そんな宇垣さんが映画『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』についての思いを綴ります。

“普通”であることになじめない男と女が互いに支えあい、生きていく姿を描いた作品を宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣美里さんの寄稿です。)
正反対ながらも無二の親友となった二人

何度となく生活圏が変わり、環境が変わり、10年以上の時を越えてもなお、変わらず友人であり続ける努力を双方に怠らない人がいる。その事実によって私は自身と世界を愛することができた。きっと、ジェヒとフンスもそう。
人の目を気にせず自由奔放に生きるジェヒとゲイであることを隠して生きる寡黙なフンス。大学で出会った二人は正反対ながらも、とあるきっかけから無二の親友となり、ルームシェアをしながら日々の出来事を共有していくようになる。
世界は、“普通”じゃない人にあまりにも厳しい

だからこそ、二人に二人がいてよかった、と毎秒のように思わずにはいられない。直前まで大喧嘩をしていたのにもかかわらず、尋常ではないジェヒの様子に本気で心配し、そしてジェヒもまたフンスの口元の怪我を目にして「誰にやられたの!」と怒り出す。
電話越しの第一声だけで状況を把握し、相手のためなら隠し続けた自分の秘密も、意にそわない称号すらも口にすることができる。その関係のかけがえのなさよ。
互いが存在する、そのことだけでずっと強くあれる

たとえ会う頻度が下がっても、お互いがお互いの一番ではなくなったとしても、彼らはきっと互いが存在する、そのことだけでずっと強くあれるだろう。
耳にポリ袋をかけていつでも吐いていいよう準備万端に授業を受けているジェヒの様子に、かつての酒汚い友人たちを思い出して吹き出してしまった。どうやら大学生の愚かさは日韓共通みたい。
●『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』
配給/日活、KDDI 全国ロードショー中 ⓒ2024 PLUS M ENTERTAINMENT AND SHOWBOX CORP. ALL RIGHTS RESERVED.
<文/宇垣美里>
【宇垣美里】
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。