
そりゃそっくりなはずだわ。愛車を盗まれ失意に暮れた男性が、ネットで売りに出されていた車を購入したら、盗まれた自分の車そのものだったのだ。
2025年2月イングランドに住むユアン・バレンタインさんが、大切にしていたホンダシビック タイプRが自宅の駐車場から盗まれる衝撃的な事件に見舞われた。
ショックと焦燥感の中、消えた愛車とそっくりの車をネットで見つけた。整備工場で、2万ポンド(約400万円)で売られていたその車を喜び勇んで購入したのだが、何かがおかしい。
トランクには見覚えのある品々が入っており、カーナビには入力した記憶のある履歴が出てくる出てくる……。
愛車ホンダ・シビックを盗まれた男性
事の発端である盗難事件が起きたのは、2月28日のことだ。イングランド・ソリフル在住のユアン・バレンタインさん(36歳)が目覚めると、自宅の私道に停めていた黒いホンダ・シビック(2016年型タイプR)が消えていた。
愛車が一夜にして盗まれ、彼はひどく落ち込んだ。9年前から乗っていたこの車にはとても愛着があったからだ。
いつかファミリーカーを買うことになる。それまでに思う存分乗っていようと考えていた車だった。そこで彼は、もし届け出て見つからなくても、また同じ車を買おうと心に決めた。
実際、警察と保険会社に通報しても、事態は進まず車も見つからないため、ユアンさんはインターネットで全く同じ2016年型タイプRを探し始めた。
するとラッキーなことに、盗難から2週間たったころ、愛車と激似の車を発見!家から約110km離れたところにある”評判が良い整備工場”で売っていることがわかった。
まったく同じでした。色、年式、そしてクセのある排気システムまで同じ。まさに理想通りの車でした(ユアンさん)
400万円で「パーフェクト」にそっくりな中古車を購入
ナンバープレートはさすがに違ったが、他はカスタム部分に至るまで、盗まれた愛車とほぼ同じ中古車を見つけたとき、ユアンさんは自分の幸運に目を疑った。
「もうパーフェクトでした」とユアンさんは語り、一方で当時の状況をこうも振り返る。
車のチェックにガレージに行ったんですが、もう待ちきれなくてうずうずしてて判断力が鈍ってた。ちゃんと徹底的にチェックしなかったんだと思う
うれしさで舞い上がっていた彼は、それが自分の車である可能性など1ミリも考えることもなく、2万ポンド(約400万円)で売っていた奇跡のような”2代目”を購入した。
だがやがて天にも昇るような喜びもつかの間、その気分は徐々に嫌な予感へと置き換わることになる。
トランクに見覚えのある品々を発見
買った車にさっそく乗り込み、初ドライブで自宅を目指したユアンさんだが、その間に、心の中にある疑念がじわじわと広がり始めた。
きっかけは、トランクに積んであったいくつかの物だ。
車内あった物がどうも奇妙で。テントのペグ1本、クリスマスツリーの飾り。それに見覚えのある包み紙とか。自分の車が盗難された時に積んでたものとよく似てたんです
ついにはユアンさん、車内の独特の匂いにも気づいてしまった。
前に愛車の中でビール瓶が割れて、それからずっと漂っていたあの匂い。
初めのうちは偶然の一致だよな、と少し妙な気持ちでした。でも家に着いてから、カーナビの履歴を調べてみようと思いたったんです
やっぱり愛車だ!カーナビに履歴を発見
車のナンバープレートは新しく、走行距離も短かった。にもかかわらず、カーナビの履歴のチェックを機に、彼の疑念はとうとう確信に変わった。
すると案の定、私の住所や両親、パートナーの住所、そして過去数年間に訪れた場所が出てきました。その直後に、ガレージを出るとすぐにスマホがBluetooth接続され、新しいデバイスとしてペアリングする必要がなかったことに気づきました。つまり、この時点でそれが私の車であることはほぼ確実でした
まさか盗まれた車を買い直した…のか?もはや直面するのはばかられる異様な事態にユアンさんは激しく動揺した。
正直言って、危うく事故に遭いそうになるほどショックでした…手が震え、動悸が激しくなったほどです
「ほらみろ!やっぱり!」という勝利の気分に浸りかけ、それからすぐに「いや得意になってる場合じゃないぞ」と思いました。自分は愛車を取り戻したんじゃなく、愚かなことをしでかしたと気づいたからです
ディーラーで愛車のキーの動作も確認
その後、地元のホンダのディーラーに問題の車を持ち込むと、なじみのエンジニアが彼の確信を後押ししてくれた。
盗まれた愛車のキーが、その車でも使えることを警察官の前で証明したのだ。
前の車の担当だったエンジニアが(私の愛車のスマートキーから)物理キーを抜き取り、そのまま問題の車のドアに差し込んでロックを解除し「ええ、たしかにあなたの車です。あなたは自分の車を買い戻したんですよ」と言った後、「こんなことは初めてです…」と感想を述べました
その時の、なんとも気まずく間抜けな瞬間について、ユアンさんはこう語る。
ホンダの駐車場で、私と警察官1人、そしてホンダのスタッフ3人が、しばし無言でその車を見つめました
元々の車両識別番号もついに判明
とはいえ警察は「盗難された自分の愛車をうっかり買った」というユアンさんの主張をなかなか信じてくれなかった。
なぜなら、そのうっかりレベルはさておいても、同一車の決め手となる車両識別番号(VINコード)が、以前の愛車と一致しなかったからだ。ユアンさんも警察に言われて初めてその不一致を知ったという。
実はその車には改ざんされた跡や、番号を削除して別の番号にすり替えた跡などがいろいろありました
明らかに愛車なのだが、装飾部分もステッカーに貼り替えられたり、エンジンにも削ったり塗りつぶされて上書きしようとした加工の跡があった。それでも最終的にディーラーがついに動かぬ証拠を見つけてくれた。車の元のVINコードを見つけてくれたのだ。
結局やっぱり私の車でした。彼らがノートパソコンを車に接続し、元のVINコードを見つけてくれたんです
警察も一目置いた”クローン車”事件に補償を期待
盗まれた上に、多数の改ざんに加え、車の走行距離メーターまで巻き戻され、ナンバープレートまで交換されていたユアンさんの愛車。
窃盗犯らは、犯罪の跡を消すためこれほどまでに多大な労力を費やしてたのだ。
警察とホンダの整備工場では、「ここまで徹底した”クローン車”の偽装は見たことがない」と窃盗犯の複製技術に一目置くようなことを言っていました。たしかにここまで細かく調べなければ、誰もそのまま気づかなかったでしょう
一方インスタグラムで今回の失態を振り返り、「こんな抜けたことをしでかすのは俺ぐらい」と恥ずかしそうにつぶやいたユアンさんは今、無駄に払った車の代金と頭金を取り戻そうとしている。
この車を仕入れた整備工場も騙されたと考えており、保険会社が補償してくれることを願っているそう。
ユアンさんがインスタグラムで自ら明かした(投稿は現在非公開)その事件は、驚きとともに拡散。フィクションみたいな出来事として各国メディアで報じられている。
なんとも気の毒な話だが、人間焦りは禁物というべきか。
References: Odditycentral[https://www.odditycentral.com/auto/man-accidentally-buys-his-own-car-after-having-it-stolen-a-few-weeks-earlier.html?] / Bbc.com[https://www.bbc.com/news/articles/cn7x1e0648zo] / Nypost[https://nypost.com/2025/04/28/world-news/sad-sap-shells-out-26k-to-replace-stolen-honda-but-finds-out-he-bought-his-own-car-back/]
本記事は、海外メディアの記事を参考に、日本の読者に適した形で補足を加えて再編集しています。