スコットランドの住民を悩ます謎の怪音「ヘブリディアン・ハム」の正体はいまだ不明

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 2025年2月から現在にいたるまで、連続して聴こえてくる奇妙な低音が、スコットランド、アウター・ヘブリディーズ諸島の住民たちを悩ませ続けている。

 この耳障りな低い「ブーン」という雑音は地元住民から「ヘブリディアン・ハム(ヘブリディーズ諸島のハム音)」と呼ばれ、一部の住民はFacebookグループ[https://www.facebook.com/groups/1368201944490482/]を立ち上げて、この不快な周波数について議論している。

数か月にわたって住民を悩ませる謎のハム音

 今回「ハム音」が問題になっているのは、スコットランド北西部にあるアウター・ヘブリディーズ諸島である。

 特に「被害」が大きいのは、北部にある最大の島「ルイス島」の東側だという。

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 ここでいうハム音とは、低い「ブーン」という雑音のことだ。

 この音に悩まされている住人らの情報共有・発信を目的としたFacebookグループ、「The Hebridean Hum[https://www.facebook.com/groups/1368201944490482]」を立ち上げたローレン・グレース・カートリーさんによると、被害を訴える住人は200人を超えるという。

非常に低いハミング音、単調な音、脈打つような音です。信じられないほど邪魔で、苦痛です。

この音のせいで数週間、まともに眠れませんでした。無視するのは不可能です。まるで誰かが注目を求めて、私の顔に向かって絶えず叫んでいるようなんです

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50Hzの低周波であることは判明したものの…

 このページの説明によると、島の住人たちを悩ませている「ヘブリディアン・ハム」の特徴は以下のようなものだ。

スペクトログラフで測定したところ、周波数は50Hzと測定されました。これは多くの人の可聴域を下回りますが、人為的(人工的)な起源を持つことがわかっています。敏感な人にとっては、非常に不快な音なのです。

これは家電製品の「うなり音」のような単なる背景音ではなく、屋内外問わず複数の場所で聞こえる、持続的な環境ノイズです。影響を受ける人の中には、次のような症状を訴える人もいます。



・睡眠障害
・集中力の低下
・頭痛、めまい、鼓膜が震えるような感覚
・孤独感や精神的なストレス

 同グループでは様々な団体に支援を求めているものの、原因については依然として幅広い合意が得られていない。

 アマチュア無線の技術を使って発生源の特定を試みているマーカス・ヘイゼル・マクゴーワンさんは、次のように語っている。

とにかく、少しずつ範囲を絞っていくしかないんです。誰かが本当に気が変になってしまわないことを願うばかりです

耳の中で作られているノイズの可能性も

 また、パメラ・ウィーバー・ラーソンさんは、「ヘブリディアン・ハム」は耳の中にある器官が作り出すノイズである可能性を示唆する説を投稿した。

聴覚研究の専門家(私の元上司で研究所の所長)に連絡して、私が聞いていることを伝えました。

彼の説によると、それはOAE(耳音響放射)だろうということです。 つまり、私たちの耳は音を聞く過程でノイズを発生させており、外部のハム音ではなく、自分自身の内なる音を聴いているということです。

確かにその可能性はあります。しかし、それならなぜ、私には他の場所ではこのハム音が聞こえないのでしょうか。

フロリダでは聞こえない、ミシガン州北部では聞こえない、といった具合です。どなたかこのグループに、聴覚の専門家はいらっしゃいませんか?

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世界各地に「聞こえる」人がいる謎のハム音

 このようなハム音は、実は世界各地で報告されている。カラパイアでも何度か報告しているので、気になっている読者もいるだろう。

 例えばカナダのオンタリオ州で聞こえ続けているというウインザー・ハムや、イギリスの小さな村で聞こえるハム音もこの一種だと思われる。

 共通しているのは聞こえる人と聞こえない人がいること、そして結局はどれも原因が不明なことである。

 ブリティッシュコロンビア大学の元講師グレン・マクファーソン博士は、世界中からハム音が聞こえる地域を報告してもらい、地図を作成しデータベース化するというプロジェクトを推進中だ。

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 この地図によると、日本でも東京の八王子市あたりで一件報告があるようだが、大半はヨーロッパと北米に集中しているのがわかるだろう。

 マクファーソン博士はこの謎のハム音が聞こえる人と聞こえない人がいる点に注目し、その理由は二つあるのではないかと言っている。

 一つは先述のOAE、つまり自分の耳の中で鳴っている音を拾っているケース。そしてもう一つは、聴覚が非常に過敏な(聴覚過敏症)ため、他の人には聞こえない、あるいは気にも留めないような実際の環境音を拾ってしまうケースだ。

 どちらにせよ、その原因を特定しなければ改善の手がかりも得られない。だが特定は非常に困難だろう。みんながみんな聞こえるわけではなく、録音するのも難しいからだ。

 先述のFacebookグループを運営するカートリーさんもその点を危惧し、次のように呼びかけている。

多くの人は、自分の家族や友人がその音を聞こえないために「信じてもらえない」と感じています。もしあなたもそうなら、どうか覚えておいてください。



気のせいではありません。
あなたは一人ではありません。
同じ音を聞いている人たちが、他にもいます

 アウター・ヘブリディーズ諸島の自治体は、少数の住民から低周波音に関する報告を受けていると明らかにした。広報担当者は次のように住民に呼びかけている。

この種の報告があった場合、当自治体の環境衛生チームが調査を行い、問題を報告してくださった方々と連絡を取り合います

「ヘブリディアン・ハム」の正体が判明する可能性は小さいかもしれないし、問題が完全に解決するのはさらに難しいかもしれない。

 だが謎のハム音に悩んでいる人たちは実際に存在するわけで、ぜひ専門家や自治体の協力で、改善の方向に向かって欲しいと願うばかりだ。

References: “The Hum” Has Hit The Hebrides – But It’s Not The First Unexplained Noise To Stump Scientists[https://www.iflscience.com/the-hum-has-hit-the-hebrides-but-its-not-the-first-unexplained-noise-to-stump-scientists-79058]

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者向けにわかりやすく再構成し、独自の視点で編集したものです。

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