
北米に生息しているソウゲンライチョウという鳥は、オスとメスが集まって集団で相手を探す、一種の合コンを開くことで知られている。
オスたちはこの場で精一杯自分をアピールし、メスに選んでもらおうと涙ぐましい努力を続けるのだが、その時にアピールすべき部分は喉だ。
喉にあるオレンジ色の袋状の器官を膨らませるのだが、その姿がなんともユニークで、一度見たら忘れられないレベル。ポケモン化してほしい鳥の1種なんだ。
大草原で合コンする鳥、ソウゲンライチョウ
毎年3月下旬になると、キジ目ライチョウ科のソウゲンライチョウのオスたちは「レック」と呼ばれる草丈の低い開けた場所に集まって来る。
彼らは約2か月間この場所にとどまり、それぞれが小さな縄張りをつくる。この見通しの良い広場は「ブーミング・グラウンド」と呼ばれ、彼らの求愛の場、つまり合コン会場になるわけなんだ。
やがてこのブーミング・グラウンドにメスがやって来ると、オスたちは長い耳羽や尾羽を逆立てて求愛ダンスを踊り始める。
首の袋を広げてアピールするオス
その時に注目したいのが首の部分だ。
目の上にある黄色い羽と、喉にあるオレンジ色の気嚢(きのう)をぷっくり膨らませて、独特の鳴き声を上げながら、自分の美しさをアピールするのだ。
ソウゲンライチョウのオスが首を膨らませる姿は海外掲示板redditに投稿され話題を呼んだ。
・首にあるのはオレンジ?
・鳥の祖先が恐竜だってこと、改めて実感した
・もしポケモンになったら、その名前は「プレーリーチキン」かな?
・すべての動物は現実世界のポケモンだ
メスを巡ってオス同士の壮絶なバトルも
オスの必死な求愛行動により、うまくメスに興味を持ってもらえたら、そこでカップル成立……となればいいのだが、実はこの合コン会場、オスたちの舞踏場であると同時に武闘場でもある。
彼女とうまくいきそう……と思った瞬間、横から現れた別のオスと壮絶なバトルが開始される。
メスのほうは「勝負がついたら教えてね」とでも言いたげな無関心さ。そう、ソウゲンライチョウは一夫一婦制を尊ぶ鳥ではない。
オスたちはこの集団求愛の場で、どれだけ多くの相手と交尾できるかを競っている。独特の求愛スタイルも、彼らの恋の道は険しいゆえに進化したのかもしれない。
絶滅の危機に瀕しているソウゲンライチョウ
晴れてカップルとなり、交尾が終わると、メスは少し離れた場所に移動して巣を作り、産卵する。メスは一度に7~17個の卵を産み、その卵は23~26日後に孵化するのだが、無事にヒナが孵るのは約半数程度だという。
残りの卵は、草原に住むオポッサムやアライグマのほか、猛禽類などに狙われてしまうのだそうだ。
また、生息域が被っているキジの仲間が、ソウゲンライチョウの巣に托卵することもあるらしい。
ソウゲンライチョウの敵はそれだけではない。テキサス州では亜種のテキサスソウゲンライチョウが、外来種のヒアリのせいで、絶滅しかけたことがあった。
ヒアリが土の中にいる生き物を捕食しまくったことで、ヒナたちのエサがなくなり、生息数が激減したのだ。
さらに狩猟や土地開発による生息地の破壊などにより、彼らは常に脅威にさらされている。
カンザス州立大学の研究によると、ソウゲンライチョウのメスは舗装道路や送電線の近くには決して巣を作らないのだそうだ。
また、外来の背の高い植物も、彼らの繁殖活動を阻害する。そのためアメリカでは環境保護団体が侵略的外来種の除去に取り組み、ソウゲンライチョウが安心して繁殖できる、かつての草原に戻す活動を行っているそうだ。
前述のテキサスソウゲンライチョウは絶滅危惧種に指定されているが、人工繁殖などの努力が実り、現在では6,000羽にまでその数が回復した。
とはいえ、草原で暮らす彼らはハリケーンや洪水などに極めて弱い生き物だ。絶滅の脅威と隣り合わせの日々は、まだしばらく続きそうである。
References: Greater Prairie Chicken[https://www.nature.org/en-us/get-involved/how-to-help/animals-we-protect/greater-prairie-chicken/]