==========
まるでドラマのようなロマンチックな場面に遭遇するなんて、日常の中では早々ないですよね。都内でOLをしている朋美さん(仮名・32歳)は、自分がセッティングしたお見合い的な合コンで見事な名シーンを目の当たりにしたことがあるそうです。
男友達に頼まれ合コンをセッティング
「大学時代からの男友達だったYからどうしても彼女が欲しいとせっつかれて、仕方なくK子という同僚を紹介したんです。Yはもう出会った瞬間からK子に一目惚れ。わかりやすく彼女に夢中になっていました」有村架純をぽっちゃりさせたようなルックスのK子さんはYくんのドンピシャ好みだったようです。しかし、元来あまり女性との会話が得意ではないYくんは、アプローチらしきことはすれどK子さんの心に響く様子はなく。微妙な距離感を保っていました。
「その時、K子は彼氏はいなかったのですが好きな男性がいたんです。なので私の方でも事前にK子には『無理しないで会うだけ会ってくれれば、断ってもいいから』と伝えてありました。Yがフラれて終わるだろうと踏んだ私は、Yに『深追いしない方がいいよ』と釘を刺していたんです」
忠告むなしく大暴走
案の定、あまり飲み会は盛り上がらず。しかし偶然にも同じ方向に家があった3人は、終電で池袋駅から埼京線に乗りました。一番先に降りるのは、赤羽駅に自宅があるYくん。K子さんに連絡先交換を迫るYくんに、朋美さんは「とにかく今日は大人しく帰って、今後距離を詰める努力をしろ」と耳元で忠告し続けたそうです。「そして赤羽に到着した時のことですよ。
付き合うことになった2人
車内に取り残された朋美さんは周囲の視線を感じたものの、そのYくんの行動に密かに感動を覚えていたと言います。そう感じたのはK子さんも同じだった模様。K子さんはタクシーを使って帰宅することもなく、そのままYくんの自宅に泊まりました。後日、2人は晴れて付き合うことになったそうです。
彼のどこがよかったの?
「2人はそのままゴールインしました。先日ご自宅にお邪魔して、生まれたばかりの息子さんを抱かせてもらったのですが、この幸せな家族はYのあの咄嗟の行動が始まりだったのかと思って感慨深くなりましたね」改めてK子さんにYくんの良さを尋ねたところ、やはり「変なところで男らしさを発揮するところ」と答えたとか。一歩間違えれば女性にトラウマを植え付けかねませんでしたが、あの日、あの時、あの場所で、彼が強引にK子さんを連れ去らなければ……2人が結婚することはなかったのかもしれません。
―シリーズ「忘れられない出会いと別れ」―
<文/もちづき千代子 イラスト/とあるアラ子>
【もちづき千代子】
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。