「7月下旬にかぜをひいて発熱し、数日寝込んでいたら、今度は首から背中にかけてチクチクと痛みだし、赤い発疹が出てきたんです。最初は我慢できたのですが、日を追うごとに痛みがひどくなり、そのうち皮膚が水ぶくれ状態に。
急いで病院を受診したところ“帯状疱疹”と診断され、抗ウイルス薬を点滴。それから2週間以上経過しましたが、痛みはまだ続いています」(東京都・主婦55歳)
長引く暑さのなか、新型コロナ、百日ぜきなど感染症の流行が報じられている。そのいっぽう、今夏は帯状疱疹にかかる人も急増しているという。帯状疱疹とは、水痘(水ぼうそう)と同じ、「水痘・帯状疱疹ウイルス」が原因で起こる皮膚の病気。幼少期に感染した水痘のウイルスは、体内の神経の根元にずっと残っており、免疫機能が低下すると再び活性化し、神経にダメージを与えながら増殖する。皮膚や神経に激しい痛みが生じて、赤い発疹や水疱が出現する疾患だ。
「例年、夏場は帯状疱疹の発症者が増える傾向にありますが、今夏は特に患者数の増加が目立ちます。当院では1日平均で3人の患者さんに帯状疱疹の診断が出ています」
こう語るのは、帯状疱疹治療に詳しい、まりこの皮フ科の本田まりこ院長。国内最大規模の診療データベースを保有するメディカル・データ・ビジョンが先日発表した調査結果によると、毎年7~10月にかけて帯状疱疹の患者数が増えることがデータでも改めて示されている。
今夏の患者数は、例年を上回る勢いを見せている。増加の原因として、本田院長は5月以降から高温状態が続き、夏バテによる疲労、体力、そして免疫機能の低下が最も大きいと話す。
「夏バテ以外にも、この暑さでダニがかなり死んでいるんです。
日本人の9割は帯状疱疹ウイルスを体内に持っているとされ、発症率は50代から上昇し、80歳までに約3人に1人が発症するそうだ。50代以上で発症すると、1カ月以上強い痛みが続くことも。
帯状疱疹は重症化すると脳炎や全身感染などを引き起こし、年間約15人が死亡しているというから、決して甘くみてはいけない病気だ。虫刺されや皮膚炎と自己判断し、初期対応が遅れると、深刻な事態を招きかねない。
「特に糖尿病やアトピー性皮膚炎リウマチなどの基礎疾患のある人は、発症後に心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクが高まるので、十分な注意が必要です」
本田院長によると、多くの人が海外や国内の旅行、また帰省などの後で疲労しているお盆明けに、発症者がさらに増える危険性があるとも……。
「初期症状として、神経に沿ったビリビリとした痛みや、その部位に赤い発疹が出るのが特徴です。症状が出たら医療機関を受診し、抗ウイルス薬による早期治療を開始すことがとても重要です」
予防には、ワクチン接種が最も効果的だという。皮膚に異変を感じたときは、できるだけ早い受診が不可欠だ。