高橋が演じるのは友情に厚く、福岡の方言が底抜けにチャーミングな辛島健太郎役。
男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、本作の高橋文哉を解説する。
リアル高橋文哉のキュートな魅力
川口春奈主演ドラマ『着飾る恋には理由があって』(TBS系、2021年)で、新入社員役を演じる高橋文哉を初めて画面上に見たとき、久しぶりに大型新人俳優の登場を感じたものである。第1話で山下美月演じる先輩社員を手伝って段ボールを持とうとする手元、画面上手からフレームインする入り方など、細部から全身までさわやかキュートな魅力であふれ返っていた。映画『からかい上手の高木さん』(2024年)取材現場で実際に目の前にしたリアル高橋からもその魅力が伝わってきたことを覚えている。
他の出演者への取材待機中だった筆者はケータリングが設置された休憩ペースにいた。すると、高橋文哉その人がドリンクを飲みにきたのである。その距離たしか1メートル強。真横で感じる劇的キュートなオーラ。辺りの空気が薄桃色がかって見えた、あの幻は単に錯覚だったのだろうか?
初登場場面で感じる錯覚的な魅力

第5週第24回。入学試験の場面。
カットが替わる。嵩の左斜め前の席に座る健太郎が嵩をじっと見つめている。健太郎によるこの強い眼差しを感じた嵩は思わず吸い寄せられるように視線を泳がせたのである。真顔ならまだしも、健太郎は張りついたような笑顔を浮かべている。何をそんなに見ているのか。ちょっと怖い気がする……。
神出鬼没な辛島健太郎役

もっと言うと、いつからそこにいて、いつから見つめているのか。
これまた錯覚なの? いやあながち間違いではないらしい。さらに合格発表の場面を見てみる(第5週第25回)。嵩が校門を入ってすぐ健太郎が「また会ったやん」と声をかけてくる。動きとしては前のめりになった高橋が画面上手からいきなりフレームインしてくる。この動きにも感じる。明らかに神出鬼没な彼はいったい、どこからきたのか?
さわやかで甘いロマンティックな高橋文哉

だから高橋が演じるこの健太郎役はひとまずスウィートホラー、あるいはロマンティックホラー的キャラクターくらいに捉えておきたい。どこかホラー的ではあるが、スウィートでロマンティックでキュートな存在であることはまず間違いないからだ。
第7週第31回では、夏休みで高知に帰省する嵩に健太郎がついてくる。
この場面ではのぶの妹・朝田メイコ(原菜乃華)が健太郎に恋心を抱く瞬間が描かれるのだが、カメラが上手方向へフォローした原と高橋が並んで歩くツーショットがいい。『からかい上手の高木さん』でも高橋が永野芽郁と海辺を歩くツーショットがある。どちらもやわらかな片思いを寄せられる役柄を高橋が演じる。さわやかで甘いロマンティックな高橋文哉をひたすら愛でていたい。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu