住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、大好きだったアイドルの話。各界で活躍する同世代の女性と一緒に、“あのころ”を振り返ってみましょうーー。
「聖子ちゃんとトシちゃんが共演したグリコのCMには、2人の素敵なラブストーリーが描かれていました。聖子ちゃんにヤキモチを焼くクラスメートもいたけど、私にとって聖子ちゃんはお姫様で、トシちゃんは王子様。あまりに大好きすぎて、私は嫉妬を抱くステージにいませんでした」
こう振り返るのは、大西結花さん(53)。
お姫様への憧れが生まれたきっかけは、毎回、欠かさず見ていた『がんばれ!!ロボコン』(’74~’77年・テレビ朝日系)だったという。
「バレエのチュチュを着たロビンちゃんが大好きで、“お姫様願望”が芽生えたんです」
幼少期は山口百恵やキャンディーズ、小学生のころはピンク・レディーにのめり込んだ。
「振付が歌詞と一緒に、パラパラ漫画のように写真で解説された雑誌の付録を見て、『ウォンテッド』(’77年)や『サウスポー』(’78年)を練習。ピンクのタンクトップを買ってもらって、なりきったこともありました。写真がプリントされた文房具も宝物でしたね」
そのピンク・レディーが解散を発表した’80年、彗星のごとく現れたのが松田聖子だった。
「『青い珊瑚礁』(’80年)を歌う聖子ちゃんを見たときに、“お姫様願望”に火がつきました。『エクボ洗顔フォーム』(資生堂)のCMソングだった『裸足の季節』(’80年)も気になっていたので、“ああ、あの曲を歌っている人だったんだ”とすぐ結びついて」
お姫様には当然、王子様がいるもの。それこそが田原俊彦だった。
「『3年B組金八先生』(’79~’11年・TBS系)はあまり見ていなかったので、トシちゃんのファンになったのは、たのきんトリオとして人気が出てから。
中学に入るころには、たのきんトリオの出演する映画『ハイティーン・ブギ』(’82年)が公開。
「初回の上映開始時間よりもずいぶん早く行ったのに、チケット売場はすでに長蛇の列。ビルの非常階段に座ったりしながら何時間も並んだあげく、けっきょくは立ち見で……。私はトシちゃん目当てで行ったのですが、主役のマッチがカッコよくて、すぐにファンになってしまいました(笑)」
■芸能界デビューのきっかけは“ローラー族”
そんな憧れを語る大西さんはこのころ、歌番組を見ては松田聖子の衣装に魅せられ、“いつかはアイドルに!”という夢を抱くようになる。その足がかりとして、新聞広告で見つけた劇団のオーディションにも挑戦。
「合格はしたのですが、入団時に何十万円もの入学金が必要で、母に伝えると、『本当にあなたのことが劇団に必要なら、“何十万円も払え”なんて言わないでしょ!』と一蹴されました(笑)」
ちょうどその時期、休日のたびに大阪城公園では、東京の原宿同様に竹の子族や、ロックンローラー族が集まっては踊っていた。中学生だった大西さんも、よく顔を出していたという。
「“お姫様願望”の延長だったのか、ふわふわしたファッションが好きで。それで’60年代のオールディーズのような、ポニーテイルにふわふわしたドレス姿で見学していたんです。するとローラー族のお姉さん方が『あなたもこういうファッションが好きなの? 私たちのグループにおいでよ』と誘ってくれて。中学生だったからマスコットガール的に扱ってもらえて、全国的にこうしたグループが参加するミスコンにも出場することに」
それがきっかけとなり、芸能事務所にスカウトされ、中学卒業を機に上京。
「5月には、デビュー作となるドラマ『家族の晩餐』(’84年・日本テレビ系)のオーディションに合格し、撮影に臨むことに。
女優デビュー後は順調で、すぐに映画『台風クラブ』(’85年)にも抜擢。続いて『アラベスク・ロマネスク』(’85年)で念願のアイドル歌手デビューを果たすがーー。
「私はアイドルに憧れていたわけではなく、アイドルのお姫様のような衣装に憧れていたので、用意していただいた、ストンとした形でフリンジがついたワンピースを見て愕然と。嫌だ嫌だというのを、事務所の社長に『これ、何十万円もしたんだぞ』となだめられました。恥ずかしくて、デビュー時のキャッチフレーズ(編集部注・“不思議チック少女”)さえ言いたくありません(笑)」
■「『スケバン刑事』はツッコミどころ満載でした」
だが、こうした経緯もあればこそ大ヒット作『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』(’86~’87年・フジテレビ系)にも出合えたはず。
「そうなんですが、このドラマもツッコミどころ満載で(笑)。斉藤由貴さんが演じた“初代”こそタイトルどおり“スケバン”ですが、2代目のナンノちゃん(南野陽子)は“鉄仮面”だし、私たちは“忍者”だったし、どんどん最初の世界観から離れていって。しかも武器は(中村)由真が“リリアン”、私は“折り鶴”ですからね。『これで人、倒せるの?』って話したりしていました」
ドラマで演じた風間三姉妹は、歌手としても大ヒットした。
「最終回に近づいたころ、スタジオアルタでイベントをしたのですが、新宿の東口が大勢の人の頭で真っ黒になっていたんですね。そんなに人気になっているなんて、それまで気づいていなくて、(浅香)唯と由真と3人で、『これ、わたしたちを見に来てくれたのかな』って驚いたのを覚えています」
それほどの人気を得たことで、憧れの王子様と共演する機会にも恵まれた。
「田原俊彦さんと初めて仕事をさせていただいたのは『クイズ・ドレミファドン!』(’76~’88年・フジテレビ系)だったと思います。
憧れの世界に飛び込み、憧れの人と仕事をした’80年代は、大西さんの大きな糧となったのだ。
【PROFILE】
大西結花
’68年、大阪生まれ。’84年に女優デビュー後、’85年、映画『台風クラブ』でヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。同年、歌手としてもデビューを果たす。’86年10月から放送された『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』で主人公・風間三姉妹の長女を演じ、大人気に。現在も女優、歌手として活動中