「日本では、すでに高齢者の4人に1人が働くようになっています。『人生100年時代』などとよくいわれていますが、所得や受給できる年金額の先行きは、残念ながら“真っ暗”としか言いようがありません……」

こう話すのは、マネーセラピストの安田まゆみさん。

総務省の’20年の統計によると、65歳以上の就業者数は男女合わせて906万人。これは高齢者の約25%に当たり、17年連続で増加中、今後も増え続ける見通しだ。

「みんな一生懸命に働いているのに、国は年金の受給開始年齢をどんどん後ろ倒しする方向。後期高齢者の医療負担も一部で増加しますし、不安は募るばかりでしょう。さらに、コロナ不況でいったん見送られていた、家計にさらなる負担をかける政策が再び動きだすことも考えられます」

コロナ禍で、収入が大きく減ってしまった世帯も多い。私たちがすべきことは、「お金にまつわるどのような制度が新設・改正されるのか、現状の情報をきちんと知ること」だと安田さんは説く。

ここでは、’22年のうちに「新しく実施される」または「改正される」主な3分野「預貯金」「年金」「保険」について詳しいファイナンシャル・プランナーの中村薫さんに、「’22年版マネーニュース」1月~5月の解説をしてもらった。家計を守るためにも、今のうちにチェックしておこう。

【1月】

〈ゆうちょ銀行の手数料〉:預金、払戻手数料などが新設、値上げに。

健康保険・傷病手当金〉:通算1年6カ月分まで受給可能に。

〈健康保険・退職後の任意継続〉:任意継続の途中脱退が可能に。任意継続の保険料が従来より高くなる可能性も(算定基準を健保組合が選択可能に)。

新年早々に、身近なところで新たにお金をとられる制度がスタートする。

「1月17日から、ゆうちょ銀行で現金を預け入れたり、払い戻したりする際にかかる料金が新設および値上げされます。特に窓口・ATMでのお札や硬貨の取引でかかる料金は、多くの人に関心があるところでしょう」

たとえば、ゆうちょ銀行の窓口での預け入れや払い込みなどで硬貨を使う場合、51~100枚で550円の「硬貨取扱料金」が発生する。

以後、500枚までで825円、1,000枚までで1,100円がかかり、それ以上は500枚ごとに550円が加算される。

ATMでは、新たに硬貨の取り扱いに料金が発生することに。なんと、ATMを利用する場合「1円玉1枚を預けるだけで手数料が110円」ということになるのだ!

「財布や貯金箱に小銭がたくさんたまったときに、まとめてATMで預けていたという人は注意が必要です」

ゆうちょ銀行ではさらに、払い戻しの金種の指定や貯金残高証明書の発行などでの料金を新設、コンビニATMでの手数料の改定など、多数の料金が新設・改定される。頻繁に利用している人は詳しく確認しておきたい。

健康保険では、1月1日から傷病手当金の支給期間が“通算化”されるようになる。

「病気やケガが原因で働くことができず、給与がない期間に受け取れる『傷病手当金』は、現行で『支給開始日から起算して1年6カ月まで』が期限でした。今回の改正により『支給期間を通算して1年6カ月分』受け取れることになります。入退院等のため休職と復職を繰り返す場合を考慮し、治療と仕事の両立の観点で見直されました」

退職後の健康保険は、その選び方において大きな改正が。

「会社員が在職中に加入していた健康保険に、退職後も最大2年間被保険者として継続加入できるのが『任意継続被保険者制度』です。

これまでは一度これを選択すると、原則2年間はやめられませんでしたが、改正により、途中でも脱退できるようになります」

脱退した後“国民健康保険に加入する”もしくは“配偶者の扶養になる”ことも可能になるということだから、国民健康保険の方が保険料が安い場合は2年を待たずに加入できるのはメリットとなる。

今回の改正では、健康保険組合に加入している人にとっては保険料が高くなる可能性も。退職前に、任意加入する場合の保険料を確認する重要性が増しそうだ。

■収入が減るなか負担増の流れは続く…

【4月】

60歳を過ぎて仕事を続けながら年金を受給する「在職老齢年金」(特別支給の老齢厚生年金)の制度が改正に。

〈在職老齢年金〉:60~64歳の「年金額が減額されない停止基準」が「28万円→47万円」に。

〈老齢厚生年金〉:65歳以降、毎年10月に、それまでの加入期間をもとに年金額を計算する方式に。

〈老齢基礎年金・老齢厚生年金〉:65歳以降で受給できる老齢年金の繰り下げ上限が「70歳→75歳」に。

〈国民年金手帳〉:廃止され、基礎年金番号通知書に切り替え。

〈企業型確定拠出年金(企業型DC)〉:受給開始を「60~70歳」から「~75歳」に拡大。

〈個人型確定拠出年金(iDeCo)〉:受給開始を「60~70歳」から「~75歳」に拡大。

「現行制度では、60~64歳の人で、月々の年金(1)と、月給+ボーナスの1カ月分(2)の合計額(1)+(2)が“28万円”を超えると、年金の支給額の一部または全額がカットされます。この上限が“47万円(令和3年度の額)”に引き上げられます。

つまり、(1)と(2)の合計額が47万円までであれば、年金額はカットされず、全額受け取れるようになるということです」

■収入が減るなか負担増の流れは続く…

また、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方で、“受給開始の繰り下げ年齢”の上限が70歳から75歳に拡大することも覚えておきたい。受給開始を遅らせれば、月ごとの支給額は上積みされるが、もらえる期間は短くなる。

「これと同様に、企業型確定拠出年金(企業型DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)の受給開始時期も75歳までに拡大します」

【5月】

〈企業型確定拠出年金(企業型DC)〉:加入可能年齢を「65歳未満」から「70歳未満」まで引き上げ。

〈個人型確定拠出年金(iDeCo)〉:加入可能年齢を「60歳未満」から「65歳未満」まで引き上げ。

「さらに、5月には加入可能年齢の上限が企業型DCで65歳未満から70歳未満に、iDeCoで60歳未満から65歳未満にそれぞれ延長され、老後資金を準備するための期間が延びることになります」

日々の出費から、老後の資産設計まで、さまざまな制度が変わる’22年。家計を守るためにも、これらの動きに置いていかれることのないようにしたい。

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