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春はイメチェンの季節。暖かくなり、新たな自分になってあちこち出歩くのはワクワクしますよね。
今回は、久々のイメチェンを果たした女性のエピソードをご紹介しましょう。
新しい美容院に入ってみたら
吉田美紀子さん(仮名・37歳・独身・派遣社員)は、なかなかお気に入りの美容院を見つけられずにいました。「いきなり立ち入ったことを聞かれるのが苦手なんですよね。チャラい美容師さんが私に何の興味もないのに根掘り葉掘り質問してくると、死んだ目になってしまうんですよ」
様々な美容院を1回きりで渡り歩いていたある日、近所にできたばかりの新しい美容院にふと入ってみたそう。
「美容院は好きではないですが、中年女性は髪が伸びっぱなしのままだと見ていられない感じにすぐなってしまうので。おしゃれというより清潔感のキープのために定期的に行かなくちゃいけない場所だと思っています」
担当になったラッパーのクリーピーナッツ・R指定似の美容師さん(30代前半・男性)に、美紀子さんは「5センチ位切って後はバランスよく整えてください」と、いつも通りに注文しました。
ショートカットにはヘルメットみたいにされた嫌な思い出が…
「そしたらその美容師さんが『すみません、余計なお世話なのですが、おでことフェイスラインがとてもキレイなので思い切ってショートにしてみませんか?春ですし』と無邪気な感じで提案してきたんですよ」美紀子さんは、高校生の頃に一度ショートにして以来ずっと前髪のあるロングヘアを貫(つらぬ)いてきました。
「その時ヘルメットみたいな髪型にされて、すっかりこりてしまったんです。冒険なんてするとこんな風に怪我するだけなんだから、無難(ぶなん)にしているのが安全だって思ってずっと生きてきました」
いつもだったら、いきなりそんな大胆な提案をしてくる美容師さんに対して「ないな、もう二度と来ない」と思う美紀子さんでしたが…。

高校時代のショートのトラウマで、ずっと顔を出すのが嫌だなと思いロングヘアで隠してきましたが「あれから20年近く経って、すっかりおばさんになったんだし、もう私の顔なんて誰も見ていないんだからショートでもなんでもいいか」という、決して前向きではない理由からでしたが、美紀子さんはいつもならしない決断をしました。
イメチェンに成功したら、新しい問題が浮上
「いくら美容師さんが『絶対キレイになりますから』と言ってくれても、そんなの簡単には信じられないし、半信半疑のまま切ってもらっていたのですが…私、思っていたよりずっとショートが似合っていたんですよ(笑)」
「ショートにしたら老けるかな?と思っていたらそんなことはなく、返って若返ったように感じました。
イメチェンを果たし、ご機嫌の美紀子さんでしたがある問題が浮上してきました。
買い物の楽しさを知った
「家に帰って改めてクローゼットを見てみると、暗いトーンのつまらない服しかなくて、新しいヘアスタイルに合う服が一着もなかったんです。ずっと無難でいいやと、適当にシンプルな服を買い続けていたので」そして美紀子さんは久々に、洋服や靴にバッグや化粧品などを大量に購入したそう。

今までは『私に似合いっこない服を勧めてきて何なの?ただ売りつけたいだけなんだろうな』と思っていましたが、それは私の自信のなさからくる“いじけ”だったんだと気づくことができました」
翌日美紀子さんが出社すると「どうしたの?まるで別人みたい」「そんなにキレイだったんですね」などと、すれ違う人みんなに話しかけられて嬉しくなりました。
「私はあまり自分から話しかけたりできない性格で、いつのまにか仕事の話しかしなくなってしまうことが多いから、この機会にもっと積極的にならなくちゃと思いました。だって私が髪型を変えたら、こんなにみんな気がついてくれるんだから」
同じ会社の男性からアプローチが
すっかりショートカットが気に入った美紀子さんは、転機となったその美容院に行くことが楽しみになりました。「初めて行きつけの美容院ができたんですよ。ショートにしたことで、今まで心を覆っていた鎧(よろい)みたいなものが自然とはがれたような気がしています。あれからすっかり明るくなりました」

「恋愛なんて何年ぶり?という感じで少し怖いのですが、ショートにした時みたいに一歩踏み出してみようと思っています」
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。