かつて、女性アイドルは男性が応援するものというイメージがあった。しかし、近年は足しげく現場に通ったり大量に課金するなど、異性と変わらない、あるいはそれ以上の熱量で同性である女性アイドルを推す女性が増えている


その背景や理由を、長年オタクとして女性・男性問わずアイドルを推してきたライターのこじらぶさんが分析する。

なぜ? FRUITS ZIPPER、HANA…女性グループを...の画像はこちら >>

なぜ他の女性芸能人ではなく「アイドル」なのか?

以前からハロー!プロジェクトなど女性ファンが多く存在するアイドルグループは存在した。なぜ彼女らは同じ女性有名人でもモデルやインフルエンサーではなく「アイドル」に惹かれるのだろうか?

「まず、何といっても女性アイドルの歌やダンスといったパフォーマンスという点にあります。

彼女らの美しさは、モデルやインフルエンサーのようなカメラ映りを重視したビジュアルにはとどまりません。激しいダンスや絶叫して歌う気迫ある顔にすら高貴さを感じ、元より美しい姿が一層輝いて映るのでしょう。そんな楽曲によって多種多様な表情を見られることが、“応援したい、力になりたい”という強い感情に繋がるのではないでしょうか」(こじらぶ/以下同)

個々だけではなく、グループであることも重要なのだという。

なぜ? FRUITS ZIPPER、HANA…女性グループを推す「女性オタク」が急増したワケ。同性プロデューサーの存在も鍵か
『アンドロイドは夢を見るか?/光のうた』アンジュルム(ポニーキャニオン)
「現在のアイドルはソロよりグループが主流です。集団にいることで、ムードメーカー、お姉さん肌、末っ子キャラなど、グループ内での立ち位置が自然と見えてくる。そうした内面的魅力とパフォーマンス時のギャップも萌えを感じさせます。

そこから女性メンバー同士の連帯や親密な結びつきである“シスターフッド”を垣間見ることが出来るのも要因のひとつでしょう」

逞しく生きるメッセージが女性の道しるべになる

女性が勇気づけられるのは連帯感だけでなく、楽曲からも感じることができる。

「彼女たちが放つ歌詞は、グループによってメッセージ性は異なれど、女性が気高くあることや、男性優位の社会においても逞しく生きていくことなどを説き、女性ファンの生きる道しるべとなります」

自己肯定感を“爆上げ”する女性目線の楽曲

前述の“シスターフッド”や“女性の指針となる歌詞”といったように、女性アイドルを推す大きな理由として「共感」があるという。

「女性アイドルに惹かれる要因の一つとして、もちろん容姿に対する憧れもあります。白石麻衣さんなど多数の“アイドル兼モデル”メンバーを輩出する乃木坂46や、TWICEを筆頭とした、圧倒的なスタイルを誇るK-POPの女性アイドルなどが代表格です。

一方、近年はSNSの隆盛により誰もが自己を発信出来るようになったことで、他人と比較することが増えました。その結果、自信を喪失した女性を励ましてくれるのも、女性アイドルの存在なんです」

なぜ? FRUITS ZIPPER、HANA…女性グループを推す「女性オタク」が急増したワケ。同性プロデューサーの存在も鍵か
『白石麻衣 乃木坂46卒業記念メモリアルマガジン』(講談社)
どういうことなのだろうか。


「顕著なのがKAWAII LAB.(以降、カワラボ)系の人気でしょう。誰でもマネしやすい振付けによりTikTokで大ブームとなっています。

CUTIE STREETの『かわいいだけじゃだめですか?』で歌われる歌詞は、ダメな自分でも誰かが“かわいさ”を見つけてくれるという内容。また、FRUITS ZIPPERの『NEW KAWAII』は、多数決の“かわいい”よりも少数意見や別の愛でも良いじゃないかという新しい価値観を提示します。

そんな自己肯定感を爆上げしてくれる楽曲が、SNS利用で自信を失っていた多くの女性に届いているのでしょう」

なぜ? FRUITS ZIPPER、HANA…女性グループを推す「女性オタク」が急増したワケ。同性プロデューサーの存在も鍵か
『かわいいだけじゃだめですか?』 CUTIE STREET(ソニーミュージックマーケティング)

「No」に抗うコンセプトが女性の支持を得たHANA

異性が歌う、女性を肯定する楽曲よりも感じるリアリティ。そこには女性プロデューサーの存在も見えてくる。

「アーティスト寄りのガールズグループとして、共感の度合いが著しく高いのがHANAです。プロデューサーであるちゃんみなさんが、外見などに対し様々な“No”を突きつけられてきた女性を救うべく始まったオーディション『No No Girls』。

身長、体重、年齢不問で自分の声と人生を武器に選ばれていくメンバーに、生きる上で何かしらの“No”を味わったことのある女性視聴者からの支持を得ました」

パフォーマーでもある女性プロデューサーの存在

「カワラボのプロデューサーである木村ミサさん、HANAのちゃんみなさんはどちらも自身が女性パフォーマーの経験を持ち、女性目線での“カワイイ”や力強さをメンバーに表現させています。女性ファンのツボをしっかり押さえているため、共感を呼びやすいのです。

同様に指原莉乃さんプロデュースの=LOVE(イコールラブ)も女性ファン比率が高いことで有名です」

なぜ? FRUITS ZIPPER、HANA…女性グループを推す「女性オタク」が急増したワケ。同性プロデューサーの存在も鍵か
『絶対アイドル辞めないで』=LOVE (ソニー・ミュージックレーベルズ)

同性のアイドルは男性よりも自己投影しやすい

もちろん、昨今のアイドル業界の構造も“推し”やすい状況になっている。

「握手会や特典会、ライブなどでは、高嶺の花であるメンバーに直接声を届けることができ、在宅でもMVやストリーミングを回すなど常にムーブメントに参加できる状態にあります。

課金や再生回数貢献によって、メンバーを選抜に押し上げたり、グループをより大きなステージに立たせられたりと、彼女たちの力になれていると感じられることが、女性アイドルを推す最大の醍醐味となります」

その点は男性アイドルと同じだが、“女性”だからこそ推せる理由もあるという。

なぜ? FRUITS ZIPPER、HANA…女性グループを推す「女性オタク」が急増したワケ。同性プロデューサーの存在も鍵か
※写真はイメージです
「女性アイドルを推す女性すべてに共通して、自己投影を推しに抱いているという傾向があります。
ライブでファンから歓声を浴びる、メンバー同士一体となって夢を叶えるなど、一般人の自分では成し得ない成功体験を、自分の代わりに推しが達成してくれる。

そこに感情移入し、その場で同じ経験をしたかのような錯覚に陥ることが出来ます。それは、推しが男性よりも同じ女性だからこそ感じやすいものです」

“ガチ恋”と呼べるほどハマる女性ファンも急増しており、「女性アイドル沼」は底が深そうだ。これまで女性アイドルに興味がなかった人も、一度覗いてみてはいかがだろうか。

<構成/女子SPA!編集部>

【こじらぶ】
フリーライター・コラムニスト。言語学修士。男性&女性アイドル、地下、ローカルなど様々な現場を経験。ドラマ、スポーツ、エンタメ全般から時事ネタまで。俳優、アイドルなどのインタビューも。X: @kojirabu0419
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