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お盆のシーズン、実家に帰省する方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。かくいう筆者も、毎年地元のお祭りに行くために帰省する一人。とはいえ、私は関東生まれで片道40分程度で実家に着いてしまうので、この時期だけでなく頻繁に戻ってはいるんですけどね。
そんな具合でつい先日も、ぬるっと地元に帰ってました。他県住みの友達が帰省したというので、駅前で飲み会をしたんです。久しぶりの再会とあって、つもる話で盛り上がりまくり。気が付いたら既に終電はありません。本当は日帰りで飲み会終わりに帰宅する予定でしたが、急きょ実家に立ち寄ることにしました。
実家は自殺者が後を絶たないマンション
実家のあるマンションまでは、駅前から徒歩20分ほど。友達と解散したのが1時30分を過ぎた頃だったので、マンションに着く頃は午前2時を周ろうとしていました。「めっちゃ嫌な時間に帰ってきちゃったなぁ……」
私は心底そう思ってました。実をいうと、私が生まれてから30年以上暮らしていたマンションは妙に自殺者の多いところなのです。私がざっと思い出すだけでも10件以上。
霊感のある友人が、たまたま家の前を通りかかった時に「千代子さんの住んでるマンション、黒い大きな人が覆いかぶさってるよね」なんて言われたこともあります。これだけ書けばお分かりいただけると思いますが、霊感なんてほぼゼロな私でも「ここ、絶対なんかある」と思わずにいられない、なかなか怖い実家なのです。
実家の前に見知らぬおばさんがいる

一歩一歩、自宅へと近づきながら、ふと私は違和感を覚えました。私の実家の目の前には階段があるのですが、その踊り場に人の気配があるのです。よく見ると小柄なおばさんがそこに佇んでいました。
「えっ、何あれ、怖い」と、背中にゾッと悪寒が走り、実家のインターフォンを連打。なかなかドアは開きませんでしたが、その間私は絶対に後ろを振り返りませんでした。
嫌な想像が頭を巡りました。しかし、寝ぼけまなこの母がようやく鍵をオープン。ようやく私は安心して部屋の中に入りました。
飛び降り自殺した女性の幽霊だった
「ねえ、階段のとこに変なおばさんがいたんだけど……」部屋に入って早速私は母にそのことを告げました。すると、母はさらりとこう告げました。
なんと、同じマンションに住んでいた知ってるおばさんがあそこで自殺をしたばかりだと言うのです。そういえば、さっきの謎のおばさん……言われてみればその人に似ていた気がしました。
「ちょうど先週、午前4時くらいらしいよ。その日の朝から警察とかうちまで聞き込みに来て大騒ぎ。
おばさんがその足であの踊り場にやってきたのだとすれば、ちょうど一週間前のあの時間に、あの場所で、柵を超えるか超えないか考えていたのでは……。ということはほぼ、幽霊確定でしょう。翌朝、実家から出た時には当たり前ですがおばさんの姿はありませんでした。
実家のマンションでの自殺騒ぎには慣れていたつもりですが、さすがに自宅の目の前でというのは堪えました。しかし、今後私は帰省するたびにおばさんを目にすることになるのでしょうか……。お盆になるのがちょっと怖い私です。
<文/もちづき千代子・イラスト/ただりえこ>
【もちづき千代子】
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:@kyan__tama