各地で続々梅雨明けし、猛暑日が続く日本列島。こうなると気になるのは、コワい食中毒だ。

6月には、福岡県北九州市で会食した高校生と保護者のグループ35人が、カンピロバクターによる集団食中毒に。7月には、静岡県浜松市の焼き鳥店で食事をした8人が下痢や発熱などの症状を訴え、6人からカンピロバクターが検出された。

「じつは食中毒を引き起こす細菌が、もっとも活発になりやすいのが36度あたりなんです。35度以上になる猛暑日は、菌が増殖するピークといえます」

このように話すのは管理栄養士の渥美まゆ美さん。

とくに夏休みなどで、なにかと出番が多くなるお弁当。食中毒をおこさないように、渥美さんが「夏のお弁当対策」を教えてくれた。

「お弁当で増殖しやすい菌には、まず、サルモネラ菌があります。鶏の生肉などに多い菌です。黄色ブドウ球菌は、手指の傷などからも食材に移りやすいもの。

ほかにも、カレーなどの煮込み料理に多いウェルシュ菌、肉を十分に加熱しないで食べると発症するカンピロバクターなどがあります」(渥美さん、以下同)

では、お弁当で食中毒を出さないポイントとは――。

「3原則として菌を『つけない、ふやさない、なくす』と覚えておいてください」

まず、「つけない」は、調理前に手をしっかり洗い、食器や食材をよく洗っておくこと。

次の「ふやさない」の基本は、温度管理だという。

「野菜は、きれいに洗ってあれば、きちんと水気を拭き取ったうえでの常温保存は可能ですが、常温で置いておく時間を短くすべきです。

菌がもっとも増殖するのは、『水分、栄養、温度』の3条件がそろったとき。水っぽいところに置きっぱなしにしたり、糖度の高いもの(めんつゆなど)につけたままにしないこと。つまり、水分のない状態で保存してください」

食後にお弁当箱を洗った後は、しっかりと水分を拭き取り、きちんと乾燥させた状態にすることが大事だ。

そのうえで、次の調理・盛り付けに取り掛かるべきだそう。

そして「なくす」とはズバリ、滅菌だ。

「ほとんどの菌は、高温で加熱すると死滅します。ですのでお弁当に入れる食材、具材は、原則として『加熱調理』すること、と覚えておきましょう。また、調理器具にはアルコール殺菌が有効です」

■「水分を出さない」を心がけることが大切

とにかく、水蒸気、ソース類、煮物、野菜など「水分」を出さないことがいちばんのポイント。

「まず、ソースなどの液体をおかずに直接かけて盛り付けするのはNGです。

保冷剤をのせておくことで、数時間は冷やせるとはいえ、食べるときには、外気温の近くまで温まってしまっている可能性もあります。

するとソースの『水分』、おかずの『栄養』、お弁当の『温度』と、菌が増殖する3条件がそろってしまうんです」

同様に、お弁当の“映え”重視でレタスなどの葉物をおかずの下に敷いてしまいがちだが、時間がたつと葉物野菜の水分とおかずの栄養が合わさってしまうためこれもNGだ。

「同じ葉物でも、大葉は抗菌作用があるので、水分を取り除いた状態であれば、敷いてもです」

■「夏のお弁当対策」のコツは以下を確認して!

【1】おかずに少量のソーズをかけるのはダメ

ソースを直接かけると、水分と栄養で菌が増殖しやすくなる。食材は水分の少ない状態で保つことが大事なので、ソースやしょうゆなどの調味料は小分けのパックになっているものなどを使用

【2】おかずは小分けにする

菌に汚染されている食材があったとき、小分けにしていないと増殖しやすくなる。おかずは一個一個、個別に隔離することで、食中毒のリスクが減る

【3】茹でたブロッコリーはしっかりと水気を切る

なるべく水分が少ない状態にして入れることが大事。ブロッコリーの房のところなど、水分がたまりやすい部分はキッチンペーパーなどで拭き取る

【4】ふりかけはしっとりタイプより乾物のふりかけを

しっとりタイプのふりかけも、菌数管理はされているが、パックや瓶からすくう際のスプーンに菌がついている場合もあるので、清潔なスプーンで。もちろん、乾物のふりかけのほうがより安全

【5】抗菌シートはかぶせたほうがいい

抗菌シートは、わさび成分などが含まれており、実験データで、シートがある場合の抗菌効果が報告されているので、有効

【6】揚げ物の下にレタスを敷くのはNG

レタスは、水分を多く含んでいるので、菌が増殖しやすい。逆に大葉は抗菌作用があるので、きちんと水分を取り除けば、敷いても問題ない

【7】ラップにご飯をのせて包み、おにぎりを作り、そのままお弁当箱に入れてはダメ

熱で水蒸気が残るとNG。粗熱や余分な水蒸気を取り除いた状態ならラップで包んでもOK。アルミホイルで包んでも可

【8】素手でおにぎりを握るのは絶対ダメ

これは絶対NG。手はきちんと洗っていても、滅菌はできないので、素手で握るのは禁物。おかずを盛り付ける際も、お箸、ビニール手袋を使用すること

【9】味付けを濃いめするのはNG

多少味を濃くしたからといって、消毒や、菌の増殖を抑えることにはならない。それより、濃いめにすることで、塩分過多になるほうが生活習慣病リスクが高まる

【10】夏野菜のきゅうりを入れるのもダメ

きゅうりは、基本、加熱せず生で食べるので、水分が多め。お弁当箱に入れて時間がたつと水分が出てくるので、菌が増殖する原因になる

【11】ミニトマトはヘタを取って入れる

ブロッコリーの房同様、ミニトマトのヘタは雑菌が繁殖しやすいので、外すこと

【12】保冷剤は弁当箱の上に置く

お弁当を一定以上の温度にしないことが大事。

冷気は上から下におりるので、保冷剤は弁当箱のフタの上に置くこと

【13】ちくわなどは、なるべく火を通すこと

ちくわやハムなどの調理済み加工品も、より安全を考えるなら、夏場はなるべく火を通すこと

【14】ゆで卵の半熟はNG

しっかりと火が通っていないものは、お弁当には使わないように

【15】のりはご飯の上にのせてもいい

のり自体はそれほど菌を増殖させるものでもない。余分な水分も取ってくれる

以上、15のポイントをチェックして、ぜひ正しい知識で安心のお弁当作りを心がけて!

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