7月6日、「生活意識に関するアンケート調査」を日本銀行が発表。調査によると、現在の物価に対する実感が1年前と比べて「上がった」と回答した人は89%にものぼる。

光熱費も毎月のように値上げが発表され、支出は増える一方だ。こんな状況では、「いつまでたっても貯金できない!」と嘆きたくなるものだが……。

「毎月発表されている総務省『家計調査』には、県庁所在地における年収、貯蓄、負債などのデータが並んでいます。お金が貯まる県、貯まらない県の特徴を見ていくことで、貯蓄するためのポイントをつかむことができます」

こう語るのは、プレ定年ファイナンシャルプランナーの三原由紀さん。

本誌は「家計調査」(「貯蓄・負債編」二人以上の世帯・’21年の平均値)に基づいて、都道府県ごとの、年収に対する銀行預金や投資信託などの金融資産を合わせた貯蓄の割合(貯蓄年収比)から都道府県ランキングを作成。貯蓄が得意な地域には、どんな特徴があるのだろうか?

■上位3府県の“意外な共通点”

貯蓄率が高い都道府県ランキング3位千葉、2位京都を抑えた意外...の画像はこちら >>

全国トップの“貯蓄率”をたたき出したのは奈良県。貯蓄額は年収の4.1倍にものぼる。

地元のシンクタンク「南都経済研究所」の太田副主任が語る。

「奈良市など県北西部を中心に大阪府のベッドタウンとして発展した地域。大阪など都市部の企業に勤務する人が多く住んでいます。持ち家率が高く、その分住居費も抑えられているのでしょう」

大都市でしっかり稼ぐ奈良県だが、じつは全国でも最低クラスに物価が安い。総務省の「小売物価統計調査(構造編)」によると、物価の全国平均を100とした場合に、奈良県(奈良市)の物価水準は96・9と全国でも最低レベルだ。

さらに“無駄遣い”しにくい環境も整っている。

「奈良県は人口1万人あたりのコンビニ店舗数が全国一少ないんです。一般的に、コンビニを多用する人はお金が貯まりにくい傾向があります。スーパーで買うよりも高いのに、気軽に商品を買ってしまう。そんな支出が積み重なって大きな無駄を生んでしまうのです」(以下・「 」内は三原さん)

奈良だけでなく、2位の京都、3位の千葉も全国平均よりもコンビニ数が少ない。お金を貯めるには“コンビニ出禁”を肝に銘じるのも効果的かもしれない。

そもそも奈良県の年間収入は全国平均の633万円よりも低い610万円。それに合わせてか、無駄な支出につながりやすい外食費も全国平均より少ない。収入に合わせた生活を心がけることも貯蓄につながっている可能性がある。

奈良県に続いて2位となったのは京都府。この上位2府県には携帯料金を含む「通信費が安い」という特徴がある。

「奈良と京都は、ともに通信費が全国平均よりも低い。

携帯料金の見直しは、支出削減に効果大です。貯蓄が多い県では、格安スマホの利用率が高い傾向も見られます」

さらに京都には、貯蓄だけでなくそれを“運用する”能力が高いという一面も。

「京都府は、貯蓄に占める有価証券(株式、投資信託など)の割合が高いのが特徴です。資産を増やすには、貯蓄と投資を組み合わせることが重要。銀行に預けておくだけでは、資産はほとんど増えないからです。一方、投資はリスクを伴いますが、資産を増やすことが期待できます」

〈京の着倒れ〉と外見にお金をかけて貯金には無関心というイメージがあるが、積極的に貯蓄を運用する面があるようだ。

ちなみに、京都府の年収(589万円)とほぼ同じ宮崎県(582万円)の貯蓄率はワースト3の45位。’21年の家計調査によると有価証券の保有割合は京都が20%に対し、宮崎県は6%だ。

「その分、宮崎県は生命保険の保有割合が全国平均と比較してもかなり高いです。生命保険には貯蓄型のものがありますが、途中で解約すれば元本割れすることも。増やすなら投資で、貯めるなら貯金で、保険は掛け捨てで十分です」

3位につけた千葉県も投資に積極的な人が多い。有価証券の貯蓄に占める保有割合は22%と京都府をしのいでいる。

「大規模に開発されたベッドタウンには、都心の企業に勤務するファミリー層が多く住んでいます。年間収入も全国平均を上回っていることから、都会でよく稼ぎ、よく貯める傾向があるのでしょう。さらに、地価は東京に比べて8分の1と首都圏では比較的低水準。抑えた分の住居費を貯蓄に回すことができるんです」

このように日々倹約に努める3府県だが、実はある共通点が。余裕がある一方で「夫の小遣い」は全国平均並みかそれ以下なのだ。妻だけが無理をするのではなく、夫と家計の状態を共有し、夫婦で無駄な支出を削減していくことが貯蓄には不可欠なのかもしれない。

■外食代と高い携帯代で貯まらない高知県

一方、もっともやりくりが苦手な県は高知県という結果に。貯蓄は年収の約1.7倍。純粋な金額でも、沖縄に次ぐワースト2位だ。

「家計調査(’19~’21年の平均)を調べてみると、高知県は外食にかけるお金が大都市圏に次ぐ第10位。なかでも、飲酒代は全国平均(1万1千358円)よりも1万円近く多く、ダントツの1位。また、焼き肉とすしをよく食べており、年間の焼き肉への支出は、47都道府県で最も多く、全国平均(6千184円)の倍近くを支払っています。

すしへの出費も全国で3番目に多いんです。外食代や飲酒代が多い人は倹約には不向き。交友関係が広いとお金は貯まりにくいのです」

高知県は携帯電話の通信料が高いことも気がかりだという。

「格安スマホの普及率が低いところを見ると、改善する余地は大きいでしょう」

あなたの家計は、どの都道府県に近いだろうか? 貯金が得意な県の「貯まるルール」をまねして、貯め体質を作ろう!

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