歴代天皇として初めて、モンゴルを訪問される天皇陛下と雅子さま。国賓として招待を受け、7月6日から13日まで同国に滞在される。
「両陛下は6日に羽田空港から政府専用機でモンゴルへ向かいます。8日に歓迎式典とフレルスフ大統領夫妻との会見、晩餐会が予定されています。また今年は戦後80年にあたり、旧ソ連に抑留され同国で亡くなった日本人の慰霊碑も訪れて供花されます。
雅子さまはご体調次第で同行されますが、陛下は日本の支援で建てられた病院、現地の公立学校などのほか、首都ウランバートルから100キロほど離れた『ホスタイ国立公園』にも足を運ばれる予定です。さらに同国最大の祭典『ナーダム』の開会式にも臨席されることになっています」(皇室担当記者)
両陛下によるモンゴルご訪問が初めて報じられたのは今年1月のこと。しかし、正式に閣議決定したのは、6月20日、つまりご出発のわずか16日前だったのだ。本誌6月10日発売号でも政府による決定が大幅に遅延していることについて報じているが、この異常事態について、宮内庁関係者は次のように明かす。
「コロナ禍のころは国内外にさまざまな制約が多かったわけですが、そうした状況にない昨今で異例の遅さです。外務省がメディアに配布した資料には、予定の日程こそ載っていましたが、タイムスケジュールは書かれていませんでした。
また閣議決定と同日、宮内庁のホームページに掲載された『御日程の概要』には、6日に《ウランバートル御着》と書かれている以外は《同地御滞在》としか記載されていなかったのです。
6月中旬、宮内庁や外務省の関係者などによる第2次現地調査班がモンゴルを訪れていました。しかし以降も詳細を煮詰められず、閣議決定後も調整が進められているという状況だったと……」
この宮内庁関係者によれば、閣議決定がなければ表立った両陛下のご準備が進められないと話し、こう続けた。
「最たるものは、ご訪問国の事情に詳しい専門家などを御所に招き、事前に最新の知見や情報を直接ヒアリングされるご進講です。6月末までに、モンゴルご訪問に際してのご進講が間に合わなかったのです。
両陛下は例年行われるご公務に加え、戦後80年に際して各地へのご訪問などにも臨まれているため、今年は特にご多忙であることも大きいでしょう。
直近では、スキャンダルによって首相が交代するなど、モンゴルの政情も安定しているとは言えない状況です。ご訪問に際しての両国間の調整が難航するほど、現地で不測の事態が起こる可能性も高まってしまうと懸念しています」
十分に時間が確保できない状況でも、陛下と雅子さまは、懸命に可能なご準備を進められていた。前出の皇室担当記者はこう語る。
「両陛下は、外務省や侍従らがまとめた資料などをはじめ、書籍などを取り寄せながら、つぶさに目を通されています。
また、雅子さまの妹・池田礼子さんは1990年代に仕事で頻繁に同国を訪れており、現地事情についてお話を聞かれていると思います。陛下も2007年、皇太子時代にモンゴルを訪問されていますし、お二人で力を合わせ、可能な限り情報を収集されているそうです。
万が一、不測の事態が起ころうとも、万事動じられることのない陛下がいらっしゃれば、雅子さまも安心して行事などに臨むことができるはずです」
■“アドリブ”が得意な陛下とともに……
陛下といえば、若かりしころから“アドリブ”にお強いエピソードに事欠かない。1991年9月、北アフリカのモロッコを訪問された際、陛下が一時“行方不明”となるハプニングが起きた。当時宮内庁職員として同行した、皇室解説者の山下晋司さんはこう振り返る。
「両国の皇太子が夕日の美しい公園を馬車に乗って見学されました。見学終了後に両皇太子は車に乗り換えて、すぐに出発されたのですが、東宮侍従長と東宮侍従が乗るはずの車も二人を乗せずに出発してしまったのです。同行記者団の報道バスも置いてけぼりでした。日本では考えられないことですが、いまとなっては印象深い思い出です」
だが陛下は動揺することなく、むしろ楽しまれていたご様子だったという。
「陛下は警備陣がかき分ける群衆の間を悠然と歩き、人々と交流されていたのです。ご帰国後の記者会見で“普通の人々の生活が見られてよかった”と話され、とっさのご機転に宮内庁職員も感服しきりだったことが思い返されます。
昨年の英国ご訪問の際、バッキンガム宮殿でスピーチに臨まれた際にも、アドリブでおことばを加えられたことがありました。雅子さまとともに母校・オックスフォード大学を訪ねることを語り、『国王陛下の母校のケンブリッジ大学ではありませんが』と原稿にない一節を加え、場を沸かされたのです。
お二人でこれまでの国際親善での思い出などを振り返る日ごろの語らいによって、雅子さまはどのようなことにも対応できる“アドリブ力”を磨かれてきたようにお見受けしています。きっとどのような困難があろうとも、“陛下となら乗り越えられる”と、お力を合わせて臨まれていくのでしょう」(前出・皇室担当記者)
ご夫妻の日ごろの語らいも、“愛の特訓”に……。雅子さまは陛下のサポートを受けながら、歓迎するモンゴルの人々を、温かなご慈愛で包み込まれるはずだ。