ビーバーは冬眠しない。森の建築家ならではの土木技術で氷の中に水中トンネルを作っていた

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 カナダが寒い冬を迎えた今、ビーバーたちの住む川は水面が氷に覆われ、日ごとにその厚みを増していく。

 彼らはこの厳しい季節を、どのように過ごしているのだろうか。

実は彼らは冬眠しない。環境が変わっても彼らはそれに適応するための技術がある。

 森の建築家らしく、巧妙な土木技術を使って、氷の下の水へとアクセスできる地下水中トンネルを作り、巣と食料貯蔵庫と水の中を行き来しているのだ。

 巣や貯蔵庫の出入口は水中にあるので、冬の間は彼らの姿を人間が見ることができないけれど、活動しやすい環境を整えて活発に暮らしているなんて、やっぱビーバー先生すごいや。

厳寒のカナダで、ビーバーは冬眠せずに冬を越す

 カナダの冬は早い。11月の頭には既に雪が降り、川もところどころで凍結し始める。夏の間はそこいらじゅうで見かけるビーバーたちも、冬になるとなかなか見つけられなくなる。

 カナダのサスカチュワン州サスカトゥーンで暮らすマイク・ディグアウトさんは、自宅近くに住むビーバーの写真を、趣味で何年も撮り続けている。

 マイクさんによると、冬の間もビーバーたちは、活発に動き回っているんだそうだ。

彼らは冬眠しているわけではありません。実は冬の間もずっと起きているんです。

 だが起きているとは言っても、川は氷が張っているし、陸地は雪で覆われている冬の間、彼らはどこにいるのだろうか。

 マイクさんがビーバーの写真を撮り始めた最初の冬、彼はビーバーたちが、凍りついた水の中を泳ぎ回っていることに気づいた。

 初冬の、まだ氷ができ始めた時期なら、彼らは薄い氷を割って陸と水中を行き来することができる。

 だが本格的な冬が来れば、氷は簡単に割れないほど厚みを増すだろう。そうなったらどうなってしまうんだろう?

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巣と食糧庫にアクセスできる地下水中トンネルを作っていた

 実はビーバーたちは、この問題を彼らお得意の土木技術で解決しているらしい。冬の間は水辺に作ったドーム状の巣と食料貯蔵庫の間を、地下の水中トンネルで行き来するのだ。

 まず、岸辺に枝を積み上げて隠れ家となる巣を作り、泥を塗って固める。さらにその巣の近くに大きな食料貯蔵庫を作る。

 そしてそこから池の底へと続く地下の水中トンネルを掘る。ビーバーは最大で10~15分ほど、息を止めたままでいられるそうだ。

 巣から直接水中へ、さらに食料貯蔵庫へと行けるため、たとえ水面が氷に覆われていても、巣と水中、そして貯蔵庫を行き来する生活が送れるのだ。

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次に会えるのは来年の春

 だがその反面、巣や貯蔵庫の出入口は水中にしかないので、水面が厚い氷に覆われると、陸地を出歩くことはできなくなる。

 そのため、冬の間、人間は彼らの姿を見ることができなくなる。

私たちは3~4カ月間、ビーバーたちに会えなくなります。完全に水面が凍ってしまうと、出口がなくなってしまうからです

 でも氷の下での暮らしは、陸に住む狼やコヨーテといった、飢えた捕食者から身を守ることにもつながる。

 マイクさんの暮らす地域では、水処理施設から出る熱廃棄物の影響で、川の西側半分は数kmにわたって凍るのが遅くなる場所があるそうだ。

 下の動画は、2023年11月にマイクさんが撮影したものだ。川は既に大半が氷に覆われているものの、わずかに開いた水面からビーバーが姿を見せている。

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 現在、サスカトゥーンでは最高気温ですら零度を下回り、寒い日には最高がマイナス18度なんて日もあるようだ。

 今後の寒さで川面全体が氷に覆われるのも時間の問題だろう。彼らがもう一度陸地に姿を見せるのは、氷が解け始める来年の春だ。

 マイクさんは「ちょっと寂しいよね」と言いながらも、その間、氷の下を泳ぐビーバーを眺めるのを楽しみにしているそうだ。

 最後にオマケとして、マイクさんが撮影したビーバーの尻尾の写真を載せておこう。こんな風に平たくなっているのは、舵を取ったり、水面にたたきつけて警戒信号を発したりといった役割があるからなんだとか。

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 さらにあんまりじっくり見る機会もなさそうな、ビーバーの後ろ足のアップがこちら。水かきのある足のフォームは、しっかりと水を掻いて泳ぐのに適しているのだ。

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References: Beavers Don’t Hibernate — They Do Something Much Weirder[https://www.thedodo.com/daily-dodo/beavers-dont-hibernate-they-do-something-much-weirder]

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