そんな宇垣さんが映画『サタンがおまえを待っている』についての思いを綴ります。

社会的な騒動の真相に切り込んだドキュメンタリーを宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣美里さんの寄稿です)
「人は客観的な証拠がない時 とっぴな話に食い付く」

FBI特別捜査官のケン・ラニングは言った。「人は客観的な証拠がない時 とっぴな話に食い付く」と。80年代の北米で起こった未曽有のサタニック・パニックの真相を追うドキュメンタリー作品の中で語られたこの言葉が、そのままに混沌とした今の時代に刺さる。
聞くだに恐ろしい悪魔崇拝者たちの所業に全米が震撼

ミシェルの語る聞くだに恐ろしい悪魔崇拝者たちの所業に全米が震撼し、やがてミシェルと同じように虐待を受けていたと証言する人々まで現れるように。テレビやFBIを巻き込み、果ては「悪魔崇拝者」であるとされた保育士などが逮捕されるなど、大量の冤罪事件まで引き起こすこととなる。
ある種の邪悪さすら感じて身の毛がよだつ

最初の証言はローレンスによる誘導だったのか、はたまたミシェルの恋心がつかせた嘘だったのか。多くの人を巻き込んだその犯行に共感などできるわけもなく、ある種の邪悪さすら感じて身の毛がよだつ。ただ、実際に行われていたセラピーの様子が記録されたテープの音声はあまりに弱々しくて、痛々しくて、あまりにもただの人だった。
「歴史から学ばなければまた同じことが繰り返される」

悪魔とは私であなたで、つまり人間のことなのだから。
●『サタンがおまえを待っている』
配給/ポニーキャニオン 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中 © 666 Films Inc.
<文/宇垣美里>
【宇垣美里】
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。