母親に見捨てられた孤児のセイウチの赤ちゃん、飛行機に乗ってフロリダの水族館へ
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 アメリカ・フロリダ州の水族館に、北極圏から救出された孤児のセイウチの赤ちゃんがやってきた。

 ウキアク(Ukiaq愛称:ウキ)と名付けられた赤ちゃんは、2024年夏にアラスカ州の北極圏の海で、たった1匹で群れに置き去りにされているところを救出された。

 発見当時、ウキは生後わずか数週間ほどだったが、彼女を抱きしめてるはずの母親の姿はなく、栄養失調で傷だらけのまま、懸命に耐えていた。

 救助されたウキは、優しいスタッフからあふれんばかりの愛情と献身的なケアを一身に受け元気に回復た。

 その後遠く離れたフロリダに飛行機で移送され、今ではすっかり水族館の人気者となっている。

アラスカで見つかったひとりぼっちのセイウチの赤ちゃん

 2024年7月、アメリカ最北端の都市であるアラスカ州のウトキアクヴィク周辺で、生後およそ数週間の幼い太平洋セイウチが見つかった。

 のちにウキアク(愛称ウキ)と名付けられたそのセイウチは、そばにいるはずの母親から見捨てられ、群れにも見放され、脱水や栄養不足のうえに傷だらけという悲惨な状態だった。

 そこで見かねた現地の住民が、アラスカで唯一の水族館であるシーライフセンターに通報。これを受けたスタッフがすぐに救助にかかり、救い出されたウキは飛行機でセンターまで搬送された。

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愛情込めた24時間体制のケアで元気に

 迅速に保護された彼女だが、そこで必要だったのは単なる治療だけでなく、本物の母親に代わるたっぷりの愛情だった。

 一般的なセイウチの母親は、生後少なくとも1~2年のあいだ赤ちゃんに付き添って過ごすという。

 そこでスタッフのダイアナ・ホークさんとステイシー・オーウェンズさんの2人が、哺乳瓶でミルクを与え、眠っている間も抱きしめて温め続け、愛情あふれるスキンシップでウキの心を救う24時間体制のケアを続けた。

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 そのひたむきな愛情に満ちた励ましが、ウキの凍えきった心を溶かすぬくもりとなり、やがて生きる希望となったのだろう。

 一命をとりとめた彼女は日を追うごとに体力を取り戻していき、体重も増え始めた。

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遠く離れたフロリダ州の水族館へ飛行機で移送

  救助直後のおよそ100kgから、160kgまで体重が増え、すっかり元気になったウキは、2024年9月にフロリダ州の水族館、シーワールド・オーランドに移された。

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 獣医に付き添われ、陸路で運ばれたウキ。アラスカからフロリダまではかなりの距離があったが、それは野生復帰が難しいウキのことを思っての判断だ。

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 シーワールドには、専門家はもちろん、北米でも新しい保護動物のリハビリ施設や自然を意識した特別な環境まで用意されていて、彼女と同じ境遇のセイウチたちも暮らしているからだ。

 一方さっそくウキを大歓迎したシーワールドでは、まだ幼い彼女が安心して過ごせるような工夫もしているそう。

 いずれは今いる保護セイウチ全員に合流させる予定だが、急に大人のセイウチたちに会わせるのではなく、段階的に接するような配慮もしている。それもうまくいってるようだ。

 そしてここでもセイウチを良く知るスタッフと獣医師が、最新のケアと温かいまなざしで、ウキの新生活を支えている。

ウキのシーワールドまでの旅は、彼女の物語の新たな1章の始まりです。

最初に彼女を発見したウトキアグヴィクの住民から、シーライフセンタチームのたゆまぬ努力、それからシーワールドにいる私たちまで。ウキは、彼女に二度目のチャンスを与えたいと願い、尽力する人々に囲まれてきました

(シーワールド・オーランドの動物学者兼運営担当副社長、ジョセフ・ガスパール博士)

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SNSで早くも人気!今月後半に初お披露目も

 あどけないウキのぽっちゃりしたかわいらしさや好奇心いっぱいの様子は一足早くインスタグラムで評判に。

 哺乳瓶に吸い付く姿もまさに赤ちゃんで、愛くるしい彼女にさっそく推し活をするファンができた。

 施設では、リハビリの一環で、触覚や聴覚を刺激する工夫を凝らした遊びやトレーニングも行われているそう。

  シーワールドでのウキのお披露目は、4月後半に予定されている。動物を愛するたくさんの人々に助けられたウキは、訪れる人々の心の癒しになりそうだ。

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巨大な海洋哺乳類の太平洋セイウチ

 太平洋セイウチ(Pacific walrus calf:O. r. divergens)は、北米とユーラシア大陸の狭間に広がるチュクチ海やベーリング海などに生息する巨大な海洋哺乳類だ。

 同じ亜種の大西洋セイウチよりやや大きめで、オスで体長320~370cm、体重800~1700kgほど。中には約2トンに達する個体もいる。

 セイウチは社会性が高く、基本的に群れで生活する。目立つ特徴は堂々とした牙で、長いものではおよそ1mに達する。これらの牙は、氷上に上がるときの支えや、コミュニケーション、さらには身を守るためにも活用される。

 もう一つの特徴のヒゲは海底の貝類などのエサを探すセンサーとなっている。

 この種は他のセイウチ同様、かつては牙の乱獲により激減し、絶滅危惧種に分類されたが、狩猟の規制や保護活動によって個体数が徐々に増え、現在は準絶滅危惧とされている。

References: News18[https://www.news18.com/viral/watch-orphaned-baby-walrus-finds-new-home-internet-absolutely-loves-it-aa-9296742.html] / Nypost[https://nypost.com/2025/04/11/lifestyle/uki-the-adorable-orphan-baby-walrus-from-alaska-settles-into-new-home/]

本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。

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