「国葬は当たり前だ。やらなかったらバカだ」

8月24日、東京都内の講演で、9月27日に日本武道館で予定されている安倍晋三元首相(享年67)の国葬についてこう語ったのは、自民党の二階俊博元幹事長(83)。

しかし、国民の間では安倍元首相の国葬が受け入れられたわけではない。毎日新聞と社会調査研究センターが行った全国世論調査(8月20・21日)でも「反対」が53%で、「賛成」の30%を大きく上回っている。

「旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と安倍元首相や自民党との関係が次々と明らかにされるなか、国葬の実施に対して、国民からは疑問の声が相次いでいるのです。税金が投入されるうえ、黙とうや弔旗の掲揚など国民への弔意の要請も懸念されています」(全国紙社会部記者)

実施まで1カ月を切るも、混迷極める安倍元首相の国葬。そんななか、衝撃的なニュースが舞い込んだ。8月26日、国葬の費用として約2億5000万円を支出することが閣議決定されたのだ。

2億5000万円のうち、新型コロナ対策などを含めた会場の設営費などに2億1000万円あまり、会場やバスの借り上げ費用などにおよそ3000万円を充てるという。

しかし、この2億5000万円には、警察官による会場周辺や要人の宿泊先の警備、エスコートなどにかかる「警備費」が含まれていない。これをもって国葬の費用とするには程遠い、“まやかし”の金額なのだ。

本誌8月23・30日号では、安倍元首相の国葬における警備費を試算。その際、元警視庁公安部の所属で、現在はセキュリティコンサルタントの勝丸円覚氏は、警備費として35億円程がかかる可能性があると指摘した。勝丸氏が解説する。

「今回の国葬への参列者は、’67年に実施された吉田茂元首相の国葬の6000人を上回る、6400人が予定されています。警察庁が所管となって、警視庁や他府県の警察官が1万人以上の規模で動員され警備にあたることになるはずです」

参列者には、すでにハリス米副大統領やオバマ元米大統領、インドのモディ首相などの名が挙がっている。

「平常時だったら、24億円かかった昭和天皇の『大喪の礼』に近い態勢となるでしょうが、安倍元首相が銃撃されて亡くなったこともあり、特にアメリカは日本の警備態勢の改善や強化を求めてきます。

世論の反対も強く、予期せぬ事態が起こりうる可能性も。人員を増やす、装備を強化するなどして警備費用が最大35億円ほどに膨らんでもおかしくありません」

■大平元首相の合同葬では警備費22億円が計上

実際に、数十億円単位の警備費が投入された元首相の葬儀があるという。8月9日に国会で行われた国葬費用についての野党合同ヒアリングに参加した、立憲民主党の大串博志衆議院議員が語る。

「歴代の首相経験者の葬儀の警備費について調べたところ、’80年に行われた大平正芳元首相の内閣・自民党合同葬では、警備活動に必要な経費として22億円の予備費が計上されていたのです。

ただ、それ以外の記録は見つかりませんでした。たしかに、警察の年間の活動予算内で事足りたのであれば、計上される必要はありません。しかし、首相経験者の葬儀には内閣・自民党合同葬であったとしても、多くの警察官が動員され、通常の活動予算内では賄いきれないはず。なぜ記録がないのかは不思議としかいえません」

それにしても自称“聞く耳を持っている”岸田文雄首相は、国民の半数以上が反対している国葬になぜ固執するのだろうか? 政治アナリストの伊藤惇夫さんが語る。

「長く外相を務めた岸田首相ですが、外交はほぼ安倍元首相がやってきたため、海外での知名度はきわめて低い。

そのため、国葬に参列する海外の要人との弔問外交で、顔を売っておきたいという思惑もあるでしょう。

また、安倍元首相を支持する保守系の人たちに、国葬を執り行うことで味方になってもらえれば、今後の政権運営に支障を来すことがないという判断をしたとも考えられます」

先の参議院選挙で自民党が大勝し、一強体制が盤石となったことも強行を後押ししている。

「もはや、これだけ国葬に反対する声が強くなっても、その声は岸田首相の耳には届いていないのではないでしょうか」(伊藤さん)

今回、警備費用など国葬の費用について、国葬を執り行う内閣府に確認しようとしたところ“担当者が不在であり、メールやFAXでも質問を受け付けることはできない”とのことだった。

世論を二分するなかでの実施となる今回の国葬。開催意義や費用に関する詳細な説明は不可欠だ。

説明をうやむやにしたまま強行するのでは、国民からの信頼は皆無に。

9月27日が岸田政権の“葬式”になりかねない。