この夏、登場人物全員がクセ強すぎて“ホラー”なドラマから目が離せません。主演・木村文乃×共演・ラウール(Snow Man)が繰り広げる純愛に注目が集まっている『愛の、がっこう。
』(フジテレビ系、木曜よる10時~)です。
※最新話までのネタバレを含みます。

真面目な高校教師の過去が衝撃的すぎる

本作は、堅い家庭で育った真面目すぎる高校教師・小川愛実(木村文乃)が、文字の読み書きが苦手なホスト・カヲル(ラウール/Snow Man)と出会い、惹かれ合っていくラブストーリー。

違う世界を生きるふたりが恋に落ちる恋愛ドラマは、これまでも多く描かれてきましたが、本作はひと味違います。登場人物たちが抱える過去や感情があまりにも“狂気”じみているのです。

登場人物全員“ヤバイ”!?狂気の中に咲く純愛——『愛の、がっ...の画像はこちら >>
まず、主人公・愛実は真面目な高校教師ですが、その真面目さが暴走した過去を持っています。前職の出版社で結婚を約束した男性がいましたが、フラれたことをきっかけにストーカー化。待ち伏せしたり、やたらとプレゼントを贈ったり、留守電に執拗にメッセージを残したり——最後には警察に通報されてしまいます。そして自殺未遂。

そんな過去を持つ愛実の思い込みの強さや、人に対峙する不器用さを木村文乃が繊細に表現しており、引き込まれます。ただ、なかなかの設定です。

周囲の人間関係も不穏すぎて目が離せない

もちろん主人公だけではありません。中島歩が演じる愛実の婚約者・川原は、一流大学を卒業後、大手銀行に勤務する、一見爽やかな外見と柔らかな物腰のハイスペ男子です。しかし夫がいる女性と不倫。


かと思えば愛実に執着し始めてストーカー化していき、奇行を繰り返すように。中島は朝ドラでヒロインの良き夫を演じた直後ということもあり、そのギャップが話題に!SNSなどでは「川原なにがし」とキモがられる始末です。

愛実の友人・百々子(田中みな実)もなかなか。愛実に対しては歯に衣着せぬ物言いながらも、常に彼女のことを想っている風。しかし、どうも怪しい。愛実の元婚約者を寝取った過去があったり、女友達にしては強めの執着を感じさせたり。どことなく“狂気”を醸しています。

ホストの設定だけが“切なく”て胸が痛い

登場人物全員“ヤバイ”!?狂気の中に咲く純愛——『愛の、がっこう。』から目を離せないワケ
画像:ジョルジオ アルマーニ ジャパン 株式会社 プレスリリースより(PRTIMES)
カヲルの周囲もなかなか。母親の奈央(りょう)は、カヲルが小学校に上がる頃には養育を放棄したくせに、ホストとなって稼ぐようになってからは、お金の無心に来るまさに“毒親”です。

カヲルを夜の世界へと導いたホストクラブ「THE JOKER」の社長・松浦(沢村一樹)も一筋縄ではいかない風情で、前科があり裏社会との繋がりもあるという情報も——実はカヲルの父親という考察も見逃せませんが——。

そんな中で、カヲルには“狂気”を感じません。逆にどこまでも純粋に愛を求めているような“淋しさ”を感じるのです。小学校のときに生まれつき字を覚えにくい学習障害「ディスレクシア」を抱えているといわれるも、母親による育児放棄もあり、学校にはほとんど通わず、読み書きが苦手なまま大人になりました。


幼いころから、無理解によって周囲に“バカ”と言われ続けた苦しみはいかほどか。その“切なさ”をラウールが丁寧に演じており、胸を締め付けられる思いがします。

ふたりの恋が“狂気”の中で一層輝きを増す

登場人物全員“ヤバイ”!?狂気の中に咲く純愛——『愛の、がっこう。』から目を離せないワケ
画像:株式会社BS朝日 プレスリリースより(PRTIMES)
そんなカヲルと愛実は、周囲の“狂気”と相まみえながらも惹かれ合い、お互いを知り、気持ちを通わせていくのです。はじめは正直、真面目な教師とチャラいホストの恋にはのめり込めないと思っていました。

しかし、人と人とがぶつかりながらも恋に落ちていく姿にどうしようもなく惹かれてしまいます。クセの強いキャラクターたちの“狂気”が強ければ強いほど、ふたりの純粋な恋心がより美しく見えるのです。

そんな中で迎えた、8月14日に放送された第6話は特に秀逸。まさかの45分中42分で“ふたりのデート”だけが描かれたのです。夕暮れの美しいキスシーンでは、ふたりを応援したい気持ちがもう最高潮に!『東京ラブストーリー』を彷彿とさせる、あまりに切ない別れのシーンに涙したのはきっと筆者だけではないはず。

と思ったら最後3分で怒涛の“狂気”が押し寄せてくる急展開。さすが、社会現象を巻き起こした『昼顔』シリーズを描いた井上由美子氏のオリジナル脚本です。唸らされました。


6話の幸せなデートは本当に束の間。最終回に向けて怒涛のドロドロ展開が予想されます。それでも、ふたりが育んだ美しい“恋”を成就させてほしい。祈らずにはいられません。

<文/鈴木まこと>

【鈴木まこと】
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201
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