
宇宙の時間の流れで見ると、それは驚くほど早かった。ビッグバンからわずか1億年後、宇宙にはすでに生命が誕生していた可能性があるという。
最新の研究では、宇宙最初の超新星爆発が大量の水を生み出し、生命の基盤となる環境を整えていた可能性が指摘されている。これまで水は星々が長い時間をかけて生成したと考えられていたが、この研究はその常識を覆す内容だ。
あくまで仮説に過ぎないが、仮に正しいとするならば、宇宙の進化や生命の誕生の理解を大きく変えることだろう。
宇宙における水の役割
水は地球上の生命に欠かせない物質だが、それは宇宙全体でも同様だ。NASAによれば[https://www.jpl.nasa.gov/news/the-solar-system-and-beyond-is-awash-in-water/]、水は宇宙で最も豊富に存在する化合物の1つであり、私たちの太陽系内でもその存在が確認されている。
月[http://.com/archives/455382.html]や火星、土星や木星の衛星など、太陽系ではさまざまなところで氷や蒸気などの状態で水の痕跡が発見されているし、天の川銀河内の星間ガス雲や、太陽系外惑星でもその兆候が認められる。
さらに、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、遠く離れた太陽系外惑星の大気中にも水をがある痕跡を発見した。これらの観測から、水は宇宙のどこにでも存在している可能性があると考えられている。
最新の研究が示す、初期宇宙の水
こうした水は、宇宙でもっとも豊富な元素である水素が、恒星の核で作られた酸素と結びつくことで、何十億年もかけて蓄積されたと考えられていた。。
ところが最新の研究によれば、初期宇宙の最初の超新星爆発がすでに大量の水を生み出した可能性があるという。
英国ポーツマス大学のチームによる研究では、質量が太陽の約200倍もある種族Ⅲの星の爆発をシミュレーションした。
種族Ⅲの星は、宇宙で最初に形成された星々で、主に水素とヘリウムという軽い元素から成り立っている。現在の恒星(太陽など)は「種族Ⅰの星」とされ、比較的金属を多く含野に対し、種族Ⅲの星は金属をほとんど含まない初期宇宙の星であることが特徴だ。
その結果、これらの星が超新星爆発を起こした際に、周囲に大量の酸素を放出し、それが水素と結びつくことで水が形成される可能性が示された。
さらに、この爆発後にできるガス雲の中心部では、天の川銀河の星間空間にただよう水の最大30倍にも及ぶ水が存在していた可能性があるという。
もしもこの仮説が本当ならば、生命に不可欠な材料である水は、ビッグバンの1億~2億年後にはすでに宇宙に存在したということになる。
このことは、銀河の進化や宇宙の生命の理解に大きな影響を与えることだろう。
最初期の水はどこへ行ったのか?
ただしこの研究には1つ大きな問題がある。それはシミュレーションされた宇宙初期の恒星(種族Ⅲ)が直接観測されてないことだ。
こうした星々は、その残骸から生まれた星の分析を通じて間接的に確認されただけで、その実態はよくわかっていない。
また、もしも本当に初期宇宙に水がたっぷりとあったのならば、現在の宇宙にはこれまで観測されてきたよりもずっと大量の水が見つかっているはずだ。
これについてイオン化など天体物理的プロセスによって、一度は潤った宇宙が”乾燥”したのだという仮説[https://www.universetoday.com/170448/the-first-supernovae-flooded-the-early-universe-with-water/]もある。ならば最初の超新星によって作れた水は、想像以上に短命だったのかもしれない。人類は原始の水を永遠に味わえないのだとすれば、ちょっと残念なことだ。
この研究の未査読版は『arXiv[https://arxiv.org/abs/2501.02051]』(2025年1月3日付)で公開されている。
References: 1st supernovas may have flooded the early universe with water — making life possible just 100 million years after the Big Bang | Live Science[https://www.livescience.com/space/cosmology/1st-supernovas-may-have-flooded-the-early-universe-with-water-making-life-possible-just-100-million-years-after-the-big-bang]