「感染拡大防止のため、早期にクラスター発生を把握し、封じ込めていくことが重要だ」
連日のように、東京都で過去最多の感染者数が更新されていくなか、菅義偉官房長官は7月29日の記者会見で新型コロナウイルスによるクラスター(感染者集団)が550件に上ることを明らかにした。
「これまでクラスターといえば、病院や高齢者介護施設、また、いわゆる“夜の街”にある接客を伴うキャバクラやホストクラブなどが主な発生源とされてきました。
クラスター発生が報告された飲食店には、確かに和食料理店、居酒屋、鉄板焼き店、喫茶店など、家族や友人らとの憩いの場にも使われる店が多い。
こうした発生事例をもとに、飲食店の感染リスクを緊急検証――。感染症が専門の「のぞみクリニック」筋野恵介院長は、
「大前提として飲食時に客がマスクを外すことは避けられないので、店側が従業員全員にマスク着用を徹底することがまずは重要です」
と強調。「フェースシールドや口元だけ覆うマウスシールドの着用だけでは、隙間が開いているので感染リスクが高い」としたうえで、次に“窓のない店”を挙げる。
「窓のない店は、どうしても換気が悪くなります。カラオケのある喫茶店やスポーツ観戦するバーなどもそうですが、防音がしっかりしている店は密閉空間ということ。ガラス張りであっても、開かない仕様になっていることも多いので、見通しがよい=換気がよい、と勘違いしないようにしてください。
また、約200軒の飲食店が密集する東京都品川区でのクラスター例のように、小さな居酒屋や雑居ビルにあるバーなども窓がないことが多いです。しかし、ドアを全開にしていれば、かなり改善されるでしょう。さらによいのは、ドア全開で卓上のものでもいいので、サーキュレーター(空気循環器)を出口側に向けて回すこと。クラスターはかなり起きにくくなると思います」
“大声を出しがちな店”も、警戒が必要という。東京都では20人以上でスポーツ観戦をしていた居酒屋で、客と従業員計7人が集団感染した事例が起きている。
「人との距離が2m開いていればいいというのは普通の声で話す場合。たとえばスポーツバーでモニターを見上げ、大声を出して応援すれば、2m離れていても飛沫が拡散し感染リスクが高まります」
ラーメン店やバーによくあるカウンター席にも危険が潜むという。
「カウンターから料理を直接提供するため、仕切りを設置できず、それゆえ、どうしても客と対面してしまい感染リスクが高まります。カウンターがある店を利用する場合は、テーブル席も併設されていればカウンターよりテーブル席を利用するほうがいいでしょう」
栃木のラーメン居酒屋では、男女の従業員6人が集団感染しているが、客に感染者は出ていない。このケースでは厨房に原因があったのではと筋野院長は推測する。
「これはおそらく厨房が狭くて密になっているのではないでしょうか。狭さのせいで厨房に熱気がこもり、暑さで息苦しくマスクから鼻だけ出すこともあると思います。暑い調理場には、感染リスクが高まる要因が重なっているんです」
「女性自身」2020年8月18・25日合併号 掲載