「高血圧で薬が手放せない」「骨粗しょう症予備群だといわれた」「認知症にはなりたくない」ーー読者世代はさまざまな体の不調や不安を抱える人が多い。「年のせいだから」とやりすごしている腰痛もつらいし、ガサガサした乾燥肌やメタボも本当はなんとかしたいのだ。

「人の体は、食べたものでできています。だから、体を変えたいときは、食べ物を見直すのも1つの方法です。体調の改善に有効な栄養素を積極的に取ることで、持病や不調が徐々に軽快することが期待できます」

こう語るのは、栄養療法を実践する医師の姫野友美先生だ。

「高血圧の方の食事は『塩分(ナトリウム)を控える』ことが大切ですが、最近は『カリウムを取る』ことにも注目が集まっています。カリウムにはナトリウムの排出を促し、血圧を正常化させる働きがあるからです」

栄養学でも新しい事実が数多く発見されているという。私たちはそんな新事実を上手に取り入れて、食生活に生かしたいものだ。

「中高年女性が注意したい骨粗しょう症も、実は『カルシウムを取る』だけではじゅうぶんとはいえません。カルシウムが有効に働くためには、マグネシウムやビタミンDが欠かせないからです。また、認知症の予防には、青魚などに含まれるDHAが有名ですが、脳の神経細胞の形成にはレシチンが重要な働きをします。レシチンを含む豆類や卵を取るようにしましょう」

人生100年時代、“健康で長生き”するために、必要な栄養素をきちんと知って、食事から取るように心がけたい。

「腰痛がつらい方は、筋肉疲労を回復させるビタミンB群を取っていただきたいし、皮膚の乾燥に悩む方には、皮膚の角質化を防ぐビタミンAや皮膚の新陳代謝を促す亜鉛が有効です。また、コロナ太りやメタボリックシンドロームを改善するには、腸内環境を整える食物繊維が効果的でしょう」

ただ、栄養面をよく考えて食事を取りたいが、忙しい毎日、なかなか続かないのが現実だ。

「私は40歳前後から冷えや便秘、肌荒れなどに悩むことが増えました。でも薬ではなく、食べ物でなんとかしたい。そう考え、たどり着いたのがスープです」

そう話すのは料理研究家の藤井香江先生。栄養について調べ、実際に食べて効果を検証。調理法も工夫してきたという。

「上質な食材を時間をかけて調理すれば、栄養面も味もすばらしいものができますが、毎日は続かないでしょう。

身近な食材から栄養を引き出し、簡単・時短でおいしく食べたいなら『蒸しいため』が最適です」

蒸しいためは、最初に食材と少量の水と油を鍋に入れふたをし、強火にかけることで水蒸気が対流し、食材全体に油がコーティングされる。軟らかく仕上がり、うま味もアップするという。

2人分の具材の目安は500mlカップ1杯。計量カップ1杯の具材に水分は300~400mlと覚えたら、あとは目分量でOK。めんつゆや白だし、ポン酢など市販の調味料を活用しよう。

■おいしさアップの「蒸しいため」のコツ

【1】2人分を作るなら、具材(およそ200g)と、油(小さじ1/2)、塩(ひとつまみ)、水(50ml)を鍋に入れる。

具材は切ったものからどんどん入れていこう。

【2】ぴっちりふたをして、3分強火にかける。水蒸気を対流させるため、ふたは蒸気穴のないものを(穴があるときは棒状にしたアルミホイルでふさぐ)。

【3】300~400mlの水分を入れ、ひと煮立ちさせたら味見を。味が足りないときは調味料を足す。飲み干すころにちょうどよくなるくらいの薄味がベスト。

「3分蒸しいためをしたら、あとは水分を足すだけで、どんな食材でもおいしいスープになりますよ」(藤井先生)

春の兆しが見えるとはいえ、冬の冷えが残った体を温めてくれるのもスープのメリットだ。

「つい適当になりがちな朝食に、栄養たっぷりのスープを取り入れ、エネルギーを補給してほしいと思います。忙しい朝でもスープなら、具材を切って煮るだけと、とても簡単です。特に中高年女性には、朝からしっかりタンパク質を取ってほしいですね。卵や納豆、豆腐などを具材に加えた朝のスープで、不足しがちなタンパク質を補ってください。朝スープで1日を元気にスタートすれば、体の不調もだんだんと改善されると思います」(姫野先生)

【PROFILE】

藤井香江先生

料理研究家、簡単ダイエットの専門家で「朝ジュースダイエット」を考案。

食の力で健康になるジュースやスープのレシピ開発を行う

姫野友美先生

心療内科医、ひめのともみクリニック院長。監修書に『ストレス脱出レシピ 心療内科医に教わる「ごはん術」』(主婦の友社)などがある