かつて「25歳はお肌の曲がり角」などと言われたものですが、気がつけばそんな年齢からすでに四半世紀が過ぎ……。というわけで、ここらでひとつお肌のメンテナンスに本腰を入れて取り組んでみてもいいかもしれませんーー。
「美肌のためには、私はなにより“インナーケア”が重要だと思っています。体を内側からきれいにするには、1日3度の食事を見直すこと。それが美肌への近道です」
そう話すのは皮膚科医の小林智子先生。いまはお肌ツルツルの小林先生だが、実は長い間、肌の乾燥に悩まされていたという。肌悩みを抑えるために必要な栄養素とは、いったいどんなものなのだろうか?
「トラブルの種類にもよりますが、乾燥を抑えるにはタンパク質が大切です。ただ、タンパク質は生命維持に関わる部分から優先的に使われますから、肌の潤いを保つ『天然保湿因子』など肌の細胞にまで行き渡らせるには、たくさんのタンパク質が必要です。忙しい日の朝食はパンとコーヒーという人がいるかもしれませんが、それではタンパク質が足りません。卵や納豆、豆腐、チーズなど手軽に食べられて、肌悩みに効く“おクスリ食材”を、もっと利用するといいと思います」(小林先生・以下同)
ミドルエージの肌悩みは、ほかにどんなものが多いのだろう?
「しみやしわ、たるみでしょうか。原因はさまざまですが、糖化によるダメージが大きいでしょう。食事で取りすぎた糖は、タンパク質と結合して糖化を起こし、AGEs(終末糖化産物)を作ります。このAGEsはさまざまな病気の原因になるだけでなく、肌にも悪影響を与えます。コラーゲンが変性して弾力やハリが失われたり、肌のバリア機能が落ちてキメが低下したり。
さまざまな肌トラブルに直結してしまう糖化を防ぐ手立てはないのだろうか?
「血糖値の急上昇を抑えるのが効果的で、GI値の低い食品を取るのがおすすめです」
GI値とは、その食品を食べたとき、どれくらい血糖値が上がるかを示す指標のこと。精製されていないもののほうが消化吸収に時間がかかるため、GI値が低いという。炭水化物であればうどんよりそば、白米より玄米のほうが低GIの食品となる。
肌悩みの解消に大切なのは、栄養素を補い合う食品を一緒に食べる“食べ合わせ”だという。
■くすみに効く食べ合わせ
大好きなベージュがいつからか、似合わなくなる。その理由が肌の「くすみ」だと気づいて納得するが、落ち込むのは避けがたい。
「くすみは40代以降、急激に増える肌悩みです。若いころは透明感があった肌も、血行不良や紫外線ダメージ、加齢による肌のキメの低下などによって、どんよりし、透明感が失われるのです」
肌のくすみを改善するには血流を改善し、ターンオーバーを正常化することがカギになる。
「そのために必要なのは、ビタミンEと鉄分です。どちらも血液の質を高めて、血流を促す働きを持っています」
【くすみに効く食べ合わせ:ビタミンE×鉄分】
〈ビタミンE〉:ナッツ類、ほうれん草、ウナギ、ブロッコリーなど
〈鉄分〉:干しぶどう、オートミール、のり、レバーなど
ビタミンEが豊富な食品は、アーモンドなどのナッツ類やほうれん草、ブロッコリーなど。鉄分は干しぶどうやのり、レバーなどにも多い。
「小腹がすいたときにナッツや干しぶどうを食べると、血流改善のほか、ダイエットにも効果的です。
また、血行不良には、自律神経のバランスが大きく関わっている。疲れやストレスによって自律神経が乱れることで血管が収縮すると、肌の毛細血管をはじめ、全身の血流が滞るため、ターンオーバーが乱れ、くすみを引き起こしてしまうのだ。
「自律神経のバランスを整えるには、規則正しい生活がポイントです。しっかり眠るために、お風呂は寝る2時間前までに済ませる。朝起きたら日光を浴びる。そしてしっかり朝ごはんを食べる。こうした積み重ねが、くすみのない肌を作っていくのです」
■むくみに効く食べ合わせ
靴下を脱ぐと、ゴムの痕がくっきり。その痕が消えないうちに、次の靴下をはく。こんなにむくんだままで、大丈夫だろうか。
「むくみの原因としては、まず塩分の取りすぎが考えられます。塩分を体外に出す働きのあるカリウムや、体内の水分量を調節する鉄分など、ミネラルを取りましょう」
【むくみに効く食べ合わせ:カリウム×鉄分×タンパク質】
〈カリウム〉:ほうれん草、小松菜、アボカド、バナナなど
〈鉄分〉:のり、干しぶどう、豆乳、レバーなど
〈タンパク質〉:納豆、ヨーグルト、豆腐、鶏肉など
カリウムはほうれん草や小松菜、アボカドなどに多く含まれ、鉄分はのりや干しぶどう、レバーといった食品に多い。
「タンパク質もむくみ改善に効果的です。
タンパク質は、肉や魚のほか、納豆、ヨーグルト、豆腐などにも豊富に含まれる。時間のない朝にも納豆や卵を取り入れて、高タンパクな食事を目指そう。
「むくみの原因には筋肉不足も挙げられます。特にふくらはぎや太ももの筋肉は、足まで下りてきた血液を重力に逆らって心臓に戻すポンプ機能を担っています。この筋肉が落ちると、血液やリンパのめぐりが悪くなるのです。めぐりのよい体を取り戻すには、軽めのスクワットやかかとの上げ下ろしなど無理のない程度の運動が効果的です。家事をしながらの“ながら運動”などを生活の中に組み込んで、毎日の日課にしていきましょう」