今年もか!インドの聖なるヤムナー川が有毒物質の泡に覆われ、レポーターが巻き込まれる
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 インドの首都ニューデリーの近くを流れるヤムナー川は、ガンジス川最大の支流であり、「聖なる河」として崇敬されている。だがしかし……

 この川は現在、「世界で最も汚い川の1つ」にリストアップされてしまった。

毎年秋になると汚染はピークを迎え、ひどい時には川の表面が白い毒の泡で覆われる。

 最近投稿された動画には、白い泡に飲み込まれたテレビレポーターとクルーの姿がとらえられていた。

一面真っ白な泡で覆われた「聖河」

 今年もやってきたこの季節。ヤムナー川の表面が、正体不明の白い泡で覆われ始めた。

 この光景は今やデリーの悪い意味での風物詩とでもいうべきものになっていて、インターネットには多くの画像や映像が投稿されている。

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 雨季が終わり、気温が上がってくると、川の水に大量に含まれている汚染物質由来の界面活性剤などが泡を形成し始める。

 汚染物質のほとんどは、未処理のまま川に流される産業排水だ。こういった廃水が川の水や暑さで化学反応を起こし、泡を作り出しているのだという。

 泡には高濃度のアンモニアやリン酸塩が含まれており、VOCガス(揮発性有機ガス)を大気中に放出する。人体に有害なだけでなく、川の生態系をも破壊しかねない有毒物質なのだ。

泡まみれになったTVクルーの姿がバイラルに

 2024年10月18日にX(旧Twitter)に投稿されたのは、その取材に訪れたテレビのレポーターとクルーの姿だ。

 彼らはボートに乗ってるようなのだが、顔あたりまで泡に飲み込まれてしまったようで、取材どころではなかったのだろう。

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 この投稿には主にインド人から、さまざまなコメントが寄せられている。

  • こいつらは毒の泡にまみれて何をやってるんだ? 川岸からだって取材はできるだろう!
    • 愛国心たっぷりの清廉潔白なジャーナリストたちだからね
    • 新人だから、他の人よりもできることを証明したかったんだろう
    • 今はこうやって身体を張るのがトレンドになっているんだよ
  • 政府はいったい何をしているんだろう。
    川はアンモニアの泡でいっぱいなのに
    • 人間って言うのは、自分の利益のためならすべてを破壊するんだ
  • 命を危険にさらしてまですることだろうか
  • 北インドで最も重要な川の一つなのに、この川の状況が悪化していくのを見るのはつらい。迅速で効果的な対策を早急に講じる必要がある
  • 政治家は昔からヤムナー川をキレイにするって言い続けてきているよね。その通りになったんじゃないか?石鹸入りの水が手に入ったんだから
  • いったいどのくらいのお金を無駄にしたんだろう

 この映像が撮影された日以降も泡は増え続け、今ではほぼ全面が覆われてしまっているようだ。

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川を舞台にした祭りが近づく

 川とともに日常生活を送っている人たちは、こんな状況でも船を出さなければならない。だが、健康被害が心配されるのは、川辺で暮らしている人たちだけではない。

 秋はインドでは祝祭の季節。盆と正月が一度に来る勢いで、大きな祝祭が続く時期である。

 デリーでは11月5日にチャトゥ・プージャーというお祭りが行われる。これは太陽神スーリヤに感謝と祈りを捧げる祭りで、36時間の断食のあと、ヤムナー川で沐浴をするまでがワンセットとなっている。

 当日は数百人規模の善男善女がヤムナー川を訪れて、供物をささげ、沐浴をし、川の水を汲んで家に持ち帰る。

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政府の無策を非難する声も

 信仰の力というべきか、毎年この泡の中でも沐浴を決行する人々が出るらしい。デリー当局は状況を注意深く監視しているとし、以下のような声明を出している。

当局は既に問題に対処するため、消泡剤の散布を開始しています。

政府は状況を管理し解決するために、積極的に措置を講じています

 だがジャーナリストや専門家の多くは、当局の対応には懐疑的だ。ジャーナリストのアジット・シン・ラティ氏は自身のInstagramへの投稿の中で、次のように語っている。

母なるヤムナーは、ひどい苦しみを味わっています。それも首都デリーで。 その痛みは、見た人すべてがうめき叫ぶほどです。

ヤムナー川の浄化に充てられるはずだった何千億ルピーもの資金はどこへ消えたのですか? ヤムナー川浄化のための決議はどこへ行ったのですか?

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 実はこれまでにも、ヤムナー川をキレイにしようという動きはあった。政府としても多くの資金をつぎ込んで来た…はずなのだが、状況は改善するどころか、悪化の一途をたどっている。

 市民たちが巨額の資金の行方や、政府の本気度に疑問を呈するのも無理からぬことだろう。

 当局は祭りの当日に向けて、安全に沐浴ができる場所を用意したり、川に入らないよう呼びかけたりしているようだが、どこまで効果があるだろうか。

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 ヤムナー川はヒマラヤのヤムノートリーを水源とする全長約1,370kmの大河で、首都デリーやタージマハルのあるアーグラーを通り、アラーハーバードでガンジス川と合流する。

 ヒマラヤで生まれたときには美しい清流だったはずのヤムナー川も、首都デリーに至る頃には汚水としか言いようのない状態になっているのは、何とも悲しい話である。

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 インド人のネット民からは、このようなメッセージも投稿されていた。

チャトゥ・プージャーは近いが、ヤムナーの汚染状態は依然として課題です。 信仰と清らかな川は、いっしょに流れるべきではないでしょうか

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