高校時代はスポーツ強化選手に選ばれ、大学はスポーツ特待生、大手メーカーに就職──。そんな華々しい経歴を歩んできた30歳女性・春香さん(仮名)には、“ある悩み”がありました。
交際経験ゼロ、新卒1年目で同期にフラれる
「俺じゃない方がいいと思うよ」春香さんは新卒1年目で、同期の男性からフラれました。彼のことが気になって、2人で食事したり出かけたりして徐々に距離を縮めていたつもりだったそうです。当時22歳でした。
そんな春香さんは今30歳。これまで男性とまともな交際経験がなく、数カ月前にやっと「ちゃんと付き合ったと呼べる彼氏」ができました。
春香さんは、高校ではスポーツ強化選手に選抜され、大学にはスポーツ特待生として入学、そして新卒で大手メーカーに就職しました。これらのスペックは男性ならばモテる要素になります。
そんな、男性ならば好条件であろう春香さんに初めての彼氏ができるまでを取材しました。
水泳で才能を発揮し、華々しい成果を残す
春香さんは日本海側の都市で生まれました。小学校時代は背が高く、スポーツも勉強もでき注目される存在だったそうです。中学受験をして地元の名門中高一貫校に進学します。ところが、周りが賢い子ばかりのため春香さんの成績は振るいません。
勉強で自信をなくした心のよりどころは小学校から始めた水泳でした。「私には水泳がある」と高校は水泳部が強い学校を選びます。インターハイに出場した春香さんは県の強化メンバーにも選ばれ、毎月県外に遠征していたそうです。
春香さんはスポーツ推薦で首都圏の大学に進学します。
当初は「大学にいったら彼氏ができるだろう」と考えていたそうです。水泳部は男女ともみな恋人がいたそうですが、春香さんだけ彼氏はできませんでした。
男性経験がないことを水泳部員にいじられる
水泳部員全員がスポーツ推薦で寮生活のため、部員の恋愛事情は筒抜けです。春香さんに交際経験がないことを知っているのに、下ネタをふってきたり、初体験はどうだったかという質問をされたりしたそうです。「そういうのはまだなんだよね」と返すと「あ~、ヤバいこと聞いちゃった」といじられました。

「社会人になってからは、『どれぐらい彼氏いないの?』と聞かれても『2年ぐらい』など、彼氏がいたことにして答えていました」(春香さん、以下カッコ内同)
春香さんは部員たちを就職で見返すと決めます。スポーツ特待生の中には学業が片手間になり単位を落とす人も珍しくはありません。春香さんはゼミにも入り、授業にもしっかり出席し、SPI対策も早めにおこない就職対策をして、無事に大手メーカーの内定を獲得しました。
大手企業に入社するも、2年目で休職に追い込まれる
社会人になり法人営業部門に配属されます。配属されたチームに新入社員は40人ほどで女性は10人以下。彼氏ができると思いきや社会人になっても恋愛はうまくいきませんでした。社内に男性が多いのですが、いいなと感じる男性はみな既婚者です。大手有名企業勤務というスペックは男性の場合、婚活で有利になる要素です。女性もマイナスではありませんが、男性ほど有利になるわけではありません。
入社2年目に40代の先輩とうまくいかず、3カ月ほど休職することになってしまいました。「あの子(春香さんのこと)はちゃんとやってほしいのにできないから」と目の前で悪口を言われ、質問ができなくなってしまいます。しかし、確認不足で失敗すれば責められます。

そのころは自分の外見コンプレックスもさらに強くなり、休職前にまぶたを二重にする整形手術も受けました。
アプリで会った男性は勧誘目的とヤリモクばかり
復職後にチームが変わり、そこでは楽しく仕事ができました。整形手術の影響も大きかったそうです。「メイク動画を見て『二重の幅にこの色を入れる』と言われても、一重だとその部分がないんです。二重になったらやれることが増えて、メイクも楽しくなりました」

十数人の男性に会ったものの結果は散々でした。そのうち、3~4人は勧誘目的でした。
「デートでこれからの人生の話題になって、『億を稼ぐ方法』のようなタイトルの本を勧められたんです。解散してからも読んだら感想を教えてとLINEが来ました。本のタイトルを検索したらサジェストで『勧誘』や『宗教』のワードが並んでいました。
他にもデート中に頭をボリボリ掻いて、掻いた指をずっと見ている変な男性もいました。
あとヤリモクにも会いました。会う前に何回か通話して『かわいいね』とか言われて嬉しくなっちゃったんです。
初の彼氏になるはずが、交際3週間で音信不通
まともな男性に会えないため女友達に相談すると、「受け身で誘われるのを待っている」「積極的に誘ってくる男性にばかり会っているから、勧誘目的やヤリモクばかりに当たっている」というアドバイスをもらいます。
相手は身長180cm、大阪大学を卒業して有名メーカー勤務、海外出張もこなす年下の25歳男性でした。
「私が夢中になって、結婚したいと思いました。デートの度に『今度はいつ会える?』って聞いていたら、デート直前で仕事が忙しいからってキャンセルされて。
それから、仕事が忙しくなるから別れようとLINEが来ました。付き合っていたと言えるのかも分からない関係で、3週間ぐらいで連絡が取れなくなってしまったんです」
当時は彼氏をつなぎとめるために必死で、恋愛が生活の中心になってしまっていたという春香さん。この男性はスペックから考えると婚活市場なら人気偏差値70超の男性です。すぐに次の彼女ができるでしょう。
「本」でつながるマッチングサービスに登録
失恋後、春香さんは仕事に打ち込みます。2024年に能登半島地震が起こり、故郷にも津波警報がでました。一人で生きていることが不安になり、婚活の再開を考えます。とはいえ、マッチングアプリに良い思い出もなく、結婚相談所は高額で断念。
そんな折、「恋する書店・チャプターズ」という、同じ本を読んだ人同士がマッチするサービスを知ります。選書サービスにマッチング機能が合わさった、ユニークなマッチングサービスのようでした。
興味はありましたが、読書は苦手な春香さん。本を最後まで読み切る自信がなく、すぐに登録することはためらわれました。

人生で初めての「ちゃんとした彼氏」ができた
「真面目でちゃんとした人ばかりで、失礼な人や嫌な人がいないんです。トータルで20人近くと話しているのですが、初対面は読んだ本の話をするからマッチングアプリのデートみたいに消耗しなくて、自然と続けられました」そして、年上の男性とマッチングします。彼は「どうしてこの本を選んだの?」と質問してくれ、春香さんの内面にも興味を持ってくれました。3回目のデートで付き合うことになります。
30歳の誕生日も彼氏と過ごし、間もなく交際半年を迎えます。

<取材・文/菊乃>
【菊乃】
恋愛・婚活コンサルタント、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt