ラッコがお気に入りの石をしまう秘密のポケットの仕組みとその知能に迫る!
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 海に浮かぶふわふわの毛玉、ラッコはただかわいいだけじゃない、その小さな体の中には、海の過酷な環境を生き抜くための驚くべき知恵と工夫が詰まっているのだ。

 彼らは「お気に入りの石」を大切に持ち歩き、硬い貝やウニを食べるときに道具として使用していることは以前にも紹介したが、ラッコは、水中を泳ぎながらでもお気に入りの石を落とさず運べる、秘密のポケットを持っている。

  今回は、ラッコの石の使い方や、秘密のポケットの構造など、その驚くべき知能と生態に迫ってみよう!

石を道具として使いこなす知能

 ラッコは体長約1.2 m、体重は約30 kgと、海に生息する哺乳類の中でも小さいほうだが、自然界でも数少ない道具を使いこなすことができる動物だ。

 ラッコはアザラシやクジラのように分厚い皮下脂肪を持っていないが、代わりに、約6.45平方cmあたり100万本以上の毛を持つ世界一密な毛皮を持つことで、冷たい海でも体温を保つことができる。

 しかし、体温を守るだけでは過酷な海の生活は乗り越えられない。

 ラッコが主に食べるのは、ハマグリやムール貝、カニ、ウニといった硬い殻を持つ生き物だ強力な顎と特殊な奥歯を使ってこれらを砕くのだが、特に硬い殻にはちょっとした工夫が必要になる。そこで登場するのがお気に入りの石だ。

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石の使い方は二刀流

  1つ目は作業台として石を使うやり方だ。胸の上に石を置いてその上に貝を叩きつけて割る。

 2つめは、ハンマー代わりに使用する。岩に張り付いたアワビのような獲物を叩いてはがす。

 どちらの使い方もその力加減は絶妙で、まるでプロの大工のように正確だ。

 中には、2つの石を同時に使うラッコもいるというのだから驚きだ。1つをハンマー代わりに、もう1つを作業台(ハンマー台)として使用することで、素早く、効率良く硬いものを割ることができる。

 これはラッコの問題解決能力の高さと、器用さの表れだ。

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お気に入りの石をしまう秘密のポケット

 ラッコは使い勝手が良いお気に入りの石を持ち運ぶ習性がある。だが手や足を使ってかかえて持っているわけではない。

 実はラッコの前脚の下の皮膚はたるんでおり、ここがポケットの役目を果たし、石をしまうことができるのだ。

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 このポケットに入れておけば、泳いでいる途中に落とすことはない。

 このポケットは、潜水中に食べ物を一時的に保管するためにも使用されるが、お気に入りの石を大切にしまっているラッコが多いという。

 中には数か月から数年にわたって同じ石をポケットに入れて、大切に使い続けるラッコもいるそうだ。

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 研究者たちは、ラッコが石を選ぶ際に、自分に合ったサイズと形を慎重に見極めていると考えている。

 石は、大きすぎるとポケットに入らず、小さすぎると割る力が弱まるため、「ちょうどいい」石を見つけることが大事で、見つかったら大切に使い続けるのだ。

 そう考えると、前回紹介した、自分の石を人間に貸してあげようとしようとしたラッコは、かなりその人間のことを慕っていたのかもしれないね。

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メスの方が石をよく使い、子に使い方を伝授する

 アメリカのテキサス大学オースティン校で研究を進めたクリス・ロー博士[https://news.ucsc.edu/2024/05/sea-otters-tools.html]によると、メスのラッコはオスよりも石を使う頻度が高いことがわかっている。

 これは、メスがオスよりも体が小さく、噛む力が弱いためと考えられている。

 特に子育て中のメスは、多くのエネルギーを必要とするため、効率よく食料を確保する手段として道具を使う傾向が強い。

 さらに、母親ラッコは子どもに道具の使い方を教える。

 生後6~7か月の間、子どもは母親の狩りや石の使い方を観察し、自然とその技術を学んでいく。

しかし、母親がいなくても、ラッコの子どもは本能的に石を使う傾向があることも確認されている。

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ラッコは海の生態系のバランスを守っている

 ラッコは賢くてかわいいだけじゃなく、海の生態系を守る重要な役割を担っている。

 ウニが増えすぎると、藻場(大陸棚に形成された様々な海草・海藻の群落)が荒らされ、海洋生物の住処が失われてしまうのだが、ウニを食べるラッコのおかげで健全な状態に保たれる。

 更に、アメリカで増殖中の侵略的外来種「ヨーロッパミドリガニ」も生態系を脅かす脅威となっているが、ラッコがむしゃむしゃ大量に食べてくれる地域では、ミドリガニの生息数が抑えられている。

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 かつて、ラッコはその美しい毛皮を目的とした乱獲により絶滅の危機に瀕した。

 現在でも、生息地の破壊や気候変動、石油流出などの脅威にさらされ続けている。特に石油が毛皮に付着すると、彼らの唯一の防寒手段が失われ、命に関わる問題になる。

 ラッコたちがその「お気に入りの石」と共に海を泳ぎ続けられるよう、私たちも彼らの生息地を守っていかなければならない。それは地球の未来を守ることでもあるのだ。

追記:(2025/02/22)本文を一部訂正しました。

References: News.ucsc.edu[https://news.ucsc.edu/2024/05/sea-otters-tools.html] / Sea otters have a favorite rock that they keep in a fur pocker under their arms. They have a clever reason for it[https://www.zmescience.com/ecology/animals-ecology/sea-otters-favorite-rock/] / Sierraclub[https://www.sierraclub.org/sierra/sea-otters-are-unlikely-heroes-helping-restore-marine-ecosystem]

本記事は、海外メディアの記事を参考に、日本の読者に適した形で補足を加えて再編集しています。

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