
その観光客は、洞窟の中に落としていったスナック菓子の袋でこれほどの大惨事になるとは、想像だにしなかっただろう。
アメリカ、ニューメキシコ州にある「カールズバッド洞窟群国立公園」は、世界遺産にも登録されている世界有数の大きさを誇る洞窟が複数ある。
この洞窟内で、観光客が「チートス」の袋を落としたのだ。
うっかりなのか、わざと捨てたのかはわからないが、その人物は些細なことだと思ったかもしれない。
だが洞窟の生態系にとっては一大事だ。お菓子の栄養は、外部から持ち込まれたカビや微生物にとっては格好の苗床となり、危うく洞窟内の生態系を破壊するところだったのだ。
世界遺産に登録された全米最大級の洞窟群
ニューメキシコ州にある「カールズバッド洞窟国立公園」は、ペルム紀の化石礁のあるカールズバッド洞窟を含む、83の洞窟で構成された国立公園だ。
全米でもっとも深い石灰岩洞窟、レチュギア・ケイブもあり、世界遺産にも登録される人気観光スポットである。
カールズバッド洞窟は、ガイドなしで自分で見て回ることも、パーク・レンジャーが案内する様々なツアーを利用することもできる。
洞窟内に落とした「チートス」の袋で生態系が危機に瀕する
それゆえに大勢の人間が訪れているのだが、時に人間にとっては些細なことが、洞窟内の生態系にとっては些細では済まないこともある。
今回のチートスのお菓子の袋がまさにそうだ。
公園のレンジャーによるFacebookへの投稿によれば、誰かが洞窟を探検中にチートスの袋を落としたようだ。
それが意図的なポイ捨てだったのかどうかは不明だが、いずれにせよ、それが大混乱を引き起こした。
「その持ち主にとってその影響は些細なことかもしれませんが、洞窟の生態系にとっては大きなものでした」
栄養たっぷりのチートスの残りカスは洞窟内の湿気を吸って、カビや雑菌が繁殖するのに完璧な苗床となった。
そうした微生物のほとんどは外から持ち込まれたもので、洞窟内の生態系を破壊してしまう恐れがあるものだ。
しかも悪いことに、洞窟内に生息する虫たちが群がり、そうした雑菌を広めようとしたのだ。
加工されたトウモロコシは、湿気の多い洞窟内でふやけて、微生物や菌類が繁殖するには理想的な環境となりました
洞窟のコオロギ、ダニ、クモ、ハエはすぐさま一時的な食物網を作り、その栄養をまわりに広めます
カビが近くの表面に広がり、果実のように成長し、死に、悪臭を放ちます
幸いなことに発見が早かったため大事には至らず
発見が遅れれば、事態は完全にお手上げになっていたかもしれない。
だが幸いにも、レンジャーが袋を発見し、被害が広まらないうちに対処することができた。とは言っても、それは一苦労だった。
外から洞窟に持ち込まれたカスやカビを掃除するのに、20分かかりました
この話は、洞窟の生態系の繊細さを伝えるとともに、私たちが普段どのような心構えでいるべきかを教えてくれる大切な教訓となる。
ゴミを地面に捨てる前にもう一度よく考えてみよう。目に見えない小さな生き物たちがそこにいて、生態系が形成されているということを。
公園のレンジャーは、世界を良くして立ち去ろうと訴えている。