4月から放送を開始したドラマ『ジョフウ ~女性に××××って必要ですか?~』(毎週火曜深夜0時30分~、テレ東ほか)。ヤチナツ氏作の漫画『真・女性に風俗って必要ですか?~女性用風俗店の裏方やったら人生いろいろ変わった件~』(新潮社)を原作としており、女性用風俗店「パラディーソ」の内勤で働く藤崎アカリ(山崎紘菜)と、そこで働くセラピストたちの奮闘、もとい日常を描いたドラマである。


「女性用風俗店」が舞台のドラマ、ベッドシーン撮影での“意外な...の画像はこちら >>
 そのタイトルから深夜ドラマらしいエロエロな内容なのかと思いきや、決してそればかりではない。利用客、さらにはそこで働くセラピストの葛藤が描かれており、官能的な要素がありながらも人間らしい泥臭いヒューマンドラマになっている。ポジティブな意味で“タイトル詐欺”とも言える本作のプロデューサー・正井彩夏氏に、ドラマ化に至った経緯などを聞いた。

風俗店を舞台に「お仕事ドラマ」として制作

 まず『真・女性に風俗って必要ですか?』をドラマ化した経緯として、「もともと数年前に読んでいて『面白いな』と思っていた作品です。『ドラマ化したい』と思って進めたのですが、やはり性的な内容なので1年以上も前から社内調整や脚本制作などにしっかりと時間をかけてドラマ化に至りました」と振り返る。

「女性用風俗店」が舞台のドラマ、ベッドシーン撮影での“意外な苦労”とは? プロデューサーが語る
『ジョフウ ~女性に××××って必要ですか?~』のプロデューサーを務める正井彩夏氏
 続けて、正井氏には「女性が輝くお仕事ドラマを作りたい」という思いがあり、お仕事ドラマという軸で制作したという。

「本作でスポットライトが当たるのは、女性ではなく男性です。ただ、主人公が裏方として奮闘し、その結果としてセラピストが利用客を癒す姿を描くことでも、お仕事ドラマとして魅せられることに制作する中で気付きました。『“ザ・お仕事ドラマ”みたいなわかりやすいストーリーでなくても良いんだな』と

「風俗」はNGワード? タイトルが原作と異なる理由

 原作漫画ではいろいろな“エロワード”が飛び出すなど過激なシーンが頻出するが、丁寧に時間をかけた結果なのか、ドラマではその辺りはマイルドに表現されている。

 とはいえ、原作と異なる描き方はトラブルになりそうだが、「ヤチナツさん、新潮社さんには『このワードは地上波では厳しいんです』とご説明させていただきました」と返し、変更箇所について解説する。

「女性用風俗店」が舞台のドラマ、ベッドシーン撮影での“意外な苦労”とは? プロデューサーが語る
Ⓒ「ジョフウ ~女性に××××って必要ですか?~」製作委員会
「なんといっても、タイトルが原作と異なるのは一番の変更点だと思います。やはり『風俗』というワードをタイトルにすることは社内でも『難しい』という判断になりました。ただ、風俗という言葉を使ったほうが興味を持ってもらいやすい。『お仕事ドラマとして楽しんでほしい』と思って制作しているので、エロ目的で見た人をいい意味で裏切りたかったです

 悔しさも覗かせるが、「『女性用風俗店をもう少し身近に感じてもらえれば……』という思いから、『女風』ではなく『ジョフウ』とカタカナのタイトルにしました。
放送開始後から実際に女性用風俗店で働いているセラピストさんのSNSアカウントが『ジョフウ』という言葉を使うようになり、ジョフウという言葉が広まりつつあることを実感しています」と語った。怪我の功名ではあるが、タイトル変更には手ごたえを感じているようだ。

原作のギャグをどう表現する? 脚本の変更意図

 原作漫画では勢いのあるギャグが目立つが、ドラマではギャグ要素はあるもののクスッと笑える表現に変わっている印象だ。ギャグも大きな変更点と言えるが、その背景を聞くと「『ヒューマンドラマとしても描きたい』『女性の心が動く瞬間を大事にしたい』ということは重視したのが大きいです」と回答。

「女性用風俗店」が舞台のドラマ、ベッドシーン撮影での“意外な苦労”とは? プロデューサーが語る
Ⓒ「ジョフウ ~女性に××××って必要ですか?~」製作委員会
「とはいえ、漫画の面白さは残したいため、脚本家としてタレントでもあるマンボウやしろさんにお願いさせていただきました。過剰にコメディ部分を押し出さず、それでも笑えるポイントをキチンと描くそのセンスやバランス感覚が絶妙で、マンボウさんの脚本に何度も『最高だな』と感じました」

 そして、「ヤチナツさんも“ドラマ化するのは難しい作品”と思われていたので、原作のコメディ部分の扱い方を変えることにも納得していただけたんだと思います」と原作者の了承を得ていると口にした。

「女性用風俗店」が舞台のドラマ、ベッドシーン撮影での“意外な苦労”とは? プロデューサーが語る
Ⓒ「ジョフウ ~女性に××××って必要ですか?~」製作委員会

制作にはインティマシーコーディネーターも参加

 女性用風俗店を舞台にしたストーリーであることはもちろん、インティマシーコーディネーターとして西山ももこ氏が携わっていることも注目ポイントだ。ここ最近、耳にする機会の増えたインティマシーコーディネーターではあるが、具体的には何をしているのか。

「女性用風俗店」が舞台のドラマ、ベッドシーン撮影での“意外な苦労”とは? プロデューサーが語る
Ⓒ「ジョフウ ~女性に××××って必要ですか?~」製作委員会
「脚本をもとに監督と打ち合わせをする際に『このシーンはどこまでの露出になりますか? 背中は見えますか?』『胸元をギリギリまで写すのであれば、厚手のシーツより薄いシーツのほうが隠しやすいかもしれないです』など、肌の露出があるシーンでの注意点を助言してくれました。

 また、他のインティマシーコーディネーターの方はわかりませんが、西山さんは『こういうふうにすれば綺麗に映ります』みたいな演技のアドバイスをしてくださることも珍しくありません。キスや性感エステのシーンを撮ることに不安な役者さんも多いので助かっています。とはいえ、監督にも撮りたい画があるため、そこは議論しながらベストを探っていく感じです」

ベッドシーンで“本番”がないからこその苦労

 続けて、“本番”(編集部注:挿入を伴う性交のこと)がないからこその苦悩を口にする。

「女性用風俗店」が舞台のドラマ、ベッドシーン撮影での“意外な苦労”とは? プロデューサーが語る
Ⓒ「ジョフウ ~女性に××××って必要ですか?~」製作委員会
「女性用風俗なので本番は当然ありません。本番がないからこそ、性感エステのシーンでは『何がOKなのか?』という線引きはとても難しい
判断基準が明確でない中、西山さんには“大丈夫なライン”を探るために手を貸していただきました」

 いろいろな人のアイデアやセンス、思いで作られている本作を多くの人に見てほしい。

「女性用風俗店」が舞台のドラマ、ベッドシーン撮影での“意外な苦労”とは? プロデューサーが語る
Ⓒ「ジョフウ 〜女性に××××って必要ですか?〜」製作委員会


「女性用風俗店」が舞台のドラマ、ベッドシーン撮影での“意外な苦労”とは? プロデューサーが語る
Ⓒ「ジョフウ 〜女性に××××って必要ですか?〜」製作委員会


「女性用風俗店」が舞台のドラマ、ベッドシーン撮影での“意外な苦労”とは? プロデューサーが語る
Ⓒ「ジョフウ 〜女性に××××って必要ですか?〜」製作委員会


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Ⓒ「ジョフウ 〜女性に××××って必要ですか?〜」製作委員会


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Ⓒ「ジョフウ 〜女性に××××って必要ですか?〜」製作委員会


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Ⓒ「ジョフウ 〜女性に××××って必要ですか?〜」製作委員会


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Ⓒ「ジョフウ 〜女性に××××って必要ですか?〜」製作委員会


<取材・文&人物撮影/望月悠木>

【望月悠木】
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki
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