
日本の熊本県の地層から発見された翼竜の化石が、新種であることがわかり、初めて日本で命名されることになった。
古生物学者らが2024年11月25日、後期白亜紀(約9000万年前)に生息していた新種の翼竜の名を「 ニッポノプテルス・ミフネンシス (Nipponopterus mifunensis) 」と発表した。
見つかった翼竜の化石は、御船層群(みふねそうぐん)の地層から見つかった頸椎の一部で、発見当初は、既知の翼竜のいずれかのものと考えられていた。
日本で初めて命名された翼竜の新種
古生物学者らが11月25日、日本の後期白亜紀の地層から、アズダルコ科ケツァルコアトルス亜科に分類される新種の翼竜、「ニッポノプテルス・ミフネンシス (Nipponopterus mifunensis) 」の発見を発表した。
新たな属名となった「ニッポノプテルス」は古代ギリシア語で「日本の翼」を意味し、種小名「ミフネンシス」は、発見地である熊本の御船層群に由来する。
新属新種のニッポノプテルス・ミフネンシス
ニッポノプテルス・ミフネンシス発見のきっかけとなったのは、2000年に熊本県 上益城郡 御船町の天君ダム近くの御船層群から発見された頸椎の骨の一部だった。
その骨の化石は、当初はその特徴から、後期白亜紀において最も多様で広範な翼竜グループであるアズダルコ科のどれかに属すると考えられていたが、当時は翼竜の情報や標本の少なさなどから分類が進まなかった。
だが近年、翼竜への理解が深まり、詳しい分析がなされたことで、それが第6頸椎であることが判明し、そこからケツァルコアトルス亜科に含まれる新属新種と結論づけられた。
この種に近い系統も
一方で研究者らは、この新種の特徴が、モンゴルで見つかったアズダルコ科の未命名の翼竜の一種と非常に類似していると指摘する。
この名もなき翼竜種は、チューロニアン-コニアシアン期(約9000万年前から8600万年前)の地層から発見されたが、標本が断片的なため、まだ学名が決まっていない。
便宜的な仮称として、発見した地名とアズダルコ科を示す「Burkhant azhdarchid」と呼ばれているが、ニッポノプテルス・ミフネンシスの頸椎とよく似た点があることから、この二つの種は近縁な系統とみなされているとのことだ。
薄くてもろい翼竜の骨の化石
この発見について、研究チームの一員である、御船恐竜博物館の主任学芸員、池上直樹 博士とサンパウロ大学のロドリゴ・ペガス博士らはこのように述べている。
動力飛行を実現した最古の脊椎動物群である翼竜は、三畳紀後期から白亜紀/古第三紀境界までの化石記録を残しており、その形態学的多様性は注目に値する
翼竜の骨格は空気を含む薄い壁の骨で構成されているため壊れやすく、化石の記録については特に偏っている
薄くてもろい翼竜の骨の化石はそれだけでも貴重だが、それが日本のものとなるとさらに希少で重要なものになる。
なお、日本で発見された初の翼竜標本は、北海道の蝦夷層群(えぞそうぐん)から出土したプテラノドン科の化石で、大腿骨、中足骨、足指骨、尾椎が含まれていた。
史上最大の飛行動物だったアズダルコ科の翼竜
翼竜は、2億1千万年前から6500万年前まで生息していた空飛ぶ爬虫類であり、地球上で最初に飛行を達成した脊椎動物でもある。
彼らは鳥やコウモリが登場するよりもはるかに早い時代から空を飛んでいたが、種によってはその大きさも目がみはるものがあった。
中でも巨大なアズダルコ科の翼竜は、翼幅10m超、直立すると現代のキリンに匹敵するほど背が高い種もいたとされ、史上最大の飛行動物といわれている。
なお注目のニッポノプテルス・ミフネンシスの大きさについては、標本が成体手前の若いものだったこともあり、まだよくわかっておらず、推定翼幅3~3.5mほどともいわれている。
約9000万年前の日本で生息していたニッポノプテルス・ミフネンシス。この発見は、翼竜の進化や多様性を探る新たな一歩に貢献しそうだ。
この研究論文は『sciencedirect[https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0195667124002192]』誌(2024年11月25日付)に公開された。
References: New Pterosaur Species Discovered in Japan[https://www.sci.news/paleontology/nipponopterus-mifunensis-13453.html] / ニッポノプテルス[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%9D%E3%83%8E%E3%83%97%E3%83%86%E3%83%AB%E3%82%B9] / Reassessment of an azhdarchid pterosaur specimen from the Mifune Group, Upper Cretaceous of Japan[https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0195667124002192]