(ワシントン中央社)米国務省は11日、199カ国・地域を対象とした2019年版の人権報告書を発表した。台湾に関しては、中国によるメディア介入を危惧しており、北京当局が中国で活動する台湾企業に圧力をかけ、意にそぐわない報道をするメディアから広告を取り下げていることなどが指摘された。


報告書は、台湾の司法や市民の自由、政治参加、政府の透明性などの現況を分析したもの。言論と報道の自由については、独立したメディアと効果のある司法、正しく機能する民主政治が三位一体となって言論の自由を促進しており、メディアは制限を受けず異なる意見を伝えることができているとされた。その一方で、北京当局が、中国に拠点を置く台湾企業を経営母体とする台湾メディアへの介入を試みていることも報告された。

事例として挙げられたのは、大手紙やテレビ局などを有する台湾の旺旺中時メディアグループ(旺中集団)が昨年5月、中国の地方紙「北京日報」を発行する北京日報報業集団と合同で北京で開催した「両岸ジャーナリスト北京サミット」。同サミットでは、中国の国政助言機関、全国政治協商会議の汪洋主席が台湾メディアに対し、「1つの中国」を前提とした92年コンセンサスや一国二制度、両岸(台湾と中国)統一など中国共産党の政策に有利な主張を報道するよう求め、進展がなければ戦争が起こる可能性があると述べて圧力をかけた。

昨年7月には旺中集団が、同グループ傘下のメディアと中国の対台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室が報道内容について調整を行っているとする疑惑を報じた英紙フィナンシャル・タイムズの記者と、同記事を翻訳した台湾の国家通信社、中央通訊社を提訴した例も提示された。


(徐薇テイ/編集:塚越西穂)