
家族の一員でもある大切なペット。そんなペットが大ケガをして、命が危ないとしたら。
イタリアの病院に勤める医師の飼い猫が、屋根から落ちて大ケガをした。医師はすぐに動物病院に行ったが、重症であることが判明。
そこで、自分の勤務先である人間の病院に愛猫を連れて行き、人間のための医療機器で検査と治療を無断で行った。
猫は一命をとりとめたが、この医師の行為は病院で問題視され、現在、検察による調査が行われている。
自分の勤務する「人間の病院」で愛猫の治療をした医師
問題となっているのは、北イタリアの街アオスタにあるウンベルト・パリーニ病院で、放射線科・緊急放射線科の部門長として勤務しているジャンルカ・ファネッリ医師が行った行為だ。
2025年1月27日、彼の愛猫アテナ(2歳・メス)が6階建ての建物の屋根から落ちて負傷した。動物病院に連れて行くと、獣医は骨折、内臓の損傷、そして外傷性気胸の可能性を示唆した。
気胸とは、肺を包んでいる膜に穴が開き、空気が胸腔内に漏れ出してしまう症状のこと。放置すると、最悪の場合死に至ることもある。
そこでファネッリ医師は、アテナを自分の勤務している病院に連れてきて、自らの手で検査と治療を行ったのだ。
もし私は、自分にできることをせずに猫が死んでいたら、自分自身を許すことができなかったでしょう。私の家族、特に私の子供たちは、この猫を家族同然に愛していたのです(ファネッリ医師)
事件発覚後、検察へ送致され調査が開始
この出来事は病院内ですぐに話題となり、経営陣の知るところとなり、ファネッリ医師は地元の保健当局による内部調査を受けた。
ファネッリ博士が病院の設備を個人的な目的で使用したことが問題視されており、本来患者が受けるべき医療サービスを妨げたりした可能性があると指摘されている。
この事件はその後、アオスタ地方検察庁に引き継がれ、医師が正式に処分を受けるかどうかが検討されるという。
院長のマッシモ・ウベルティ氏は、次のように語っている。
あまりにも信じられない話で、最初は冗談かと思いました。今後はあらゆる違反の可能性について、調査を進めていく予定です。
金曜日の夕方、私は口頭でこの事件の報告を受けました。直ちに保健当局に調査を依頼し、懲戒委員会を発足させました。現在検察が捜査中です。
また、ウベルティ氏によると、同病院ではペットを院内に連れ込むことを禁止しているとして、衛生上の懸念も指摘した。
「命を救うのは医師の使命」とファネッリ医師
アテナはファネッリ医師が路上から保護し、大切に飼っている5匹の保護猫の1匹だ。彼は発覚後、病院へ宛てた書簡の中で、次のように書いている。
このすべてが規則違反につながったのなら、申し訳なく思います。また、私の行為が病院に何らかの経済的損害を与えたのであれば、全額の弁償を個人的に負います。
医師の使命とは、人々が自分を信じて託してくれる命を救うことにあると思っています。そして、その命は人間に限らず、すべての生き物にも宿っていると信じています
また彼の妻で地元の政治家、上院議員であるニコレッタ・スペルガッティ氏は、夫の行動を擁護し、メディアで次のようにコメントしたという。
人生では、正しいことをしてください。結果を気にすることはありません。夫は命を救いました。それだけです。人間の法則と宇宙の法則は、必ずしも一致しないのです
私の夫はただ一つの命を救った、それだけのことです
人生において、善行を行うこと、その結果を恐れない勇気が必要です。人間の法律と森羅万象の法則は必ずしも一致しない
ネットでの意見は賛否両論
愛するペットの命を助けるために、規則を破ったファネッリ医師。この事件は現地で大きな賛否両論の議論を呼んでいる。
- この医師はクビにするべきだ!
- 猫にだって魂があり、治療を受ける権利はあるはずだ
- 解雇に賛成。がんに苦しんでいる子供たちだっているんだ
- 何か月もCTスキャンを待っているがん患者もいる。自分も今日予約したけど4か月待ちだったよ
- 小児性愛者や暴行犯みたいな犯罪者支援するくらいなら、猫の命を救った方が良い。アテナには長生きしてほしい
- 動物病院にだって必要な機器はそろっているんだ。何も人間の病院に連れてくることはなかった
- 全ての動物病院が、特定の機器を持っているわけじゃない
- CTはなくてもレントゲンはあるよね
- 動物を愛することと、個人的な問題で自分の立場を利用することは別の話だ。
人間として、彼の行動には賛成だけど、プロフェッショナルの立場としては非常に深刻な行為だったと思う- 私は彼と同じことをすると思う。近所の猫や他の人の猫のためだとしても、同じようにしたと思う
- 彼は素晴らしい医師です。本当に動物を愛する人だけが理解できるの。神様が守ってくれるわ
- この病院のCTスキャンのウェイティングリスト、152日待ちだったんだけど
ペットの命が危ない時、もしこの医師のような立場で医療機器へのアクセスが可能だとしたら、みんなならどんな選択をするだろうか。
References: Aosta, il radiologo Gianluca Fanelli opera la sua gatta in ospedale: «Ho fatto il mio dovere, Athena sarebbe morta. Ora risarcirò il danno economico»[https://torino.corriere.it/notizie/cronaca/25_febbraio_05/aosta-il-radiologo-gianluca-fanelli-opera-la-sua-gatta-in-ospedale-ho-fatto-il-mio-dovere-athena-sarebbe-morta-ora-risarciro-il-1134bd00-53ce-4931-85b7-bf4882cfbxlk.shtml?refresh_ce]