ここ数年で、すっかりMLB(メジャーリーグ ベースボール)ファンになってしまったという人は多いだろう。

もちろん大谷翔平選手のおかげもあるが、今や10人を超える日本人選手が、MLBを舞台に活躍している。

そんな中、2025年6月11日、次のような画像がXに投稿され、注目を集めた。

大谷翔平、菊池雄星、佐々木朗希―― 日本人MLB12選手の〝...の画像はこちら >>

この画像を投稿したのは、「MLB japan」。MLBの日本公式アカウントだ。

「6月16日、この時代を代表する二刀流 #大谷翔平 のふるさとへ、オリジナルのマンホールと彼の物語を探しに行こう。 #ベースボールは唯一無二」

というコメントが添えられていた。

MLBは、リーグで活躍する日本人選手12 人を讃えるオリジナルデザインのマンホールカバーを、各選手の野球のルーツにまつわる場所に設置することにしたのだ。

6月16日から、大谷翔平選手の故郷である岩手県奥州市を皮切りに、全国12か所に設置されていった。

X上では、こんな声が寄せられていた。

「かっこいい。 MLB粋なことしますね」
「絵が可愛くていいね!」
「県内で3枚見られるという事ですか?!」
「これは...... 行くか、岩手!」
「行く!」

それにしても、なんと手の込んだ仕掛けだろう。いったいどんな狙いがあったのか? Jタウンネット記者は、この画を実施する「MLB japan」と、マンホールカバーを制作した広島市の企業・友鉄工業に詳しい話を聞いた。

それぞれの「物語」、それぞれのデザイン

「現代野球における日本人選手の素晴らしい活躍を称えることを目的に、世界の舞台で日本人選手たちが活躍し続ける中で、彼らの偉業だけでなく、そこに至るまでの個人のストーリーにも光を当てたいと思ったのがきっかけです」(「MLB japan」)

今回のプロジェクトのきっかけについて、「MLB japan」はそう答える。インスピレーションの源になったのは、日本全国に広がる「ご当地マンホール」文化だったという。

「日常のインフラを、地域の誇りや芸術表現の場に変えるこの伝統と、野球のスピリットを掛け合わせることで、全国規模のインスタレーションが生まれました」
「設置されたマンホールカバーは、現在メジャーリーグで活躍する日本人選手12人を称えるためのものです。各選手の地元とも密接に関係する日本独自の文化である『マンホール』を通じて発信することで、野球を通じて日本各地を盛り上げることにつながると思いました」(「MLB japan」)

マンホールのデザインは、選手ごとに〝画風〟が異なる。これにも、理由がある。

「元々一人のアーティストとのコラボレーションを考えていましたが、各MLB選手にそれぞれのプレースタイルがあるように、選手達のマンホールにもそれぞれに合ったアーティストの要素を加えたシリーズにしたいと思い、各選手に合うスタイルのアーティスト達とのコラボレーションを試みました」(「MLB japan」)

そうして出来上がったそれぞれのデザインは、選手の出身地、通っていた学校、初めてグローブを手にした球場など、「物語」や個性にまつわる、本人にとって特別な場所に設置されているという。

熱心なファンなら、なるほどと思い当たるデザイン、設置場所となっているそうだ。

マンホールのモチーフとなったのは、大谷翔平選手(岩手県奥州市)、菊池雄星選手(岩手県盛岡市)、佐々木朗希選手(岩手県陸前高田市)、ダルビッシュ有選手(大阪府羽曳野市)、松井裕樹選手(神奈川県川崎市)、今永昇太選手(福岡県北九州市)、ラーズ・ヌートバー選手(埼玉県東松山市)、鈴木誠也選手(東京都荒川区)、山本由伸選手(岡山県備前市)、吉田正尚選手(福井県福井市)、千賀滉大選手(愛知県蒲郡市)、菅野智之選手(神奈川県相模原市)の12 人(設置順)。

大谷翔平、菊池雄星、佐々木朗希―― 日本人MLB12選手の〝ゆかりの地〟に激アツ「オリジナルマンホール」登場
12人のゆかりの地に(画像提供:MLB)

各マンホールカバーには「AR」コンテンツが搭載されており、マンホールカバーをスマートフォンでスキャンすることで「AR」ショートムービーを、現地で楽しむことができる。

情熱が込められた「鉄の塊」の熱さ

次に、Jタウンネット記者は、マンホールカバーを制作した友鉄工業(広島市)に話を聞いた。電話で答えてくれたのは、広報担当者だった。

友鉄工業は、1987年のデザイン公募以来、中国四国地方を中心にマンホールカバーを製造してきた。カラーデザインマンホールを得意としている。

「砂の鋳型に約1500度の鉄を流し込み、表面に凸凹の模様を浮かび上がらせる形で、マンホールカバーを製造しています」。
「今回のMLB様のプロジェクトは、2024年12月から製作をはじめ、約半年かけてすべてのマンホールカバーが完成しました」

現場は、温度が1500度近くある危険な作業でもあるが、自ら溶けた鉄を流し込んで、形になっていく工程は、魅力的でもあり、達成感のある仕事と感じているという。

また最終工程でもあるカラー入れは、「新しいモノを生み出すキャンバス」のような存在なんだとか。

大谷翔平、菊池雄星、佐々木朗希―― 日本人MLB12選手の〝ゆかりの地〟に激アツ「オリジナルマンホール」登場
画像提供:MLB

「デザインは各マンホールそれぞれ別のアーティストとコラボレーションをしており、製造時は色味の調整にも苦労しました」と、友鉄工業広報担当者は話す。

選手たちのプレーと、マンホールづくり。どちらもの熱さが感じられる動画と共に、2025年6月20日、Xにはこんなメッセージも投稿された。

「アメリカから遠く離れたこのマンホール工場で、日本人MLB選手達の唯一無二の物語を伝える唯一無二のマンホールが生まれた。情熱が込められた鉄の塊を見に行こう」

これから暑い夏が来る。どうせ暑いなら、思いっきり熱さを感じに行ってみては?

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