俳優の水上恒司さん(26歳)が、国民的お菓子「たべっ子どうぶつ」をフル3DCGアニメーション映画化した『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』で声優に初挑戦。たべっ子どうぶつたちを陰から支え、皆の頼れる存在ぞうくんの声を務めています。
水上さんは2018年にデビュー。数々の映画・ドラマに出演を重ね、日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなどますます活躍の場を広げています。
この5月で26歳になり、20代後半をあることへの「準備期間」と位置づけているという水上さんに映画のこと、仕事のことについてお話を聞きました。
――今回の『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』では、ぞうくんの声を担当されましたが、キャラクターの印象はいかがでしたか?
水上恒司(以下、水上):らいおんくん(松田元太)の良い女房役というイメージでした。らいおんくんは、序盤では誰も彼をリーダーとは認めていないのですが、ぞうくんはそんならいおんくんを理解しようとしているんです。その姿勢が、とても良いパートナーだなと思いました。近くにいてほしい存在だなと。
――たべっ子どうぶつたちは、見た目はかわいさをまとっていますが、描かれる物語には普遍的なテーマがあり、見応えがある物語でした。
水上:決して子どもだけに向けたものではなくて、大人が観てもハッとさせられるものがありますよね。大人は愛や友情や絆って大事だよね、と経験から知っているだけに、わかったつもりになってしまいがちなところがあると思うんです。でも実は、その大人にこそ何か課題があるのかもしれない。この映画を観て心が動かされるかどうかは、その人の受け取り方次第ですが、子供も大人も確実に心を動かす力を持っている作品だと思います。
――今回は声優初挑戦だったそうですが、いかがでしたか?
水上:以前にもオーディションを受けたことがあるのですが、そのときは落ちてしまって。「やってみよう、受けてみよう」という気持ちはあったけれど、「たぶん受からないだろうな」という思いがずっとありました。
――らいおんくん役の松田さん、ぺがさすちゃん役の髙石あかりさんの印象はいかがでしたか?
水上:松田くんは、らいおんくんの愛らしさというか、愛されるポイントみたいなものをしっかり表現されていたと思います。それは松田くん自身の声の力、技術ももちろんあると思うのですが、それ以上にその人がやる意味みたいなものが、ちゃんと伝わってくる演技だと感じました。
髙石さんの歌声も本当に素晴らしかったです。そして母性とも少し違うのですが、慈悲のようなものをぺがさすちゃんから感じました。それをこの年齢で髙石さんが表現しているのが本当に素晴らしいと思いました。技術の次元を超えた、何か深いものがあるんじゃないかなと。そういう領域の表現に感じられました。
──俳優は7年目になるかと思いますが、今、お芝居は楽しめていますか?
水上:楽しいです。ただ、緊張はするんです。「このシーンどうしようかな」って考えていると眠れなくなりますね(笑)。
4月の頭に地方での撮影が終わって、「やっとゆっくりできる、死ぬほどゆっくりしてやろう」って思ったんですけど、気づけばもう次のことを考えちゃってるんですよね。
本当は、商業的なことはあまり考えたくないんですけどね。でも、実際は考えないといけない。いや、考えたくないって言うのは、ある意味でプロ失格な発言かもしれないけれど……それでもなるべく、そういうことにはとらわれず、自分が思う世の中にコミットしていけるような作品を作りたいと思ってます。
──約3年前にリスタートも経験されたと思いますが、その意味では何か変化を感じていますか?
水上:いやもう、最高ですね。まさに僕がやりたかったことを今やれている状態です。
そこにはもちろん初めて出てくる悩みや出来事、壁もたくさんあります。でも、そういったものとちゃんと向き合っていくことが普通の生き方だと思うんですよね。とはいえ、甘えてしまう部分もあると思うんですけど、何をやっても芝居に生きてくるわけですから、すごい職業だと思いますよ、本当に。だから、何でもやってみようって気持ちです。
──20代後半、どのように過ごしたいですか?
水上:30代前半から、自分がやりたいと思っていること……実はもうあちこちで言っているので密かにではないんですけど(笑)、それに向けての土台作りをしていきたいと思っています。
──何か公言されてたのでしょうか?
水上:いや、公言まではしていないんですけど……(苦笑)。制作会社を作りたいと思ってるんです。若い方々がこの世界に興味を持ったときに、どこに行ったらいいのだろうと思うはずで。だからスタッフを育てたい、この世界が面白いと思ってもらいたい、映画を作るって楽しいと思ってもらいたい、そのための場所づくりをしたいなと思っているんです。
──20代で後進のことを考えるって、素敵なことだと思います!
水上:実現するには実績も実力も信頼もないといけないと思っているので、そういったものを具体的に構築していくことが20代後半のやること。今は準備期間かなと思っています。そもそも日本の少子化が進んでいて、そこが一番大事だと思うのですが、僕には僕のできることをっていう想いではいますね。
<取材・文/トキタタカシ 撮影/塚本桃>
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。
水上さんは2018年にデビュー。数々の映画・ドラマに出演を重ね、日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなどますます活躍の場を広げています。
この5月で26歳になり、20代後半をあることへの「準備期間」と位置づけているという水上さんに映画のこと、仕事のことについてお話を聞きました。
大人が観てもハッとさせられる

©️ギンビス ©️劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
水上恒司(以下、水上):らいおんくん(松田元太)の良い女房役というイメージでした。らいおんくんは、序盤では誰も彼をリーダーとは認めていないのですが、ぞうくんはそんならいおんくんを理解しようとしているんです。その姿勢が、とても良いパートナーだなと思いました。近くにいてほしい存在だなと。
――たべっ子どうぶつたちは、見た目はかわいさをまとっていますが、描かれる物語には普遍的なテーマがあり、見応えがある物語でした。
水上:決して子どもだけに向けたものではなくて、大人が観てもハッとさせられるものがありますよね。大人は愛や友情や絆って大事だよね、と経験から知っているだけに、わかったつもりになってしまいがちなところがあると思うんです。でも実は、その大人にこそ何か課題があるのかもしれない。この映画を観て心が動かされるかどうかは、その人の受け取り方次第ですが、子供も大人も確実に心を動かす力を持っている作品だと思います。
「たぶん受からないだろうな」という思いも

水上恒司さん
水上:以前にもオーディションを受けたことがあるのですが、そのときは落ちてしまって。「やってみよう、受けてみよう」という気持ちはあったけれど、「たぶん受からないだろうな」という思いがずっとありました。
声優の世界は声に特化していますし、僕にはその世界に踏み込むことは難しいのではないかなと、どこかでずっと感じていたんです。そんな中で今回のオファーをいただいたので、大丈夫かなと不安もありましたが、やるからにはしっかりやりきりたいという思いで臨みました。
――らいおんくん役の松田さん、ぺがさすちゃん役の髙石あかりさんの印象はいかがでしたか?
水上:松田くんは、らいおんくんの愛らしさというか、愛されるポイントみたいなものをしっかり表現されていたと思います。それは松田くん自身の声の力、技術ももちろんあると思うのですが、それ以上にその人がやる意味みたいなものが、ちゃんと伝わってくる演技だと感じました。
髙石さんの歌声も本当に素晴らしかったです。そして母性とも少し違うのですが、慈悲のようなものをぺがさすちゃんから感じました。それをこの年齢で髙石さんが表現しているのが本当に素晴らしいと思いました。技術の次元を超えた、何か深いものがあるんじゃないかなと。そういう領域の表現に感じられました。
約3年前のリスタートを経た現在は「最高」

水上恒司さん
水上:楽しいです。ただ、緊張はするんです。「このシーンどうしようかな」って考えていると眠れなくなりますね(笑)。
4月の頭に地方での撮影が終わって、「やっとゆっくりできる、死ぬほどゆっくりしてやろう」って思ったんですけど、気づけばもう次のことを考えちゃってるんですよね。
世の中に出ていくことや、お客さんのことを考えた役作り、構築の仕方は意識します。撮影中ももちろん考えるんですけど……でも究極を言うと、自分の関わった作品がどんなふうに完成するのか見ていることが好きなんだと思います。
本当は、商業的なことはあまり考えたくないんですけどね。でも、実際は考えないといけない。いや、考えたくないって言うのは、ある意味でプロ失格な発言かもしれないけれど……それでもなるべく、そういうことにはとらわれず、自分が思う世の中にコミットしていけるような作品を作りたいと思ってます。
──約3年前にリスタートも経験されたと思いますが、その意味では何か変化を感じていますか?
水上:いやもう、最高ですね。まさに僕がやりたかったことを今やれている状態です。
そこにはもちろん初めて出てくる悩みや出来事、壁もたくさんあります。でも、そういったものとちゃんと向き合っていくことが普通の生き方だと思うんですよね。とはいえ、甘えてしまう部分もあると思うんですけど、何をやっても芝居に生きてくるわけですから、すごい職業だと思いますよ、本当に。だから、何でもやってみようって気持ちです。
「制作会社を作りたい」

水上恒司さん
水上:30代前半から、自分がやりたいと思っていること……実はもうあちこちで言っているので密かにではないんですけど(笑)、それに向けての土台作りをしていきたいと思っています。
より本格的に、具体的に、物事の順序や段取りを想像して、それを具現化していく。そんな時間にしたいですね、20代後半は。
──何か公言されてたのでしょうか?
水上:いや、公言まではしていないんですけど……(苦笑)。制作会社を作りたいと思ってるんです。若い方々がこの世界に興味を持ったときに、どこに行ったらいいのだろうと思うはずで。だからスタッフを育てたい、この世界が面白いと思ってもらいたい、映画を作るって楽しいと思ってもらいたい、そのための場所づくりをしたいなと思っているんです。
──20代で後進のことを考えるって、素敵なことだと思います!
水上:実現するには実績も実力も信頼もないといけないと思っているので、そういったものを具体的に構築していくことが20代後半のやること。今は準備期間かなと思っています。そもそも日本の少子化が進んでいて、そこが一番大事だと思うのですが、僕には僕のできることをっていう想いではいますね。

水上恒司さん

水上恒司さん

劇場版「たべっ子どうぶつ」

劇場版「たべっ子どうぶつ」

劇場版「たべっ子どうぶつ」

劇場版「たべっ子どうぶつ」

劇場版「たべっ子どうぶつ」
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。
主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。
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