
ダークエネルギーとは、宇宙の膨張が加速している原因とされる謎のエネルギーのことで、宇宙の7割を満たすとされている。だが実は、そんなものは存在しないという、現代宇宙論をくつがえすような驚愕の研究が発表された。
ニュージーランドの物理学者チームは、超新星の光を分析することで、ダークエネルギーがなくても加速しているとされた宇宙の膨張を説明できることを示した。
そもそもこの宇宙は均一にすら膨張していない。地球がデコボコしているように、宇宙の膨張もデコボコでいびつものであるという。
この画期的な発見をした研究チームは、宇宙最大の謎は5年以内に解決されるだろうと予想している。
宇宙最大の謎、加速する宇宙の膨張とダークエネルギー
「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」とは、この宇宙の7割を満たしているとされる謎の力のことだ。
この宇宙はビッグバンで誕生し、それから今日までずっと膨張し続けてきた。だが宇宙に存在する物質の重力によって、そのスピードは徐々に減速するはずだ。
ところが、これまでの観察によって、なぜか宇宙の膨張は減速するどころか、ますます加速していることが明らかになっている。
この加速を引き起こしている力として仮定されたのがダークエネルギーである。ダーク(暗黒)という名が示すように、直接観測されたことはなく、あくまで仮説上のエネルギーだ。
だが、そもそも宇宙の膨張が加速しているなど、どうやればわかるのだろう? その手がかりは、光の見え方にある。
遠くからやってきた救急車が目の前を通過すると、それまでけたたましく鳴っていたサイレンの音が突然低く深く変化する。
この「ドップラー効果」と呼ばれる現象は、音源が聞き手に接近するとき音の波長の間隔が短くなる(高音になる)のに対して、遠ざかるときは長くなる(低音になる)ことが原因だ。
光は波の性質を持つので、光源が移動すれば、これと同じ現象が起きる。つまり光源が遠ざかれば赤くなり(赤方偏移)、近づけば青くなる(青方偏移)。
そして遠くの宇宙からやってくる光には、この赤方偏移が起きているのだ。
このことから、宇宙の遠方にあるものはだんだんと加速しながら、地球から遠ざかっていると推測することができる。それが意味するのは、宇宙の膨張が加速しているということだ。
ダークエネルギーがなくても宇宙の膨張加速は説明できる
ところが、ニュージーランド、カンタベリー大学の研究チームによれば、この赤方偏移は膨張の加速によるものではなく、時間と距離の測定法によるものなのだという。
相対性理論によるならば、重力は時間の流れを遅くする。だから重力を発生させる物質が何もない虚ろな空間に時計があったとすれば、その針は私たちが暮らす銀河内にある時計よりも速く進むことになる。
研究チームが「タイムスケープモデル」に基づいて天の川銀河の時間の流れを計算したところ、宇宙に存在する巨大な「超空洞」(宇宙を巨視的に見ると浮かび上がる、銀河がほとんどない領域)よりも35%遅いことが判明した。
それが意味するのは、この超空洞では時間の流れが速い分、天の川銀河より何十億年か長く時間が経過しているということだ。そしてその分、宇宙が膨張することになる。研究チームによれば、宇宙の膨張が加速して見えるのはそのせいだ。
研究の中心人物、デイヴィッド・ウィルツァー教授は、宇宙が加速して膨張しているように見える理由は「ダークエネルギーがなくても説明できる」と、ニュースリリース[https://www.canterbury.ac.nz/news-and-events/news/2024/dark-energy-doesn-t-exist--according-to-new-nz-study]で述べている。
「ダークエネルギーは、膨張の運動エネルギーの変動による見間違いです。実際のところ、この宇宙は私たちが住むこの場所のように、デコボコと一様ではありません」
宇宙の膨張の加速とダークエネルギーは、現代宇宙論における最大の謎の1つとされてきた。だが、最新の発見のおかげで、5年以内には解決される可能性があると研究チームは見込んでいる。
この研究は『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society Letters[https://academic.oup.com/mnrasl/article/537/1/L55/7926647?login=false]』(2024年12月19日付)に発表された。
References: Dark energy doesn't exist, according to new NZ study | University of Canterbury[https://www.canterbury.ac.nz/news-and-events/news/2024/dark-energy-doesn-t-exist--according-to-new-nz-study]