「5月21日、栃木県宇都宮市内のスーパー『ヨークベニマル戸祭店』で新型コロナウイルスの集団感染が発生したと宇都宮市が発表しました。感染した従業員4人は勤務中はマスクをつけ、接客もしておらず、感染発生場所はマスクを外して会話していた更衣室や休憩室が有力だとみられています」(地元紙記者)
実は4月にも、更衣室が感染場所とみられるケースがあった。
「山形県内の食品工場で発生した計10人のクラスターでは、最初に感染が確認された従業員と昼食を一緒に食べていた従業員たちに当初、検査を実施していました。その後、同じ更衣室を使っている従業員にまで検査を広げたところ、感染拡大が判明したのです。感染が発覚した全国各地のスポーツジムでも、更衣室が疑われるケースが何カ所もありました」(医療ジャーナリスト)
再開した全国の学校では夏にプールの授業もある。更衣室は老若男女にとって身近な場所だ。感染の専門医である、「のぞみクリニック」の筋野恵介院長は更衣室の感染リスクが高い理由をこう語る。
「更衣室は密閉空間で、基本的に最小限のスペースで作られていますから3密になりやすいんです。会社の更衣室なら1~2畳の狭い空間で5~6人が着替えたりすることもありますよね。窓がない部屋も多く、空気がこもりやすいのも懸念点です。始業前や終業後などの同じ時間帯に利用することも、リスクが高まる要因です」
更衣室に付きもののロッカーも、注意が必要だと指摘するのは、帝京大学大学院公衆衛生学研究科の高橋謙造教授だ。
「スチール製のロッカーや鍵の部分は、ウイルスが付着した場合、24時間以上は死滅しません。ですから、そこに触れると汚染リスクがあるんです。また、更衣室で私も遭遇したこととしては、着替えているときに急にくしゃみをされたことがあります。
前出の筋野院長も言う。
「ロッカーは細長いので、隣のロッカーの扉などに触れやすいです。オフィスのデスクであれば、自分のスペースで完結していますが、更衣室では隣のロッカーに触れたり、共用のベンチなどに座ることもあるので注意が必要です」
とはいえ、今後の生活で更衣室を使わないという選択は非常に難しい。私たちはどんな感染防止対策をとるべきなのだろう。
「まず、利用する時間をずらすこと。皆で野球やサッカーをする際なども、屋外のグラウンドで練習する分には感染リスクは高くないですが、終わって一斉に更衣室に入ることは避けるべきです。密にならないように可能なら1人ずつ入るなどすればより安全でしょう。
次に滞在時間を最小限にすることです。更衣室は仕事終わりに雑談することも多い空間だと思いますが、中でしゃべらず、外に出てマスクをしてから話すようにして下さい。マスクを外すこともある更衣室ではなおさら要注意です」
高橋教授は都内のクラスターが発生した病院でも更衣室での感染が疑われたことを挙げ、こう語る。
「コロナ禍のいま、業務で気が張りつめている分、休憩室や更衣室といったバックヤードでホッとひと息ついたときこそ、危ないのかもしれません」
緊急事態宣言下でも国民の生活に不可欠とされ、働き続けていたスーパーの従業員が更衣室で感染したのも、緊張から解き放たれた一瞬の隙をつかれたのだろうか。
筋野院長は、さらに2つの対策を挙げる。
「ほかのもの、つまり自分のロッカーの中身以外には極力、触れないようにしてください。そして、換気をしっかりすることです。そもそも、更衣室には換気扇がないところも多いです。使っていないときにドアを開け放しておくことももちろんですが、利用側・施設側の協力を得られれば、利用中もドアを全開にして、パーテーション(仕切り)で目隠しをしたほうがいいです。ドアを開けて、扇風機やサーキュレーターなどで空気を循環させるのもいいと思います」
終業後の同僚や友人との談笑は、本来は何よりのリフレッシュタイム。だが、当面の更衣室では“沈黙は金”のようだ――。
「女性自身」2020年6月16日号 掲載