責任や人間関係のストレスに押しつぶされそうになって、気づけばイライラ、モヤモヤしてしまう……。そんなとき、「私って幸せじゃないのかな」と不安になる女性は少なくないはず。


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『運のトリセツ』を上梓したばかりの脳科学者の黒川伊保子さんは、「“無邪気な脳”を取り戻すことが、ストレスを遠ざけるカギ」と語ります。

“ストレス知らずの女性”になるには?優秀な女性ほどストレスから抜け出せないワケ
黒川伊保子「運のトリセツ」
 そこで今回は、脳科学の視点から、がんばらなくてもストレスと無縁で、いつでも自分らしく輝く女性になる脳の使い方を、黒川さんに教えてもらいました。

※本記事は、『運のトリセツ』より一部を抜粋・再構成しています。

「ストレス知らずの女」になるには

“ストレス知らずの女性”になるには?優秀な女性ほどストレスから抜け出せないワケ
※写真はイメージです(以下同)
 仕事も軌道に乗ってきて、ある程度の自信も出てきた。でも、その分、責任が重くのしかかったり、イヤな上司にイライラしたり、要領のいい同僚に嫉妬もしたりして、ストレスもたまってくる。

 そんなときこそ、「無邪気な脳」を取り戻そう、というサイン。

 無邪気とは、「好奇心」と「素直さ」。

 無邪気とは、損得勘定なしに、他人の気持ちを自分の気持ちのように思えることです。ということは、自分の気持ちも、ちゃんと把握しなければなりません。

「いい子ちゃん」を卒業する

“ストレス知らずの女性”になるには?優秀な女性ほどストレスから抜け出せないワケ
リラックスする女性 健康 開放感
 女性はときに、周囲の期待に応えようとする意識が強すぎて、自分らしさを見失うことがあります。赤ちゃんのときからコミュニケーション能力が高く、人の心情を勘案する能力が高いためです。

 特に完璧主義の優秀な母に育てられた優等生の娘は、母親の期待に応えようとするクセが抜けず、大人になっても、社会の期待通り「いい子ちゃん」になろうとしすぎていて、それが無邪気さの邪魔をしてしまいます。そして、自分の本当の気持ちさえもわからなくなり、それが、ストレスとして蓄積されてしまうことに。

 危険なのは、ストレスがたまると、脳の使い慣れている回路だけを漫然と使うようになるので、思い込みが激しくなったり、過去の呪縛にとらわれやすくなったりすること。


 すると、「自分が知っている、以前起きた事象」でしか物事を判断できないので、新しい視野で考えが浮かばなくなります。

「それ、違います」と言えるのが無邪気さ

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拒否反応を示す女性
 頭がよくて美人、そして器用な人ほど、このループから抜け出せないのですが、抜け出すためには、まずは自分の中にある「不快」「イヤ」という違和感を自覚しましょう。

「それ、違うと思います」とハッキリ言えることが無邪気さなのです。

 ちなみに、我が家の3歳の孫息子は、嫌なことははっきりとイヤと言い、したいことは躊躇なく伝えてくれます。「お風呂入ろうよ」「ヤダ!」「湯船で氷融かして遊ぼ」「OK!」みたいな感じです。初見で言うことを聞くことはほとんどありませんが、OKが出たときの笑顔と集中力があまりにも清々しくて「本当に素直だなぁ」と感心します。

 で、思ったんですけど、大人の言うことを聞く子どもを、昭和世代は「素直な子」って言うけど、あれ間違ってますよね。自分の気持ちに蓋をして、大人の言うことに従う子は素直じゃないでしょう。自分の気持ちと好奇心を素直に口にする子を「素直な子」と呼ぶべき。あなたも、自分にそうしてあげてくださいね。

ココ・シャネルの「自尊心」に学ぶ

 大事なことがあります。「許せないこと」は信念になり、貫けば自尊心になるということ。シャネルがそれを見せてくれました。

 かつて世界中でミニスカートがブームになったとき、ココ・シャネルは頑と、「大人の女性は膝を見せないのがエレガント」と、膝下丈のスカートを提唱し続けました。


 一九五九年、テレビのインタビューで彼女はこう答えています。

「膝? あんなものを見せるなんて、気がしれない。大人の膝は汚いわ。誰もが永遠に十五歳でいられるわけじゃない。けれど、本当のエレガンスは四十歳を過ぎてからわかるもの。私は、本当のエレガンスがわかる大人の女性のために闘い、守るの」

 時代遅れと言われようと、シャネルは生涯、膝下丈を守り抜き、「ノーカラージャケット & 膝下丈タイトスカート」のシャネルスーツは、その後、世界中でブームになりました。一九六三年、ダラスでケネディ大統領が暗殺されたとき、夫人のジャクリーヌさんが着ていたのも膝下丈のシャネルスーツでした。

自分が不快に思うことは。きちんと見ておく

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自立
 シャネルのゆるがぬ自尊心の底には、「これは不快、許せない」という明確なセンスがありました。ここにおいて、「膝は見せるのはエレガントでない」が絶対的な真理かどうかは関係ありません。

 今ならSNSで「きれいな膝だってある」みたいな反論で叩かれそうですが、そんな雑音、気にする必要がない。なぜなら、大事なのは、「正しいことを証明する」ことじゃない。
自分の世界観を確立することだから。シャネルのそのセンスと信念に共感する人が、シャネルスーツを買えばいいんです。そして実際、高いお金を払ってシャネルのエレガンスを買う人が世界中にいたわけです。

 自分の世界観を構築して、自尊心を保つには、「自分が不快に思うこと」がきちんと見えていなければなりません。そして、反論や冷やかしを気にしないこと。世界中を説得する必要なんてないんです。ここに、自分の世界があるのだから。

「いい子ちゃん症候群」を抜け出し、「自分にしかできない仕事」を確立するには、まずは「これは不快」を自覚すること。そこから始めてみてください。

そのストレスは本当に悩まなければならないものなのか?

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悩む女性
 最後に、「相手が自分の言うことを聞いてくれない」という多くの女性が感じるストレスについてアドバイスを。

 あるセミナーで、上司との関係に悩む女性がいました。

「私は経理部に書類を持って行く担当なのですが、十七日に提出しなければいけない書類を、部長は十九日にしか持ってこない。私のことを軽んじています。
こんな会社、辞めたいと思っています」

 自分の言うことを聞かない=自分のことを軽んじている。この不快感、気持ちは本当によくわかりますが、こういう考え方では、働くことはかなりストレスになってしまいます。この事例、十九日提出で、会社が回っているんですよね。だとしたら十九日締め切りでもよいのに、安全のために十七日という期限があるのでしょう。部長はそのことを知っているから悠長に構えているのでは? 

 そして、毎月お尻を叩かれているのに、あえて十七日締め切りのルールを見直さないのは、回収係に急かしてもらって、やっと本当の期限ギリギリに出せるからかもしれません。けっして、回収係を軽んじているわけじゃなくて。仕事では、こういうこと、けっこうあります。

人を思い通りに動かそうとしない、人に思い通りに動かされない

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オフィスの窓から外を眺める女性
 一人で勝手に悩んで、悪い想像をめぐらせて、「自分は、ないがしろにされている」と思い込むのは女性脳の悲しいクセ。

 本当は、部長から「経理のデッドラインは二十日なんだよ。だから、つい……。でも、いつも事前に知らせてくれてありがとう」と言うべきですが、忙しい上司に感謝の言葉や説明を期待してもムダ。

 彼女は彼女の役割をきちんと果たしているのだから、それでいいのです。
言うことを聞かない=ルールを守らない人たちにイライラするなら、規則を見直す提案をしましょう。

 皆が守れないルールなら変えればいい、変えられないルールなら、あらためて守ってもらうよう上から圧力をかけてもらえばいい。自分が軽んじられているから言うことを聞いてもらえない。そんなふうに、考えないことです。

 心で動く女性と違って、ルール順守、心情度外視の男性脳には、担当者をなめてるからルールを守らない、なんてことは基本、起こらないからです。実際そうじゃないのに、退職するほどのストレスをためることになるなんて、ばかばかしいだけです。

<文/黒川伊保子>

【黒川伊保子】
(株)感性リサーチ代表取締役社長。1959年生まれ、奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に従事、2003年現職。『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』がベストセラーに。近著に『息子のトリセツ』『母のトリセツ』
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