(台北、新北、桃園中央社)昨年大みそかから3日間にわたって北部・桃園市で開かれた人気バンド、メイデイ(五月天)の大型コンサートで、参加が禁じられていた自主健康管理対象者計7人の来場が発覚し、退場を求められた。中央感染症指揮センターが違反者のあぶり出しに使用したのは監視システム、通称「天網」。
電子フェンスに似た仕組みで、追跡対象者が大型イベント付近にいるかを把握できる。大みそかに初めて導入された。違反者の追跡には有効的だが、人権侵害への懸念も持ち上がっている。

台湾は新型コロナウイルスの水際対策として、帰国者に対し、入国後14日間の在宅検疫(外出禁止)を義務付け、検疫終了後にはさらに7日間の自主健康管理を求めている。自主健康管理者は通常は公共の場への出入り自粛などが求められるが、指揮センターは先月下旬、年越しイベントへの参加禁止を発表していた。

桃園市によると、メイデイのコンサートでは大みそかの公演で5人、元日公演で2人の自主健康管理違反者を発見した。
違反者には1万台湾元(約3万6600円)以上、15万元(約55万円)以下の過料が科される。メイデイのコンサートは1公演当たり約2万2000人を動員した。

指揮センターの荘人祥報道官によれば、天網は携帯電話から発信された信号と基地局の位置を利用して対象者のみを追跡する。携帯電話やGPS(全地球測位システム)を追跡しているのではないという。センターは2日、天網を「電子フェンス2.0」と命名した。

年越しイベントでは、対象者の携帯電話と各県市のイベント会場の位置がひも付けされ、対象者の携帯電話の信号が会場周辺で検出されると、自動的に警告を発出するとともに主催者に通知された。
メイデイのコンサートは氏名登録制を採用していたため、市警はイベント開始から30分以内に違反者を見つけ出すことができたという。

▽人権侵害の懸念 蘇行政院長「プライバシー侵害していない」

天網が人権侵害につながる恐れについて、蘇貞昌行政院長(首相)は4日、感染拡大防止のニーズに基づき、定められた手順で運用していると説明。これまで一貫して、いかなる人のプライバシーも侵害していないと強調した。新北市の台北港で豚肉輸入作業を視察した際に述べた。

同行した陳時中衛生福利部長(保健相)は、感染拡大防止を目的に集めた個人情報は収集後28日間の保管期間を過ぎれば破棄すると説明した。

荘報道官は2日、電子フェンスの導入は感染症防止法に基づいたものだと語った。
同法では、中央主務機関は特定の対象に防疫措置を実施できると定められている。

(張茗喧、王心妤、葉臻、王鴻国、魯鋼駿/編集:名切千絵)