住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、大好きだったアイドルの話。各界で活躍する同世代の女性と一緒に、“あのころ”を振り返ってみましょう――。
「キョンキョンさんは今もかわいいですが、デビュー当時はまさに誰もが憧れたアイドル。あの逆三角形のシュッとしたあごになりたく、毎日、2時間ほどほっぺたをつねっていたんですよ。そしたら、ほんとにあごがシュッとして(笑)」
笑顔で語るのは、さとう珠緒さん(48)。
スーパー戦隊シリーズ『超力戦隊オーレンジャー』(’95~’96年・テレビ朝日系)が出世作となって以降、バラエティ番組などテレビの世界で活躍しているのも、“これだけのめり込むのも珍しい”といわれるほどの“テレビっ子”だったからかもしれない。
「ドラマも、バラエティも、映画も、歌も、すべての情報源がテレビでした」
ドラマで印象に残っているのは『うちの子にかぎって…』(’84年・TBS系)だ。
「それまで“かっこいい”イメージだった田村正和さんが小学校の先生役で、コメディ要素の強い演技がおもしろくて。わが家に導入されたばかりのVHSビデオに毎週、必ず録画していましたし、『パパはニュースキャスター』(’87年・TBS系)も大好きでした」
『熱中時代』(’78~’81年・日本テレビ系)や『3年B組金八先生』(’79~’11年・TBS系)といった学園ものも欠かさず見ていたが、当時、社会問題化していた“子どもの非行”をテーマに、俳優の穂積隆信の実体験を描いた『積木くずし』(’83年・TBS系)は、忘れられない作品だという。
「小学生だった私から見て、不良文化は怖かったですが、興味をそそられる部分もありましたね」
■ジャッキー・チェンの前でお饅頭を落としてしまって……
映画がテレビ放送されることが多かったのも、’80年代の特徴。さとうさんがとくに夢中になったのはジャッキー・チェンだ。
「『スネーキーモンキー 蛇拳』『ドランクモンキー 酔拳』(ともに’78年)などの“○○拳”シリーズや、『プロジェクトA』『スパルタンX』(ともに’84年)をテレビで見て、映画のチラシを買いに行くほどハマりました。ジャッキーばかりじゃなく、ユン・ピョウのポスターも部屋に貼っていましたね」
のちに、レギュラー出演していた『王様のブランチ』(’96年~・TBS系)にジャッキーが映画の宣伝に訪れ、その“アクション”を間近で見ることができたという。
「番組で出されたお饅頭を私、テーブルから落としてしまったんですね。
バラエティ番組も大好きで『8時だョ!全員集合』(’69~’85年・TBS系)は、公開生放送の会場にも足を運んだという。
「おじいちゃんが船橋競馬場の厩務員をしていたんですが、ドリフターズさんの誰かが競走馬を持っていたらしく、その関係で船橋のヘルスセンターが会場のときは、観覧できたんです。ただ学校の友達には、言うと嫉妬でいじめられそうで、内緒にしていて。“なんてラッキーなんだろう”と思いながら、歌のコーナーを見ていました」
■土曜の深夜に聴いていたさんまさんのちょっとエッチなラジオ
アイドルの歌はテレビの歌番組で知り、雑誌『明星』(集英社)の付録“歌本”で覚えた。
「最初にのめり込んだアイドルは柏原芳恵さん。当時、テレビで芳恵ちゃんのモノマネをする人は、お尻をフリフリしていたんですけど、それくらい、ほかのアイドルと違って色っぽく、大人な雰囲気が魅力だったんです。
毎週日曜の朝は芳恵ちゃんのラジオ番組を楽しみにしていました。前の日に深夜まで、(明石家)さんまさんのちょっとエッチな番組を、罪悪感を抱きながら楽しんでいたので、寝不足気味でしたけど(笑)」
「“花の’82年組”の中では、いまなら剛力彩芽さんのような、ボーイッシュで健康的な早見優さんが好きでした。いかにもレモンの香りがして、爽やかな風が吹いていそうな感じでしたよね」
当初は「それでも、まだ横一線だった」というさとうさんの中でのアイドルレースで、めきめきと頭角を現したのが小泉今日子だ。
「かわいすぎて、ついマネしたくなるんですよね。
アイドル路線で突き進んでいたキョンキョンの印象がガラリと変わったのは、20枚目のシングル『木枯しに抱かれて』(’86年)だったという。
「アルフィーの高見沢(俊彦)さんが作った名曲。それまで夏の太陽みたいな明るい歌が多かったのが、秋冬のしっとりした大人な感じになって。歌の内容も、あみんの『待つわ』(’82年)ほど重すぎず、ちょうど“いい感じ”で共感できる、せつない片思いなんです」
当時は、大好きなテレビの中で活躍するアイドルと、一緒に仕事をすることになるとは、思いもしていなかったと、さとうさん。
「“金八先生”の第2シリーズに出演していた伊藤つかささんとは、何度か舞台をご一緒させていただいているんですが、地方公演でホテルに泊まると、支配人みたいな偉い人が『サインをください』と、つかささんの2枚組のLPを持ってきたりするんです。あくまでも私の想像ですが、とにかくつかささんのファンは、出世していて、ちゃんとした人が多い。瞳が澄んでいて、魂が浄化されているような人だから、根強いファンが多いのかもしれませんね」
最後に48歳になったいまも「プンプン」ポーズで貫く“ぶりっ子”路線について――。
「よく“あざとい”と比較されますが、あちらにはどうしても計算高さを感じます。’80年代の“ぶりっ子”はもっとナチュラルで純粋なんです!」