
地球上に残された、人類の冒険心をくすぐる最後の場所といえば、高山や砂漠、氷河や海の中などさまざまなものがあると思うが、中でも「洞窟」は多くの人を魅了してやまない。
ベトナム中部にある「ソンドン洞」は、現在世界最大とされている洞窟である。
そして、天井までの高さは50階建てのビルに相当する200m以上。さらにその容積はなんと約3,850万立方mにもなるという、巨大な地下空間なのだ。
地元住民が発見した世界最大の洞窟
ベトナム中部のクアンビン省にある「フォンニャ・ケバン国立公園」。世界最大の洞窟「ソンドン洞」は、この公園内にある。
1990年(一説には1991年)、地元の農民ホー・カンさんがジャングルを歩いていた時に、偶然この洞窟の入り口を見つけた。
ホーさんはその日は中を探検せず、数日後に再度訪れようとしたのだが、正確な場所がわからなくなってしまい断念。そのまま洞窟のことは忘れてしまった。
だがその後、イギリスの調査隊が付近の鍾乳洞の調査のために現地を訪れた際、ホーさんが見つけた洞窟の話を聞いて興味を持った。
そしてもう一度その洞窟を探してみないか?とホーさんに提案し、その気になったホーさんはおぼろげな記憶を頼りにジャングル内を何度も探検。
2008年になって洞窟の入り口の再発見に成功し、翌年にはイギリス洞窟調査学会(BCRA)のチームを案内した。
最初の調査は、雨期で水量を増した地底の川に行く手を阻まれたが、それでも洞窟の総延長は少なくとも4.5kmを越えると予想され、後に9kmを越えることが判明。
長さだけで言うなら、世界にはさらに長い洞窟がたくさんある。
また、アジア最長は中国貴州省にある双河洞[https://www.jiji.com/jc/article?k=3545568&g=cgtn]で、現在のところ437.1kmまで確認されているし、日本最長の安家洞(岩手県)も総延長約24kmという規模である。
だが中でもソンドン洞の内部空間の広さはずば抜けている。高さは高いところで約240m、幅は90m、そして容積が約3,850万立方mという途方もない規模から、ソンドン洞が世界最大の洞窟であると認定されることになったのだ。
洞窟名の「ソンドン」とは、ベトナム語で「ドン山」という意味だ。最初発見者であるホーさんは、自分の名前を冠した「ホー・カン洞」と命名したが、後にイギリス隊の提案を受け入れて「ソンドン洞」に変更したんだそうだ。
大小の洞窟が点在するカルスト台地
ソンドンが今のような姿になったのは、およそ300万年前だと言われており、洞窟の中には長さが約2.5kmもある地下河川が流れ、滝や湖も存在するという。
この洞窟があるフォンニャ・ケバン国立公園には、4億年以上前に作られたアジア最古のカルスト台地があり、世界遺産にも認定されている。
公園内にはソンドン以外にも大小合わせて300を超える洞窟が存在しており、その全長は65kmにもなると言われている。
しかもそれら洞窟の中にも未調査なものがあり、さらに巨大な空間が広がっている可能性がまだあるという。
冒険とロマンを求める探検家や科学者たちが世界中からこのエリアを訪れ、新たな洞窟の発見を夢見ているんだそうだ。
2014年になって、ソンドン洞の観光客への開放が行われた。
ソンドン(での滞在)は、謙虚さを感じさせ、自分を顧みる経験です。洞窟の内部約8kmにいながら、日光がその造形を照らしだす光景を見るのは驚くべきことです。
洞窟の大きさは信じられないほどです。世界最大の洞窟で5泊もキャンプするなんて、人生でそうできることではありません
ちなみにクアンビン省当局では、Oxalis Adventure[https://oxalisadventure.com/]という旅行会社1社にしか、内部へのツアーの提供を認めていない。
ゴミはもちろん、排泄物まですべてお持ち帰りしなければならないため、ツアーにはガイド以外に運搬スタッフも同行するという。
お値段は5泊6日のツアーで約3,000ドル(約47万円)と、かなりお高く設定されているが、この絶景の中で過ごせるのなら手が届かない値段でもないかもしれない。
興味のある人はOxalis Adventureや、ソンドンへのツアーを扱っている日本の旅行会社を探してみるといいだろう。ただし、年間1,000人限定だそうなので、早めの予約をおすすめする。