
私たちが暮らす「天の川銀河」はいずれ「アンドロメダ銀河(M31)」と衝突すると考えられている。これは長らく天文学者の常識だったが、本当にそうなのだろうか?
アンドロメダ銀河が天の川銀河に対して負の視線速度を持つ、つまり私たちに接近していることが判明したのは100年前のことだ。
ヘルシンキ大学(フィンランド)の研究チームによれば、確かなことはわからないようだ。
局所銀河群内にあるほかの銀河の影響や不確実性などを考慮してみると、今後100億年のうちに天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突する確率はわずか50%でしかないのだという。
複数の天体同士の振る舞い「多体問題」
天の川銀河とアンドロメダ銀河の運命について考えるには、この2つの銀河のことだけ見ていてもダメだ。その周囲にあるほかの銀河の影響も踏まえて、計算を行わねばならない。
こうした互いに重力で作用し合う3つ以上の天体同士の振る舞いは、非常に不規則かつ複雑なものになるが、これを「多体問題」という。
そして今回の研究では、4つのアクターが登場する。そのうち2つはもちろん天の川銀河とアンドロメダ銀河だ。
じつはこの2つは、「局所銀河群」という100ほどの小銀河が含まれたグループに所属している。そのうちとりわけ重要になるのが、局所銀河群では主要な銀河の1つ「さんかく座銀河(M33)」だ。
太陽から270万光年離れたこの銀河は、400億個の星々で構成されている。それは天の川銀河にある星の40%、アンドロメダ銀河ならほんの4%程度でしかないが、それでもその重力は2つの銀河の動きに影響を与える。
もう1つ重要なのが、天の川銀河からわずか16万3000光年の距離にある「大マゼラン雲」だ。
衝突する確率は50%
だが天の川銀河とアンドロメダ銀河のコースを計算するうえでもう1つ重要だったのは、不確実性だ。
4つの銀河は天文学的には近くにあるとはいえ、銀河の現在の位置・動き・質量など、はっきり特定できない要素がいくつもある。
これにくわえて局所銀河群に含まれるほかの銀河の影響も、計算をいっそう複雑なものにする。
こうした不確実性のために、わからない部分はひとまず推定値を用いて計算するしかない。そして導かれた結論が、100億年以内に天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突する確率はおよそ50%というものだった。
両銀河が衝突するのかどうか、その答えは遠い未来に明らかになることだろう(もしも本当に衝突したら地球はどうなるか?)。
そのときすでに太陽は燃え尽きているはずだ。人類も一緒に燃え尽きているのか、それともほかの星々に進出して生き延びているかは、やはり不確実な話だ。
この研究の未査読版は現在『arXiv』(2024年7月31日付)で閲覧できる。