。

また、サミットが広島で開催されることの意義を考え、核兵器禁止条約に被爆国である日本が署名、批准していない事実は重いとして、たとえば、条約への部分的な参画を模索すべきだと提案している。

条約の第6条に「被害者に対する援助及び環境の修復」という条項があるので、原発事故が起きたチェルノブイリや福島、南太平洋諸島など多くの国や地域が、この対象となる。この第6条にのっとり、日本が技術協力や支援に踏み込めば、日本の創造的立ち位置を示せるはずだという。

このほか、自動車の脱炭素化で日独が注目する「合成燃料」、グリーン化が急務の国内鉄鋼業などのリポートに注目した。

19日から始まるサミットで、何が話し合われるのか注目したい。(渡辺淳悦)