味も食感も本物そっくり!3Dプリントで作る植物由来のイカリングの作成に成功!
ACS Food Science & Technology (2025)

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 さかのぼること2年前、シンガポール国立大学(の研究チームが、植物由来の魚介類代替品として、3Dプリント製植物由来イカリングの開発に挑んだ。

 初期試作品は味の再現には成功したものの、イカ特有の弾力のある食感がうまく出せなかった。

これでは代替食品として支持されないだろう。

 その後改良に改良を重ね、ついに2025年、、研究チームはついに食感と味を両立させ、しかもタンパク質量は本物のイカより5%多い新レシピを完成させたのだ。

持続可能な食のためにイカリングに挑戦した研究者たち

 シンガポール国立大学の研究者たちは、環境にやさしい未来の食を目指し、植物由来素材から本物のイカリングに近い味と食感を再現するプロジェクトに取り組んできた。

 消費者が代替食品を受け入れるためには、単に見た目や味だけでなく、食感まで本物と同じであることが重要であり、それが持続可能な食産業を支える大きな鍵になると考えられている。

 2023年当初は、味は近づけることはできてもイカ特有の食感が出せずに苦労していた。だがついに、本物のイカとそん色ないイカリングの作成に成功したのだ。

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イカリングの主成分は緑豆タンパク質と藻類

 今回開発された植物由来イカリングの主な原料は、緑豆(りょくとう)から分離したタンパク質と、粉末状の微細藻類である。

 緑豆は、春雨の原料としても知られる豆で、植物性タンパク質を豊富に含み、アジア各地で古くから食べられてきた。

 微細藻類は、海藻の仲間に近い小さな藻で、栄養価が高く、特にたんぱく質やミネラルが豊富なことで注目されている。

改良版のレシピでは、基本の緑豆タンパク質に加えて、以下の成分がバランスよく配合された。

  • 微細藻類を10%配合
  • ゲランガム(gellan gum)を1.5%配合して粘度と弾力を調整
  • キャノーラ油(canola oil)を2%加えて脂肪分を補強

 この配合により、口にしたときのリアルな弾力とジューシーさを生み出すことに成功した。

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冷凍と揚げの工夫で完成度をアップ

 製造工程にも重要な工夫が施された。

 幅約4.5cmに成形したリング状のペーストは、すぐに加熱するのではなく、いったん一晩冷凍される。

 これによって内部構造が整えられ、後に揚げたときにちょうどよい柔らかさと弾力が得られるようになる。

 翌日、冷凍されたリングに衣をつけ、短時間でさっと揚げてから試食テストが行われた。

 顕微鏡で観察すると、揚げたリングの内部には小さな空洞が無数にできており、これが本物のイカのような柔らかい食感を再現する大きな要因となっていた。

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植物由来シーフードの未来

 研究を主導したプールニマ・ヴィジャヤン氏は、「この研究は、持続可能な植物性タンパク質を、リアルな海産物代替品に変える3Dプリンティング技術の可能性を示している」と語っている。

 今後は、大量生産体制を確立し、より多くの人々に植物由来のシーフードを受け入れてもらうことを目指しているそうだ。

 魚や豆類を食べる文化のある日本なら、本物とそん色ない、なんなら本物を超える植物由来のシーフードを作れそうな感じじゃない?

 この研究は『American Chemical Society[https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsfoodscitech.4c00852]』(2025年3月22日付)に掲載された。

References: Research update: Plant-based calamari that rivals real seafood in texture[https://www.eurekalert.org/news-releases/1081481]

本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。

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