そう話す平田愛実さん(仮名・35歳)は、夫の両親と同居中。
義母が脳出血で倒れて、義父母との同居がスタート

「本当は嫌でしたよ。絶対トラブルが起きるから。でも、初めて夫の涙を見て、『母さんにはまだ返せてない恩がたくさんあるから、せめてそばにいてやりたい』と言われて……。さすがに、断れませんでした」
幸い義母は一命を取り留めましたが、失語症に。リハビリを受けたものの、「いただきます」を「おやすみ」と間違えるなど、適切な言葉が上手く出てこなくなりました。
「家庭内にはいつも重い空気が漂っていて、私も気が滅入ってしまって……。そんな時、友人から『猫、飼えない?』という連絡が来たんです」
友人から譲り受けた1匹の黒猫が「家庭の灯」

だからこそ、義父母宅という一軒家に引っ越したタイミングで嬉しい連絡が来たことに、運命的なものを感じました。
「夫に相談すると、『同居したいっていう俺の願いを叶えてくれたから、愛実の願いも叶えよう』と言ってくれ、義父母に話してくれました」
すると、義父母は大喜び。実は2人、新婚の頃に猫と暮らしていた期間があったのです。
猫を迎えることは結果的に、義母にとってもいい方向に繋がるのではないか。そう思い、愛実さんは友人から猫を譲り受けました。
譲り受けた猫は、生後2歳ほどの黒猫(女の子)でした。愛実さんは「ミミ」と命名。ミミは成猫ではあるものの、まだ年齢的に若いからかアクティブで、カーテンを登るなど無邪気な行動を見せるようになりました。
そうした天真爛漫な姿を見て、家族は笑顔に。家庭内の空気も明るくなっていきました。
「義父母もミミをかわいがってくれたので、お留守番させちゃう……と心を痛めずに仕事へ行くことができました」
「耳クソ」を愛猫に舐めさせる義父の行動にドン引き…

驚いた愛実さんは義父に駆け寄り、ミミを抱き上げた後、「え!? なにしてるんです?」と詰問。すると、義父は「いつものスキンシップだよ」と、平然と答えました。
「もう絶句しちゃって……。留守の間、ミミはこんなことをされていたのか……と衝撃を受けましたし、こんなことを愛情表現だと思っている義父の感覚についていけませんでした」
その後、注意深く、ミミと義父のスキンシップを監視するようになった愛実さんは他にも義父が“汚いスキンシップ”を取っていることに気づきます。
「お風呂上りなど、汗をかいた時にはミミに汗のにおいを嗅がせて『舐めるか?』と勧めていました。そして、庭の手入れをした後には土のついた手でミミに触っていて…」
こんなスキンシップは見逃せない。そう思い、愛実さんは勇気を出して義父に、耳垢や汗を舐めさせることや土のついた手でミミを触るのを止めてほしいと伝えました。
汚いスキンシップを注意するも「気にしすぎ」と笑われた

「だから、私が目を離せない時に義父がミミとスキンシップを取りそうな時は夫にさりげなくそばにいってもらい、変なことをされていないか監視してもらっています」
ただ、夫婦共にリモートワークではないため、留守番をさせることになる仕事中は気が休まりません。
「夫には義父母宅を二世帯住宅にリフォームしたいと相談していますが、なかなかいい返事をもらえません。このままの状態が続くなら、私は別居婚になってもいいからミミを守りたい」
動物とのスキンシップの方法は人によって様々ですが、あまりにも常識から外れたものは果たして「愛情表現」と呼べるのでしょうか。もし、自分がしているスキンシップを誰かからされたら……。
<取材・文/古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291