
2024年9月にここで紹介した、大きなふわふわのキングペンギン(オウサマペンギン)のヒナ、ペストを覚えているだろうか。
あれから1カ月半が過ぎ、親ペンギンよりも大きかったペストが大人への階段を上がり始めたとの報告が入った。
彼を巨大に見せていたモコモコの被毛が徐々に抜け落ちて、成鳥と同じ羽が生えてきたのだ。はたして彼は脱いでもデカいままなのか?
茶色い毛玉の状態から、シュッとした白と黒のタキシード姿に変身中で、今はちょっとした脱皮の最中だが、その姿もなんだかファーのベストを着ているみたいにかわいいんだから。
茶色い毛玉からタキシード姿に変身中
子供が成長するのはあっという間だ。人間でさえそうなのだから、大人になるのがずっと早い動物たちの場合はなおさらだろう。
オーストラリアのメルボルン水族館で、2024年1月30日に生まれたキングペンギンのペストは、とにかく大きかった。そのモフモフな毛皮のせいか、親よりも大きかった。
だが生後10か月を迎え、いよいよ大人の仲間入りをする時期になったようだ。
身体中を覆っていた茶色い綿毛が抜け落ちて、その下から白と黒の成鳥の羽が現れ始めたのだ。
現在のペストがこちら。茶色くてふわふわのベスト(マタギ?)を、身体に纏っているみたいだ。
まだ首回りや背中、両脇に茶色い綿毛が残っているが、顔やお腹のあたりはもうスッキリした大人の羽に。
水族館の広報担当者は、ペストの成長ぶりについて次のように語っている。
ペストは最初の換羽の、最終段階に近づいています。
幼鳥の羽毛を脱ぎ捨てて、滑らかで防水性のある成長の羽毛になってきており、大人のキングペンギンの姿になってきました。
コロニーでの生活の次の段階に飛び込む準備が、ほぼ整ったと言えるでしょう
換羽が完全に終わるには、3~4週間ほどかかるらしい。飼育員たちは11月の終わりまでに、ペストの茶色い産毛はほとんど抜け落ちるだろうと予想している。
完全に大人になるまでにはまだ2年ほど必要
だが、換羽が完了した後も、キングペンギンが完全に成熟するまでには、まだ2年ほどかかるそうだ。完全に大人になると、クチバシの両側に細長いオレンジ色の斑点が現れる。
下の画像は、まだヒナの産毛に包まれていた頃のペストと大人のペンギンたち。成鳥のクチバシには、鮮やかなオレンジ色の模様が見える。
下は現在のペストのアップ。顔つきは大人っぽくなっているが、クチバシはまだ黒いままだ。
相変わらずペストは食欲旺盛で、毎日25匹のニジマスやサケ、シロギスなんかをぺろりと平らげているとのこと。
水族館の飼育員さんたちうは、ペストも今後は親からもらうのではなく、自分で餌を食べるようになるため、少しずつ体重が減っていくのではないかと考えているそうだ。
野生下でのキングペンギンは、親鳥は冬の間、餌を探すためにヒナのもとを離れることも多い。その間、ヒナは何も食べずにその帰りを待っている。
だが水族館での飼育下では、管理された環境の下で、たっぷりの餌を与えられて暮らしているため、少し換羽の時期が早まったのではないかと考えられている(オーストラリアは今が春)。
完全に換羽が完了すると水に入って泳げるように
成鳥の羽毛は4層からなっており、ふわふわで暖かい3層の羽毛の上を、油分の多い羽が覆っている。外側の羽は防水性が高く、これが生えそろった段階で、ペンギンのヒナは水に入れるようになるんだそう。
その段階で親は餌を与えるのをやめ、ヒナたちは自力で水の中を泳ぎ、魚を捕まえて生きていかなければならなくなる。
ペストも完全に成鳥の羽に置き換われば、自分で餌を食べるようになる。既に彼の育ての親であるタンゴとハドソンは、ペストに餌を食べさせることはなくなったそうだ。
クリスマスの頃には、大人たちに混じって泳ぎ回るペストの姿が見られるかもしれないね。
ちなみに以下の映像はイギリス領サウスジョージア島で撮影された、40万羽ものキングペンギンたちの巨大コロニー。
茶色くて巨大なヒナたちの、野生での様子がよくわかると思う。
References: See New Images of Pesto, Australia’s Enormous Baby Penguin, in His ‘Awkward Phase,’ Molting His Downy Feathers[https://www.smithsonianmag.com/smart-news/see-new-images-of-pesto-australias-enormous-baby-penguin-in-his-awkward-phase-molting-his-downy-feathers-180985373/]