銀色のキメラの異名を持つ、ゴーストシャーク(アズマギンザメ)の新種を発見
従来のアズマギンザメ image credit:<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/Narrownose_chimaera#/media/File:Harriotta_raleighana._Golfo_de_M%C3%A9xico_2012.jpg" target="_blank">public domain/wikimedia</a>

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 オーストラリアとニュージーランドの深海で、この海域にのみ生息すると思われる新種のゴーストシャークの一種が発見された。

 ゴーストシャークとは深海に生息するギンザメ目の魚の俗称だ。

シャーク(サメ)と名が付いてはいるものの、分類学上は近縁ではあるが別種である。

 今回発見されたのはギンザメ目テングギンザメ科のアズマギンザメの新種である。

ニュージーランド沖で新種のゴーストシャークを発見

 今回の発見は、ニュージーランド国立大気水圏研究所(NIWA)の水産学者ブリット・フィヌッチ博士によって、2024年9月24日付で発表された。

 これまでアズマギンザメは世界中に分布する単一の種だと思われていた。だがこの研究により、近縁種とは遺伝的にも形態的にも異なることが明らかになった。

 研究によるとオーストラリアやニュージーランドの近海は、「世界的なゴーストシャークの多様性のホットスポット」とでも呼べる場所らしい。 

 今回公表された標本は、ニュージーランド沖のチャタム海嶺で採取されたものだという。

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 フィヌッチ博士は、自分の祖母にちなみ、今回発見された魚に「Harriotta avia」という学名をつけた。

「アヴィア」はラテン語で「祖母」を意味します。私の祖母は、科学者としての私のキャリアを誇りを持って支えてくれました。それで彼女に敬意を表したいと思ったのです。

ギンザメはかなり古い種なので、魚の中のおばあちゃんやおじいちゃんだと言えるでしょう。なのでこの名前はぴったりだと思います

これまでの定説を覆す発見

 Harriotta aviaは、これまでは世界中に分布しているアズマギンザメ(Harriotta raleighana)の変種であると考えられていた。

 だが遺伝学や形態学を駆使した研究により、今回、独立した種として特定することができたのだ。

 今回の新種はオーストラリアとニュージーランドの近海にのみ生息していると思われる。

 その点も含め、フィヌッチ博士ら研究チームは、Harriotta属についての我々の知識を、再評価する時期が来ていることを示唆している。

Harriotta raleighanaは世界中に分布していると推定されますが、おそらく複数の種から構成されている可能性が高く、Harriotta属はすべての海洋盆地を代表する標本で改訂する必要があることを示しています

 下はインドネシアで撮影されたゴーストシャークの一種。

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 ゴーストシャークはエイやサメと同じ軟骨魚綱に属する魚で、皮膚が滑らかで鱗がなく、クチバシのような歯で甲殻類や軟体動物を食べるのが特徴だ。

Harriotta aviaは細長くてくぼんだ鼻と細長い胴体、大きな目、非常に長くて幅広い胸びれが特徴のユニークな魚です。

そして美しいチョコレートブラウンの色をしています

実物を見つけるのが非常に困難な魚

 ゴーストフィッシュは別名ラットフィッシュ(ネズミ魚)、スプークフィッシュ(不気味魚)、銀色のキメラなど、あまり可愛いとは言えない通称で呼ばれていることも(そもそもゴーストも幽霊だし)。

 なお、あのデメニギスも英名ではスプークフィッシュと呼ばれているようなので、混同されることもあったのだろうか。詳しい人がいたら教えてほしい。

 今回の新種は一応、一般名をAustralasian Narrow-nosed Spookfish(オーストラリアン・ナローノーズ・スポークフィッシュ)と命名されたそうだ。

このようなゴーストシャークは、主に水深2,600mまでの海底に生息しています。

それゆえに調査や監視が難しく、その生態や脅威の状況について多くを知ることはできません。

だからこそ、今回のような発見はさらにエキサイティングで興味深いものなのです

 実はフィヌッチ博士は、2022年にカラパイアで紹介した、ゴーストシャークの幼体を発見したチームの一員でもあった。

 当時から研究者泣かせと言われていたゴーストシャークだが、サンプル数が圧倒的に少ない状況は変わっていないらしい。

 ちなみにギンザメの仲間は日本近海にも分布していて、ギンブカと呼ばれることもある。

 さすが魚なら何でも食べる日本人は食用にもしているそうなので、どこかで見かけたら味わってみるのもいいかもしれない。

※今回の研究は「Environmental Biology of Fishes」に掲載されている。

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