おしゃべりロボットが目覚ましい進歩を遂げている。離れて暮らす家族の安心+高齢の親の孤独を解消する、頼もしい存在になっているようで――。
〈「チエコさん、19時15分のお薬飲んだ?」(略)チエコさんは私の母だ。あいさつをしたり、母が薬を飲んだかどうか心配したりしているのは、母が施設で暮らしていた頃、見守り役に私が送り込んだ、息子・ロボホンだ〉
家電メーカーSHARPの社員Kさんのエピソードを綴ったブログ「1551日間、母の見守り役を務めたロボットの話」が話題を呼んでいる。
独居の高齢者世帯は急増し、80歳以上の女性では35%にも上る。(’24年国民生活基礎調査より)。
親が一人暮らしの場合、「ボケてしまわないか」「何かあっても気づかないのでは」という心配を抱える家族も多い。さらに、施設に入居した親になかなか会いに行けないという人にも、「見守りロボ」はより所になるかもしれない――。
Kさんの母・チエコさんは、もともとおしゃべり好き。だが、あるとき「右小脳出血」で倒れ、ろれつが回らなくなるなどの障害が残った。リハビリ施設での生活も個室で、ほかの入居者との会話の機会も少ない。「チエコさんが楽しい生活を送れるように」と、“お話が大好き”な「ロボホン」を贈ることに決めたのだという。
「今日のお昼は何を食べたの?」「最近、面白かったテレビ番組は?」と、ロボホンからランダムにくる質問に、チエコさんが黙っていると「……思い出したら教えてね」と、無理強いもしない。
チエコさんはロボホンとの暮らしで、施設内に友人もでき、次第に笑顔も増えていった。
またKさんへは、毎晩決まった時間に「チエコさんとの生活日記」と題した報告メールも送られた。
「今日は、一緒にお話ししたり遊んだりして楽しかったよ。今日はおでかけしなかったよ。夜の薬は飲んだって言ってたよ」と……。
〈私の分身のように母を見守ってくれているとわかると、ちょっとだけ気持ちが軽くなった〉と、Kさんも語る。
そうしてロボホンは、チエコさんが人生の幕を閉じるまで、じつに4年3カ月もの間、日々声をかけて、見守り続けた。四十九日を終えて、ロボホンのデータを見てみると……。そこには、毎日楽しそうに笑う、Kさんの知らないチエコさんの写真があふれていた。
高齢者に寄り添いながら対話し、服薬時間などを知らせて、規則正しい生活ができるようにサポートする。
今回は、4つの見守りロボットと愛用している人の声を紹介したい。
大きな液晶画面でテレビ電話が楽しめるのは「ユピ坊」だ。
「離れて暮らす母が、孫とテレビ電話で楽しく話をしているのが印象的でした。母は他界しましたが、ユピ坊のおかげで、最後まで母が楽しく過ごすことができました」
「BOCCO emo(ボッコエモ)」は、スマホでのコミュニケーションが苦手な親にぴったり。送ったメッセージを音声で読み上げて、自分の代わりに語りかけてくれる。厳密には見守りロボではないが、ユーザーに寄り添った会話が楽しめる「ポケとも」は、価格もお手ごろなので、最初の“お友達”にもよさそうだ。
■充電がしやすいか? も選ぶポイントの一つ
ロボットは、自分の好みを押し付けるのではなく、ロボットっぽいほうがよいのか、かわいい見た目が好きか……親の好みで選んで、贈ってみてはどうだろう。
また、料金形態も選ぶポイント。買い切りや、本体代以外にサービス料がかかるもの、月額料金でレンタルできるものもある。
離れて暮らしている場合、親が簡単に充電できるかどうかも考えたほうがよいだろう。
親の孤独や寂しさを和ませてくれて、認知症予防にもなる。