「家事をするにも大量の汗をかいてしまう毎日です。猛暑のなか、50代以上の女性に意識してほしいのは、尿路結石の予防です」

そう警鐘を鳴らすのは、医療法人社団五良会理事長で、竹内内科小児科医院院長の五藤良将さんだ。

尿路結石とは、腎臓や尿管、膀胱、尿道など尿の通り道である尿に結石ができる病気だ。

「結石の詰まりによって、主に側背部痛を起こします。その痛みはかなり激しく、のたうち回るほどで、痛みのあまりに吐き気や嘔吐を伴うことも。痛みだけでなく、頻尿、残尿感などの排尿障害、ときにはワインレッド色の血尿が出たりもします」

元凶となる結石は、遺伝や生活習慣などもリスク要因だが、特に暑さの厳しい夏場にできやすいのだという。

「発汗により体内の水分が失われると、結石のもととなるカルウムやシュウ酸、尿酸などの尿中での濃度が高まるためです」(五藤先生、以下同)

『尿路結石ハンドブック』(中外医学社)の尿管結石の外来患者数と気温の関連を見ると、性別、年齢に関係なく、患者数は気温が上昇する7月から9月にかけて増加し、10月から如実に減っている。

同書では、《地球温暖化は結石の有病率に関与する可能性あり、米国では2050年までに地球温暖化により結石患者は約30%増加すると推定》と言及されている。

また、尿路結石の患者の男女比は3.6対1だが、女性は50代以降に罹患率が増える傾向にある。

日本泌尿器科学会の「尿路結石症診療ガイドライン」によると、腎臓・尿管にできる上部尿路結石は、女性の場合、20代から罹患率が上がり始め、50代、60代でピークに。

膀胱・尿道にできる下部尿路結石は、20代から罹患率が緩やかに上昇し、50代、60代から増加ペースが増している。

「女性ホルモンのエストロゲンは、骨の中にカルシウムを閉じ込めておく働きをします。閉経後はエストロゲンの減少により、本来なら骨の中に閉じ込められるカルシウムが血中に漏れ出してしまい、結石ができやすくなるのです」

これらの原因から、猛暑日の続く今夏は、50代女性の尿路結石患者が増加する恐れがあるのだ。予防のため注意すべきことは?

「1日2リットル以上の水分補給が基本です。

合わせて、クエン酸は尿中のカルシウムと結合して結晶を作りにくくし、尿をアルカリ化して結石の発生を抑えるため、かんきつ類などを取りましょう。またカルシウムは、腸内でシュウ酸と結合し便に排出されるため、むしろ適度な摂取が結石予防に有効です」

いっぽう、気をつけたい食品は、シュウ酸が含まれるほうれん草、チョコレート、ナッツ類(特にアーモンド)、尿酸結石のもととなるプリン体が含まれるレバー、魚卵、ビールなど。過剰なビタミンCも結石リスクを高めるという。

「ビタミンCは余剰に取ると尿中に排泄されます。その代謝過程で一部がシュウ酸に変換されるので、高濃度のビタミンCサプリなどを利用している人は注意しましょう」

熱中症対策と合わせて、十分な警戒が不可欠だ。

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