政府がアプリ市場の開放の方針を打ち出した。グーグルとアップルの寡占状態に風穴を開け、料金引き下げやサービスの多様化を促そうというのだ。

新たな法整備を含めて検討し、早ければ2024年の通常国会での実現を目指す。

スマホのOS、Androidは51.2%、iOSは44.6%...2社の寡占状態 アプリストアの手数料=「アップル税」も健在

政府のデジタル市場競争会議(閣僚と有識者で構成、議長・松野博一官房長官)が2023年6月16日、スマートフォンの基本ソフト(OS)などを提供する巨大IT企業への新たな規制案をまとめた。

その最大のターゲットが、アプリを入手する際に使う「アプリストア」だ。

J-CAST 会社ウォッチは2021年9月24日付で「『高すぎる!』アプリ開発者が不満を漏らす『アップル税』 手数料徴収の仕組み改善へ」と報じ、2023年3月24日付では「AndroidとiOS『寡占状態』問題...公取委が『競争不十分』報告書 世界の潮流は2社への『圧力強化』だが、日本は?」と、公正取引員会の報告書が、規制の必要を打ち出したことも伝えてきた。

こうした流れを受け、公式にいわゆる「アップル税」規制の考えを示したのが、今回の政府の方針だ。

現状を確認しておこう。

民間調査会社によると、2022年の国内スマホOS市場のシェアは、グーグルのAndroid(アンドロイド)が51.2%、アップルのiOSが44.6%を占め、2社の寡占状態になっている。

この市場支配力を背に、アップルは、iPhone(アイフォーン)で原則、自社の「アップストア」からしかアプリのダウンロードを認めない。利用者に課金する際は、アップルの決済を使う必要がある。

このためアプリ企業は、最大30%の高額の手数料をアップルに払わねばならず、いわゆる「アップル税」と呼ばれ、不満が強い。

グーグルは自社以外のストアを認めているが、97%超が自社ストア経由で、課金については自社の決済システムを利用させており、競争は限定的になっている。

他社のアプリストア使えるように...「有害なアプリ排除」が課題

こうした実態を踏まえ、政府が規制案を打ち出した。

まず、他社のアプリストアの利用を認めるグーグルに加え、アップルにも、他社のストア参入を認めるように義務づける。

また、課金・決済システムについても、自社システムの利用義務づけを禁止する。アプリの利用者の情報はこのシステムで管理されるため、アプリ開発者は利用者の情報を十分に把握できないため、「多様な料金プランやサービスの提供を妨げ、利用者の選択肢が奪われている」と判断した。

ただ、アプリ市場を開放するには安全性が問題になる。アップルがアップストアしか認めてこなかったのも「有害なアプリの排除」が理由だった。実際、アイフォーンはウイルスに感染しにくいとされる。

このため規制案は、アイフォーンなどで新たなストアを展開する場合、まずアップルがストア事業者の安全対策などを審査するよう義務付けるとした。アプリ自体の脆弱性の検証などは、新たなストア事業者自身が担うことになる。

また、ストアを経由せずにウェブサイトから直接アプリをダウンロードできるように求める声もあるが、今回、これは求めないことにした。

アップルは個人情報を抜き取るなどの悪質なアプリが流通する可能性を指摘し、反対してきており、その主張を受け入れたかたちだ。

アップルやグーグルのアプリストアに慣れきっているユーザーの意識改革がカギ

海外では、欧州連合(EU)が22年11月に「デジタル市場法(DMA)」を施行し、アプリストアや決済システムの他社への開放を義務付けが24年に本格適用される見込みだ。

日本のように、スマホのこの部分というように限定せず、アップルとグーグルにアマゾン、メタ(旧ファイスブック)を加えたGAFAをはじめ、一定規模以上のプラットフォーマー(PF)を包括的に規制するものだ。

だが、一部規制で先行した国では、外部の決済手段を使ってもアップルから高手数料を取られるなど、「抜け穴」が早くも問題になっているという。

アップルやグーグルのアプリストアに慣れきっているユーザーの意識改革も含め、日本で規制の実効性を確保するのは簡単でないかもしれない。(ジャーナリスト 白井俊郎)